AIってどんなもの?

Artificial Intelligence の頭文字をとってAI、間違いなく現在最も注目を集めているテクノロジーといって良いでしょう。和訳すると人工的な知能という意味ですが、そのままですね。
これまでも心理学の分野では人間の知能については研究が重ねられており、年齢に対する知能の成長度合いを示す「IQ」といった知能の尺度は設けられてきましたが、AIはこうした方法とはまた異なるアプローチで知能の謎を解き明かそうとしている分野です。
実はガラケーに人工知能が搭載されていた?

じつは、これまでもAIに近いものは実用されていました。例えばドコモのガラケーに搭載されていたおしゃべりコンシェルなどですね。
使用する人の傾向に合わせてぴったりな提案をしてくれる、というものでした。
しかしこれは「あらかじめ指示しておいたこと」を実行してくれるプログラムに過ぎず、ほんとうの意味で個人の傾向にあったカスタマイズはされていなかったんですね。
知能があるように見えていた、というわけです。
何万人、何千万人という人間の数だけ思考や行動があり、それらに適応させる知能を持ったおしゃべりコンシェルを作るには、膨大な量のプログラムを用意しなくてはなりませんでした。
とても現実的ではありません。
しかし、現代はSiriやAlexaなどの会話形AIをはじめとし、個人用にカスタマイズされたAIを扱うことができています。
その理由は、ディープラーニングという技術が開発されたことと関連しています。
ディープラーニングによって何が変化したの?

深層学習と訳されるディープラーニングは、機械やプログラムそのものが、これまでのデータを元に自らをアップデートしていくことを可能にしたものです。
この技術が実用されたことで、囲碁や将棋、オセロ、チェスでは人間を打ち破るAIが複数誕生しました。
AIは何度も試合を重ねることで必勝パターンを圧倒的なスピードで理解し、実践できるようになっていきます。
ボードゲームには定石というものが存在しますが、これは先人たちが何年もかけて見出した「必勝パターン」です。ある程度の最善手はすでに確立されていました。しかし、AIには通用しません。
AIはもともとこうした「データから共通点を見出す」という行為が非常に得意です。
「勝った試合ではどこに打っていたか」「負けた試合ではどこに打たれていたか」を膨大なデータの中から見つけ出し、どんどん勝率を上げているのです。
それは定石をありえない速度で作り出しているともいえます。
こうした分析、演算の分野で人間がAIに勝つことは、おそらく不可能でしょう。
AIが得意なことは?

膨大な量のデータを恐るべき速度で分析できます。
数値を扱うことに非常に長けているので、演算などはとうの昔に人間ではかなわないレベルになっています。
人間は元来、そうしたデータ分析や共通点を見出すなど、見えない情報を扱う行為が下手でした。
ですので、統計学などの学問ではわかりやすくするために数値化したデータをグラフで表すなどして視覚情報に変換します。
見えないものを扱うのが難しい人間にとって、AIは苦手克服のための心強いパートナーなのです。
他にも単純作業などは人間より遥かに速い速度でこなせるようになりました。
例えばエクセルなどの表計算ソフトでは単純な計算、コピー、データの参照といった作業は数秒で終わってしまいます。
更に複雑なシステムであってもプログラムを組んでしまえば、データを入れるだけで必要な処理を終わらせてほしい結果だけを抽出できます。
これをさらに高精度にしたものがAIです。
パターン化できるものであればなんでも学習できますので、応用が期待される分野は数多くあります。
AIが苦手なことは?

現状、複雑すぎてパターン化できない分野が多くありますので、そうしたものには適用されていません。
専門知識が必要な仕事であったり、
クリエイティブな分野ではAIの台頭はまだ先になると見られています。
また、自ら何か突拍子もないことを生み出すのは難しいです。
ものすごい速度で一直線に進むスーパーカーをイメージするとわかりやすいと思います。
あらかじめ進み方を教えておけば、自分で道を見つけながら前へ前へ進んでくれるのがAIです。
しかし、道のないところに入り込んだり、道を作ったりすることはできません。そこは人間の仕事です。こうした道を作る作業をIoTと呼びます。
IoTとは、人間が使う道具などにテクノロジーを融合させることを指した言葉です。
冷蔵庫やエアコンに自動温度調節機能を搭載するのはIoTの好例です。
「自動化することで効率化できる」というメタ的な視点を持ってイノベーションを起こす創造的な思考は、どうしても道を進むだけでは生まれません。
道以外に目を向けられない現段階のAIでは、こうしたクリエイティブな思考や言動は行なえません。
AIの導入で効率化できる仕事は今後なくなっていく?

得意、不得意があるAIですが、導入することでメリットを得られる分野はたくさんあり、今後AIが担当する業務はどんどん増えると予想されています。
人間には睡眠、食事、福利厚生が必要ですし、体調を崩したり死亡したりするリスクがありますが、システムやAIはそうしたリスクが少ないです(故障やインシデントのリスクはありますが)。
企業が「AIに任せたほうが良さそうだ」と判断した時点で、仕事はどんどんAI任せに切り替わっていくでしょうし、近い将来、単純作業で働く人間はいなくなります。
では、具体的にどんな仕事が消えるのでしょう。
業種、職種で見る!数年後になくなる仕事は?
業種や職種で見ると、単純作業が続くものや特別なスキル、知識がなくてもできる仕事はAIの普及によってなくなるといわれています。
人間よりAIのほうが早く、正確に行えるのですから当然といえば当然ですね。
製造業

伝統工芸などを除く製造業は、特別熟練した技術を必要としないのでAIを取り入れやすい分野です。すでに大量生産を行う工場などでは作業員を減らしてロボットやAIを導入しています。
私は以前、日産の期間工として勤務していたことがありますが、実際に塗装などの工程は人間ではなく機械が行っていました。
かなり早く、正確です。人間が出る幕はもう無いように思えました。
しかし車体内の組み立て(私はここでトリム、シャシーの工程を担当しました)においてはかなり精密な作業が必要になるので、人間が神業で対応しています。
このレベルの仕事はまだまだ人間の分野です。
小売業

すでにスーパーなどではセルフレジが導入され、効率化が図られています。
店頭に立ってセールスを行うショップ店員なども今後はいなくなると予想されていますが、こうした接客業はむしろ二極化が進むと予想しています。
というのも、三ッ星レストランのサービスマンがペッパーくんだったら拍子抜けしますよね?
「ドレニシマスカー?」とメニューを持ってこられたら、キレて店を出ると思います。
でも全品100円の激ウマ定食屋の店員が全員ペッパーくんだったとしても、全然許せちゃいますよね。むしろ美味しくて安いなら通うと思います。
つまり高い接客レベルを求められる高級店で、一流のサービスが施せる人は重宝されますが、ただ「売る」ことしかできない販売員は淘汰されていくと予想されています。
そういう意味で、接客レベルによって二極化される時代が来るといわれています。
交通関係

自動運転の普及によって、車両を運転する仕事は減少すると見られています。
ただ、宅配などはまだ時間がかかると考えられています。というのも、荷物をおろしたり運び込んだりするまでの技術を備えたロボットは、まだ実用されていないからです。
しかし、amazonがドローンによって即日宅配を実現してしまいましたから、今後は軽量かつ短距離の物流はドローンによって補完される可能性があります。
また、純粋に運転して回るだけの仕事であれば自動運転で事足りてしまいますから、タクシーやバスなどもなくなる対象です。
それを見越してか、朝食付きのタクシーなど、付加価値をつけた高級有人サービスが創出されはじめていますね。
カスタマーサポート職

カスタマーサポートなどはすでにAIによって仕事がなくなりつつあります。
チャットボットという新技術の普及によって、CS部門で顧客対応に追われることがなくなり、大幅な人件費削減を実現しています。
きめ細かな顧客対応を通して営業に繋げられるようなプロフェッショナルを残して、多くのCS職は淘汰されると見られています。
経理、事務職

経理や事務はすでにパターン化されたことをこなす仕事が主ですから、まるごとなくなりはしませんが大部分がAIで事足りてしまいます。
例えば仕訳や伝票の整理についても、一定のパターンに沿って勘定科目を当てはめたり計算していくだけですから、あらかじめ決められた作業を高速でこなせるAI技術の十八番です。
貸借対照表や損益計算書、キャッシュフロー計算書から企業分析が行えるようなプロフェッショナル以外は淘汰されるでしょう。
AIを使わないほうがよい仕事はまだ残る
何でもこなせると思われがちなAIですが、まだまだ未熟な部分は数多く残っています。
例えば今私が行っているような「文章執筆」や「描画」といったクリエイティブな部分はとても実用できるレベルではありません。
他にも感情を扱う「心理職」や専門的技能が必要になる「医師」「弁護士」などの職業は残るといわれています。
頭脳労働はAIの適用が難しい

例えばあなたが犯罪を犯し、その弁護をAIが行うとなったらどうでしょうか。
論理的にあなたの無実を証明してくれたとしても、引っかかる部分があると思います。
そもそも人間が犯した罪を人間が裁くために法律があり、それでも足りない部分を補うためにある職業が弁護士や検事といった法曹系の仕事です。
人間の哲学や感情に深く関わる部分にAIを持ち込むことは、意思決定や世界のあり方を機械に任せることになりますので、抵抗が強く実現しないのではないか、と見られています。
高度な技術が必要な専門職はAIの適用が難しい

医師などのかなり高度な知識と経験が必要になる専門職はAIを取り込みづらいといわれています。
とはいえ、放射線治療やCTスキャンなど、テクノロジーの恩恵をまっさきに受ける分野であり、先進的な技術がはじめに取り入れられるのは医療分野です。
それでも、実際にオペを行うのは人間ですし、診断を下すのも人間です。
こうした高度な技術が必要な職業に関しては、現段階ではあくまでサポートを行うにとどまっています。
人間の心理を扱う仕事はAIの適用が難しい

小説家や画家といったクリエイター職は人間の心を動かし人生に彩りをもたらすのが仕事です。
つまり感情を刺激し、感動させる作品を創り出すのですが、これは本当に難しいことです。
AIが文章を書いたり、絵を描いたりする技術は実現されていますが、それによって人間が感動できるかどうかといわれれば、現状はまだまだそうした段階にありません。
いずれ感情が想起されるパターンがはっきりすれば、逆算して「感動させる文章」「感動させる絵」を作ることは可能になるといわれていますが、当分なくなることは無いでしょう。
カウンセラーといった心理職も同様に人の心を扱うスペシャリストですから、AIが入り込む余地は当分ないと見られています。
減った代わりに増える仕事がたくさんある
ここまでAIによってなくなる仕事を紹介してきました、すこし気分が暗くなりましたか?
でも、仕事がなくなったからといって悲観する必要なんてありません。
なくなった仕事の代わりに、新しい仕事がどんどん生まれてくるのが社会です。
先見の明を持つ人が輝く時代の到来

例えば数十年前の常識が今では見向きもされなくなっているように、今の私達が感じている常識は数年後には消え去っているでしょう。
仕事も同じです。
一大産業となっているIT業界は、三十年前には存在しませんでした。
介護士も今より少なく、電気屋にスマホのPRスタッフが立っていることなんて想像もしていなかったでしょう。
時代は変わります。仕事や、需要、供給に大きく影響を与えながら、私達を巻き込んで変化していきます。
そんな時代の先端に立つ私たちに必要なのは過去を振り返って昔の仕事に縋り付くことではなく、先見の明を研ぎ澄まし未来を想像することなのではないでしょうか。
AIに「奪われる」ではなく「創り出す」という思考を持つ

AIはまだまだ発展途上にある技術です。
今後さらなる発展が見込めるAIのプログラマーという仕事は需要があるでしょうし、あらゆる仕事が効率化されれば産業は二極化します。
飲食店であれば、「安ければ接客がロボットでもいい」と思うお客のニーズに応えたお店が繁盛するでしょう。
逆に「本物のサービスを、高くてもいいから受けたい!」と思うお客のニーズに応えられる本物のサービス業が台頭するでしょう。
実際にどのようなビジネスモデルにすれば繁盛するのかはわかりません。
だから、そこに想像する余地があります。
チャレンジできる可能性があります。
AIは人間の生活を豊かにしてくれるもの

仕事が奪われる、という視点で物事を見ている方にとっては、AIの台頭は恐ろしい出来事に見えるかもしれません。
しかし、もともとそろばんで計算を行っていた時代に電卓が登場し、経理職に必要な人手が大幅に減少した結果、社会全体のレベルは底上げされました。
手書きで書類を作成していた時代にワードプロセッサーが登場し、多くの労働者が新たなスキルを身につけて業務を効率化し、更に多くの仕事をこなせるようになりました。
パソコンが登場し、スマホが登場し、AIが登場し、私たちは一歩ずつ仕事を「楽」にしてきました。
それはあぐらをかくためではなく、更に社会を前進させるためです。
AIもそれらとなんらかわりありません。
これまで私達が煩わしく感じていた仕事をどんどん任せていって、私たちはもっと先進的な部分に注力することができるようになります。
googleのAI開発部門で指揮を執るレイ・カーツワイルは著書内で技術的特異点(シンギュラリティ)について、肯定的な見方を示しています。
指数関数的(2,4、8,16といったように倍になっていく関数)に技術が増大している現代社会でAIに対して抱く感想は、あくまで現代の感性に過ぎず、技術的特異点を超えた先では現代からは想像もつかない職業や世界が生まれていると述べています。
仕事が奪われる、というのは「世界が今のまま続く」という前提の上に成り立つ考え方です。
レイ・カーツワイルは、そうした前提を脱ぎ去って来たる変化を受け入れようと提唱しています。
そう考えると「古い仕事はAIに任せて自分はどんな仕事をしよう」とワクワクしてきませんか?
仕事が無いなら作ればよいのです。きっと新しい職業が生まれるに決まっています。
だって、20年前には今私が就いているウェブライターなんて職業もなかったんですから。
geeklyには最先端テクノロジーに携われる仕事がたくさんあります。
IT業界に興味がある方は、ぜひ新時代の幕開けに立ち会ってみませんか?