【転職】特定退職金共済制度を解説!退職金の目安や請求方法は?転職で活用したい通算制度のメリットも紹介
退職金制度は会社が従業員の退職後の資産を守るための重要な制度です。しかし中小企業など、退職金制度を整備することが難しいという企業も多く存在します。特定退職金共済制度はこうした会社のために退職金制度を整備します。この制度は企業にとっても被共済者(従業員)にとっても有利になる制度です。本項では特定退職金共済制度を十分活用できるよう、退職金の目安や請求方法、通算制度について解説していきます。
目次
特定退職金共済制度とは
企業・従業員ともにメリットがある制度
特定退職金共済制度(特退共)では、特定退職金共済団体が事業者から納められた掛金を積み立てます。その積み立てた掛金を元手にして、被共済者(従業員)に退職金等の給付を行うという制度です。
加入事業主が特定退職金共済団体と契約を締結し、この制度を活用します。
企業にとっては、低い導入コストで退職金制度を作れる制度であり、節税効果にも繋がります。従業員にとっても、退職金を貰えることができるので、メリットがある制度といえます。
節税効果がある
同制度は、所得税に定める要件を備えており、税務署の承認を得ているものです。したがって、この制度の活用には税法上で多くの優遇がされます。
一方で、法令に定める要件を遵守しなければならないため、慎重に取り扱う必要があります。
特定退職金共済制度の目的
加入できる企業の条件は?
特定退職金共済制度は、中小企業の退職金制度の確立をサポートする制度です。
商工会議所(商工会)の地区内にある企業であれば、この制度を利用することができます。
従業員数等の制限はなく、基本的にどの企業でも加入することができます。
掛金(掛金月額)とは
掛金(掛金月額)とは、事業主が将来の退職金の支払いのために積み立てるお金のことです。
この掛金は、事業主が全額負担することになっています。
なお、掛金は1口1,000円であり、1人あたり最大で30口30,000円が上限となっています。
掛金の運用
事業主から払い込まれた掛金は、特定退職金共済団体で管理します。管理の一環では資産運用をしてお金を増やすことも含まれます。
退職金の支払い
このお金は将来的に事業主に代わって従業員に支払われることになります。
一般的に、退職金と呼ばれるお金のことです。
特定退職金共済制度の仕組み
特定退職金共済制度の仕組みについて解説
特定退職金共済制度とはどのような仕組みでしょうか。
まず、商工会議所の地区の管轄にある会社が、商工会議所と退職金共済契約を結びます。この契約に基づき、毎月の掛金を商工会議所に納付します。
これにより、会社に代わって商工会議所が直接従業員に退職金を支払います。
なお、この制度は各地域の商工会議所で規定を作るため、各地域により違いが生じます。
特定退職金共済制度のメリット
特定退職金共済制度は導入が容易であり、商工会議所に申し込み手続きをするだけで加入できます。
これにより、従業員の雇用環境を守ることができ、長期的な人材確保にも繋がります。
また、特定退職金共済制度は、従業員数の上限がありません。
原則としてどんな企業でも特定退職金共済制度を利用することができます。
特定退職金共済制度のデメリット
特定退職金共済制度のデメリットとしては、役員が加入できないことです。対象者はあくまで従業員のみであるため、取締役などの役職がある役員は加入できません。
また、掛金の減額には従業員から減額の同意を得る必要があります。経営が困難になっても、容易に掛金の減額をすることはできません。
特定退職金共済制度の給付金
退職一時金
被共済者(従業員)が退職した場合に一括して支払われる金額です。
加入口数および加入期間に応じた金額が一括して支給されます。
退職年金
被共済者(従業員)が10年以上加入した場合の給付金です。
一時金にかえて年金での支払いを希望した場合に支払われます。
給付金は、加入口数および加入期間に応じた金額が10年間にわたって支給されます。
遺族一時金
被共済者(従業員)が死亡した場合に支払われる給付金です。
加入口数および加入期間に応じた金額が支払われます。
解約手当金
契約が解除されたとき、あるいは事業主が掛金の支払を怠った時に発生します。
解約された場合には、解約手当金として被共済者(従業員)に給付金が支払われます。
この解約手当金は、退職一時金の額と同じです。
特定退職金共済制度の節税効果
特定退職金共済制度は国が認可する制度であるため、節税効果があります。
節税効果の主な事例を見ていきましょう。
事業主にとっての節税効果
事業者にとって、掛金は全額損金算入が認められます。
損金算入とは、税務上費用として認められるということです。
掛金は将来的に積み上げるものであるにも関わらず、費用計上が出来るため、節税効果になります。
例えば、特定退職金共済制度を使わずに資金を積み立てる場合、その積み立てた金額は費用にはなりません。
それにも関わらず、将来に向けた資産運用ができるため、税務上大きなメリットがあるといえます。
被共済者(従業員)にとっての節税効果
特定退職金共済制度には、被共済者(従業員)にとっても節税効果があります。
将来受け取ることができる退職金には、所得控除の面で優遇されます。
所得控除とは、退職に関する所得から一定額を控除するものです。
源泉徴収前の退職金から退職所得控除を差し引いたものが税金の計算のベースになります。
これにより将来支払う所得税の金額が減少するため、被共済者(従業員)にとっては税制面でのメリットがあるでしょう。
通算制度について解説
通算制度とは
特定退職金共済制度では、勤務期間を通算することができます。通算制度について、詳しくみていきましょう。
通算制度とは、制度加入前の勤務期間を通算することです。また、企業間を転職した場合に、掛金の納付実績を通算することができます。
過去の勤務期間の通算
事業主が新規に特定退職金共済に加入した場合、加入申し込みまでの雇用期間を通算することができます。
既に1年以上勤務している従業員が対象となり、最大で10年間までが対象となります。
この通算制度の利用には、通常の掛金とは別に過去勤務掛金を納付することになります。
中小企業退職金共済制度との通算
中小企業退職金共済制度を適用している会社と特定退職金共済制度制度を適用している会社の通算です。
退職後3年以内に退職金の請求をせず、もう一方の被共済者(従業員)となり、通算の申し込みをすることが条件です。
これにより、被共済者(従業員)にとっては、会社勤めが終わった後にまとめて退職金を受け取ることができます。
転職した場合の通算
退職金とは、基本的にその企業特有の制度です。そのため、転職するときには勤務期間はリセットされることになります。
一旦ゼロからの再計算となる退職金の期間を引き継ぐことが出来るようになり、従業員にとってはありがたい制度です。
ただし、前の企業を退職したときに退職金を受け取ることはできないので、注意する必要があります。
転職で活用する通算制度
退職金は、一般的に会社を退職すると期間がリセットされてしまいます。
しかし、以下の条件を満たしている場合に限り、掛金納付実績を通算できます。
・掛金が12か月以上納付されていること
・前の企業を退職してから3ヵ月以内に申し出ること
・前の企業で退職金を請求していないこと
特定退職金共済制度を活用して、スムーズに転職を実現しましょう。
特定退職金共済制度と中小企業退職金共済制度の違い
特定退職金共済制度と役割が似た制度として、「中小企業退職金共済制度」があります。
両者の共通点と、違いについて見ていきましょう。
中小企業退職金共済制度とは
中小企業退職金共済制度は、中小企業の退職金を共済する法律に基づいて出来た制度です。
自社で退職金制度を準備することが難しい中小企業向けに作られました。
特定退職金共済制度と中小企業退職金共済制度のどちらも、退職金制度を支援する目的という意味では共通した制度です。
中小企業退職金共済制度との違い
特定退職金共済制度と中小企業退職金共済制度はとてもよく似ています。
特定退職金共済制度が「所得税法」に基づいて作られた制度です。これに対して、中小企業退職金共済制度は中小企業の退職金制度を支援する目的で作られた制度です。
このように、制度の目的が若干異なるのが両者の違いです。また、両者は運営する機関が異なります。
特定退職金共済制度は商工会議所等が運営しています。これに対して、中小企業退職金共済制度は独立行政法人である勤労者退職金共済機構が運営しています。
利用者にとっては両者に大きな違いはないため、使いやすい方を選択するのがいいでしょう。
退職金の目安は?
退職金は、掛金によって決まります。
掛金は1口あたり1,000円で最大30口までかけることができます。すなわち、掛金の幅は1,000円から30,000円ということになります。
事業主が特定退職金共済に支払う掛金の金額によって、被共済者(従業員)が貰える退職金の金額が決まります。
例えば、毎月2,000円の掛金を納めていた場合は、30年間納めることにより基本退職金額は84万円となります。
毎月10,000円の掛金を納めていた場合は、30年間納めることにより基本退職金額は420万円となります。
掛金とは、将来への積み立てになるので、掛金を多く収めるほど退職金額が多くなっていきます。
退職金の請求方法は?
退職金を受け取ることができるのは、被共済者(従業員)です。
退職後、給付金の種類に応じて退職金の請求書を商工会議所に請求することが必要です。
商工会議所は被共済者(従業員)の請求を受け、速やかに指定された口座へ振り込むことになります。
退職通知書兼一時金請求書は、退職した際に会社から貰えますので、それを元に受け取りの手続きを進めます。
ただし、一旦退職金を受け取ると、上記の通算制度は使用できないので、注意する必要があります。
まとめ
特定退職金共済制度について見ていきました。
特定退職金共済制度には、通算制度をはじめとした被共済者(従業員)にとって有利になる制度です。
転職をされる場合には、特定退職金共済制度のことをよく理解し、スムーズに転職活動を行いましょう。
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