同業他社に転職することは可能?知っておくべき競業避止義務や注意点について確認
「仕事内容は好きだけれど、今の会社には不満がある」「今より大きな企業で力を試してみたい」このような理由から、競合企業への転職を考えている人も多いことでしょう。競合企業で働く場合は、気をつけるべき点が多くあります。競合他社への転職を考えている方は参考にしてください。
競合企業へ転職しても問題ない?
転職をする時に、選択肢の中に現職(もしくは前職)の競合企業が含まれていることもあるでしょう。
「さすがに応募したらまずいのではないか?」と気になる人も多いかと思います。
結論からいいますと、競合企業への転職は特に問題はなく自由にすることができます。
ただし、注意すべき点や確認が必要なこともいくつかあります。
同業他社への転職はばれる?
同じ業界内での転職を隠し通す事は困難です。
現職・前職と転職先で取引先が同じケースもめずらしくないため、他業界への転職に比べるとばれやすいです。
基本的には転職を隠しておく事は難しいと言えるでしょう。
競合他社への転職自体は問題ありません。
ただし転職後に思いがけないトラブルを起こしてしまわないよう心掛けたい円満退社のポイントについては、後ほど詳しく解説します。
また、次のような規則の事前確認が必須です。
就業規則や誓約書の内容を確認する
企業によっては、就業規則や誓約書などで競合企業への転職に関する要目が記載されていることがあります。まずは、その有無を確認してください。
そして、その中に「競業避止に関する事項」や「競業避止義務」などを含んだ内容が書かれている場合は、気をつけなければなりません。
競業避止義務
競業避止義務とは
「競業避止義務(きょうぎょうひしぎむ)」とは、労働者は所属する(していた)企業の不利益となる競業行為を禁ずる義務のことをいいます。
その目的は、前職の機密事項や製品開発のノウハウなどを競合企業へ漏洩させないためのものです。
自ら競合する会社を設立する際はもちろんのこと、転職する場合も該当します。
「競業避止義務」を破ったらどうなるのか
「競業避止義務」は守るべきものとして説明しましたが、重要なのがこの義務は「企業ごとに独自で制定しているルール」ということです。
例えば「退職後○年間は競合関係にある同業他社へ就職し、会社と競合する事業または営業行為をしてはならない」といった内容が書かれていたとしても、これを反故したところで法的に罰せられるということは一切ありません。
ただし、明記された期間中に転職先へ機密情報を意図的に漏洩するなど、悪質とみなされた場合は訴えられる可能性も十分にあります。
そうなれば損害賠償の対象となる可能性があるため、競合企業に転職したい場合は注意しながら活動する必要があります。
「競業避止義務」が有効かどうかの判断基準は?
転職後であっても競業避止義務を負うことになる場合もあります。
経済産業省が公表している競業避止義務が有効かどうかを判断するための基準として『競業避止義務契約の有効性について』があります。
競業避止義務契約の有効性は以下の6つで判断されます。
・企業側に守るべき利益があるかどうか
・従業員の退職前の役職
・地域的な限定があるかどうか
・競業避止義務の適用・存続期間
・禁止行為の範囲
・代償措置があるかどうか
(引用出典:経済産業省「競業避止義務契約の有効性について」)
同業他社に転職する場合に注意が必要な役職
取締役などの役員は一般社員と比べ、競業避止に関してより大きな義務を負います。
会社の機密情報に日常的に接するからです。
こちらも法的に問題はありませんが、お世話になった会社の不利益になってしまうことを考慮し同業他社への転職は避けるという考え方もあります。
ただしキャリアアップにつながる、より良い待遇での転職が望めますので、同業他社へ転職するのであれば細心の注意を払いましょう。
また、執行役員は従業員ですので一般社員と同じである事が多いです。
「競業避止義務」は在職中も負っている
在職中についても競業避止義務は負っていると考えるのが一般的です。
これは労働契約を結んでいるからです。
そのため、副業や起業等で競合会社で働く場合も注意が必要である事は覚えておいてください。
競合企業に転職活動する際の注意点
それでは競合企業に転職をする場合、気をつけるべき点は何でしょうか?
面接対策はもちろんですが、辞める会社に対しての根回しを始め、いくつか配慮をしなければならないことがあります。
面接では守秘義務を意識しながらキャリアを伝える
真っ先に注意したいのが「守秘義務違反」です。
前職で知り得た顧客情報や経営に関わる数字、プロジェクトの内容などは、詳細に伝えると守秘義務に抵触する恐れがあります。
もし自身の実績をアピールする上で重要度の高い話題だとしても、包み隠さず職務経歴書に記載したり、面接で具体的に話したりするのは控えるようにしてください。
そういう配慮が出来ないようでは現職(もしくは前職)とトラブルになるだけではなく、応募先企業からも「機密情報を簡単に漏らす人物」と不信感を抱かれることになりかねません。
配慮の無さを懸念されて採用を見送られることも大いにあります。
同じ内容でもアピール方法を考える
では、どのように実績を伝えればよいのか?と思う方もいつと思います。物は言いようです。
アピールするにあたっては具体的な企業名を出すのではなく「従業員○○人規模のメーカー」とするなど、簡単に特定できない表現で伝えましょう。
プロジェクトの大まかな概要や関わったメンバー数、期間などを伝えましょう。
細部が明瞭でなくても同じ業界の内容であれば、大体のイメージはできるはずです。
守秘義務に関わらないことでも批判や悪口は避ける
また、守秘義務違反とまではいかなくても、会社の内情の暴露や方針に対しての不満、特定の社員を批判するような話題も当然NG行為です。
同じ業界で働く以上、発言内容がどこから誰に伝わるかわかりません。
それに、あなた自身の信用問題に関わることでもありますので、くれぐれも軽口を弄することはないようにしてください。
退職前は同業他社に転職することを隠しておく方が良い
働きながら転職活動をしている場合、競合企業から内定が出ましたら退職の意を伝えなければなりません。
そのときに、上司とのやり取りで次に働く会社の話題が出るかと思いますが、同業他社へ転職が決まったということは隠す方が無難でしょう。
退職するまで気まずい状況になることも大いに考えられるからです。
穏便に済ませたいのでしたら、在職中は多く語らないようにするほうが賢い振る舞いと言えます。
また、そのことを話したばかりに、転職時期を引き伸ばされる可能性もありますので注意しましょう。
もし転職理由を尋ねられたら「一身上の都合」と答えるにとどめる事でスムーズに進む事もあります。
同業ならではのリスクを回避するためには?
退職した後に、仲の良かった同僚などに転職先を伝えておくのもひとつの方法です。
それというのも、同じ業界での転職は営業先やセミナーで前職の人に会う可能性が非常に高いからです。
例えば上司と一緒の時に前職の関係者とばったり出くわし、そこで根掘り葉掘り聞かれてしまうのはどう考えても良い印象を与えません。
そのような場面に出くわした際の予防線として、同業他社に転職したという話を広めておいてもらうことです。
そうすれば、前もってこちらの事情を把握してもらえますので、もし退職後に会うことになったとしても気まずい展開になるリスクを軽減することができます。
上記のやり方は一例ですので、自分なりに穏便に済ます方法を考えておくようにしましょう。
同業他社に転職するメリットとデメリット
メリット
メリット1つめは年収が上がる事でしょう。
同業での経験があるため、スキルや知識が活かせ即戦力となる人材は企業にとってもメリットが大きいものです。
知見を活かした企業分析ができるため、他業種に比べて転職活動自体もハードルが低く感じるのではないでしょうか。
初心者としての心構えや、場合によっては研修なども省略されるためブランクを感じずに働き出す事ができるのもメリットと言えます。
自身のスキルアップやキャリアパスを描きやすい点も挙げられるでしょう。
デメリット
転職活動において、会社の人や家族にも相談できない、人間関係を失う事を想像してしまうというケースも多いです。
また、競合他社に転職する場合には自分の持つ情報だけが求められているという事はないか、冷静に見極めましょう。
人材ではなく競合企業の情報やノウハウが求められている場合だと、キャリアアップや昇給が望めない事もあるのです。
何より「裏切り行為になるのでは」と後ろめたさを感じてしまいがちな同業他社への転職ですが、転職しなかった事が自身にとってのデメリットとなる可能性もあります。
円満退職のポイントと必要な理由
同業他社に転職が決まったら、必ずやっておくべき事が「円満退社」です。
なぜ円満に退社しておく必要があるかと言うと、同業であるがゆえに前職の同僚や上司とコンペや会合で顔をあわせる可能性があるからです。
転職先の企業で新しく担当する事になったお客様が実は前職の役員と繋がっており、情報が筒抜けというケースもありえます。
仮に転職時にトラブルを起こしたり気まずいままだと、転職先の業務に悪影響を及ぼす事もあるのです。
業務の引継ぎを丁寧に行う、しっかりと挨拶をする、特に直属の上司や同じチームのメンバーには必ず自分の口から伝えるなどできる限り円満退社に務めましょう。
働きだしてからの注意点
同業への転職は、異業種からのキャリアチェンジに比べ、スキルや経験を即座に活かせると判断されることが多いです。そのため、比較的内定が出やすいというメリットがあります。
ただし、当然入社後に求められる成績のハードルも高くなることを忘れてはいけません。
また、同業他社とはいっても会社ごとに仕事の進め方や取り決めは大きく異なることがあります。
入社後は、業務における共通点と違う部分をしっかり把握することから始めましょう。
前職とのギャップをなるべく早く埋めるように心がけてください。
同業ならではの落とし穴 「前職は○○だった」の発言に気をつける
同業に転職したとき、特に気をつけたいのが「前の会社では○○だった」という業務比較です。
例えそれが有意義なことであったとしても、職場に馴染むまで「自分流」を押し通すのは避けてください。
これは同業であるほど気になる部分でしょうし、時には歯がゆく感じることもあるかと思います。
しかし、郷に入っては郷に従えの言葉通りに、最初のうちは「合わせる」方向で働くようにしましょう。
まとめ
競合避止義務などのルールがあったとしても、基本的に競合他社への転職は問題ありません。
ただし退職後に後腐れを残さないためには、異業種へ転職する場合よりもデリケートな対応や配慮が求められます。
同じ業界で働くということは、いつどこで前職の人と会うとも限りません。極力しこりを残さずに辞めるよう努めましょう。
また、転職後は即戦力として結果を求められることになります。気を抜かずに働くようにしてください。
同じ転職でも異業種からの人にはない「強み」を買われて内定を貰うケースが多いため、いざ働き始めたものの実際は「期待はずれな人」だったと評価を下されてしまうと、その後居づらくなってしまいます。
逆に早い段階から評価を勝ち取ることができれば、その後のキャリアアップにも良い形で影響します。
これまでに業界で培ってきた能力と人脈を総動員して、少しでも早く転職先に貢献できるよう努めましょう。
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