「転職は“できること”、副業では“やりたいこと”をする」 motoさん×転職エージェント「Geekly」が考えるこれからの働き方
今回取材をしたのは、Twitterやブログで転職や副業に関する情報を発信しているサラリーマンのmotoさん。最近では、著書『転職と副業のかけ算 生涯年収を最大化する生き方』がベストセラーになるなど、活躍の幅を広げています。
Geeklyが実施した転職や副業に関するアンケート結果をもとに、「やりたいことを仕事にする方法」「motoさん流の転職実践ノウハウとは?」「副業と本業を両立させるには?」といったテーマで徹底議論。 最後には、motoさんの気になる今後のキャリアプランついても伺っています。ぜひご覧ください!
目次
motoさん
短大を卒業後、地方ホームセンターやリクルート、楽天など5度の転職を経て、本業年収1500万円、副業年収4000万円を稼いでいるサラリーマン。現在は、都内の広告ベンチャーで営業部長を務めながら、ブログ「転職アンテナ」を運営している。Twitterのフォロワー数は約8万人(2019年12月5日時点)。その他、「東洋経済オンライン」や「新R25」など数多くのメディアに取り上げられている。
motoさんの転職論
「転職」は、自分の市場価値を上げる手段のひとつ
本多
まずお伺いしたいのが転職について。motoさんは転職する際にどのようなことを意識していますか?
motoさん
「自分の市場価値が上がるか?」という点を意識しています。転職は、自分の市場価値をかけ算で上げていくための手段の一つです。中でも「業界×職種」という形で掛け算していくと、自分の希少価値が高くなり、市場価値の高い人材になっていきます。もちろん、成果を出すことが前提ではありますが、自分の価値を常に意識するようにしています。
やりたい仕事をしたいなら、できる仕事を増やすこと
本多
先月、IT/Web/ゲーム業界を専門とするGeeklyで「転職後に実現したいことは何ですか?」というアンケートを実施しました。その結果、全体(N=696)の50%以上が「やりたい仕事がしたい」「年収を上げたい」という意見でした。
さらに年齢別に見ていくと、20代の場合「やりたい仕事がしたい」の割合が30代以上に比べると若干高くなっていました。この結果について、motoさんはどう考えますか?
motoさん
実際に、僕に寄せられる転職相談にも「やりたい仕事をしたい」という意見は多くあります。僕にも「やりたい仕事をしたい」という気持ちがあった時期もありますが、今は“自分にできる仕事で成果を出すこと”が大切だと感じています。
「やりたいこと」と「できること」は、似ているようで違います。やりたいことは「自分のwill」であり、できることは「自分のcan」です。リクルートに「willcanmustシート」というのがあって、canとmustの延長にwillがある、みたいな考え方をするんですが、まさにこれがそうなのかなと思います。まずは自分に出来ることの数を増やし、その延長で「やりたいことができる自分」を作ることが大切ではないでしょうか。
motoさんの考える「仕事ができる」基準とは?
本多
特に20代はそうだと思うのですが、実際に自分の「できること」でなく「やりたいこと」にフォーカスを当ててしまいがちですよね。motoさんにとって、「仕事ができる」の基準は何でしょうか?
motoさん
“自分のメンバーに対して、自分と同じミッションを依頼したとき、彼らが僕と同じ水準の結果を出せる状態になること”です。企業側の視点で考えると「トッププレーヤーとして単独で活躍してくれる人材」より「部下をマネジメントして、高い成果を出せる組織を作れる人材」の方が価値は高いです。自分自身がトッププレイヤーになることがゴールではなく、自分と同じ人材を作り出せるかどうか?が仕事ができる基準だと思います。
もちろん、オールマイティに活躍できるトッププレーヤーになることも間違っていませんが、年収における限界がくると思うので、20代のうちは自分にできることを増やしつつ「自分と同じことができる人材をどう作るか?」という視点を持つのが良いと思います。
本多
なるほど。20代のうちはとにかく「できること」を増やした方が、将来的にも「やりたいこと」ができるようになりますね。
motoさん
そうですね。まずは自分のできること、つまり目の前にある仕事で最大の成果を出すことが第一です。その上で、「自分が取り組んでいる仕事を、他の人でも出来るようにするにはどうしたらいいだろう?」とか「自分の手を煩わせずに、他の人に仕事を振るにはどうしたらいいだろう?」というところまで考えられるようになると、もう一段階上の目線で仕事ができるようになると思います。その結果、30代で「やりたい仕事」ができるような自分に近づけるのではないでしょうか。
年収を上げるための「転職」とは?
本多
先ほどのアンケート結果に戻ります。30〜40代の回答を見ると、「やりたい仕事をしたい」よりも、「年収を上げたい」と考える人が全体平均より多い結果となりました。これについてmotoさんはどうお考えですか?
motoさん
ライフステージの変化が大きく関わってくるのではと思います。30〜40代になると、結婚・出産・子育て・介護などさまざまなライフイベントが想定されます。その分、20代に比べて出費は多くなりますよね。お金が必要になるという理由で転職を考える人は多いと思いますが、自分の市場価値を理解していない人も多い気がします。
年収を上げたくて転職活動している友人に、「具体的に年収いくらほしいの?」と聞いても、パッと出てこない。「今よりちょっと年収を上げたい」という回答をされて「“ちょっと”って具体的にどれくらい?」と聞いて、答えられなかったり。こういう人は僕も周りにも多いです。
自分の値段を答えられなかったり、自分が欲しい金額の根拠を話せない状態で転職活動をしても、大きく年収を上げるのは難しいと思います。まずは自分の値付けや、欲しい金額の具体化と根拠を明確にするところからはじめると良いと思います。
本多
ありがとうございます。年収についてもう少し伺いたいのですが、motoさんは年収を上げる手法として「軸ずらし転職」を推奨していますよね。
motoさん
そうですね。僕は軸ずらし転職で年収を240万から1500万まで上げてきました。僕が推奨している「軸ずらし転職」というのは、利益率の高い業界や企業に転職する方法です。
例えば「年収1000万円ほしい」と思って転職しても、その企業の社長が700万円しかもらっていなかったらその年収をもらうのはそもそも難しいですよね。企業側の年収レンジを把握し、年収の高い業界や企業に転職することが、希望年収に近づく最短ルートなんです。
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motoさん流 転職実践「ノウハウ」
motoさん流 自己分析術
本多
転職するうえで、自分の「市場価値」を認識することは大事だと思います。motoさんは自分の市場価値を知るために、実践されていることはありますか?
motoさん
転職エージェントに職務経歴書を持っていき、どのような求人を出してもらえるか見ています。これをやると、出される求人のレベルによって自分の市場価値が把握できるんですよね。転職エージェントは、客観的な立場から「この人は売り物になるのか?」を判断してくれるので、僕は積極的に活用することをおすすめしています。
本多
Geeklyが転職エージェントだからそう言っていただけているわけではないですよね?(笑)
motoさん
実は、僕は御社を使って市場価値を確認させてもらったことがあります。なので、ひいきなしに、お伝えしてます(笑)。
実際、転職活動をするときは、転職エージェントから提案される求人のレベルをみて「自分の市場価値」を把握するようにしています。もし、出された求人が自分の希望とかけ離れていたら、「どのようにしたら理想の求人が出てくるのか?」という質問をしています。その他にも、「どうしたら希望の年収がもらえるか?」とか「過去にどのような人が採用されていたか?」など、解像度を高める質問をすると良いと思います。転職エージェントは登録して待っているだけではなく、自分から情報を取りに行く姿勢を持って「使いこなすこと」が大事だと思います。
motoさん流 職務経歴書の作成術
本多
転職活動では、書類選考も必要になってきます。書類を作成される際に何か意識されていることはありますか?
motoさん
僕は毎月1回、自分の職務経歴書をアップデートしています。なぜなら、「今月は作業をしていたのか、それとも仕事をしていたのか?」を判断することができるからです。
作業をすることはもちろん大事ですが、自分の意思がなく、スキルや経験につながりにくい経験ばかりしてると、職務経歴に書くことがなくなってきます。なので、毎月1回、必ず職務経歴書をアップデートして、自分の働きを棚卸しするようにしています。
本多
ちなみにそのアップデートは、どれくらいの完成度で行うのでしょうか?
motoさん
企業に提出できるレベルで書くようにしてますよ。
motoさん流 面接対策
本多
転職について最後の質問です。面接に関しては、いかがでしょうか?
motoさん
企業分析を細かくしています。志望企業の「課題」が何なのかをきちんと把握し、その上で、「たぶん、社長はこういう企業にしたいのではないか」とか「たぶん、既存のサービスにはこういう課題があるのではないか」という仮説を作り、それに対して自分ができることをまとめます。なので、職務経歴書も、企業ごとに内容を変えるようにしています。
僕の経験上、面接での最大のポイントは、「この人を採用したら、こういう成果を出してくれそうだ」という再現性を伝えられるかどうかだと思っています。再現性がある人間であれば、安心して仕事を任せられるからです。このポイントはとても大切だと思います。
本多
企業分析以外でmotoさんがやっていることはありますか?
motoさん
最低限、やっておいたほうがいいことは3つです。「その企業のサービスを実際に使ってみる」、「社長のインタビュー記事を読む」、「オープンワークや転職会議などの第三者の口コミを見る」です。自分がその企業の社長が考えていることがわかるくらいに情報を集め、経営課題の解決策を提案できる状態になるのが理想です。
motoさんの副業論
副業=自分を試す場所
本多
次は、副業についてお伺いします。転職は「市場価値を上げる手段」とおっしゃっていましたが、副業にはどのような価値をおいていますか?
motoさん
「本業への余裕を生み出すこと」と「自分を試すことができる場」だと思っています。本業で上げた自分の市場価値は、企業の看板に助けられている部分もあります。しかし、副業は会社の看板がない中で、自分という資本を使ってお金を稼ぐ必要があります。まさに自分という個人が試される場なんです。
もし仮に、明日会社が潰れたとしても、自分の名前で稼げるようになっておけば、会社に縋ることもない。こうした姿勢が本業への余裕にも繋がるので、転職なども視野にいれた色々な挑戦ができるようにもなると思います。収入はもちろん、働き方の面でも副業の価値は大いにあると思います。
本多
motoさんのように副業で活躍している方も増えてきましたよね。副業に関するアンケートを取ったところ、「副業をやったことがないが、興味はある」と答えた方が半数以上います。しかし、世の中的には本業との両立やスケジュール管理等の面でハードルを感じている人もまだまだ多くいます。
motoさん
僕は副業を労働集約にせず、仕組みを作り上げることを大切にしています。本業がある以上、時給で働いていては大きな金額は稼げません。副業は自分が動かなくても稼げる仕組みにすることが大切だと思いますよ。
副業で報酬を得るのは意外と大変。まずはやってみて
本多
先ほどの副業に関するアンケートで「副業をやったことがないが、興味はある」と回答した方に、副業をしない理由を聞いたところ、「所属企業で禁止されているから」、「そもそも副業についてよく知らないから」と回答した方半数以上でした。
motoさん
厳しい意見かもしれませんが、それはできない理由を言い訳に、何もしないことを選択しているに過ぎないと思います。
副業をしてみたらわかるのですが、副業で稼ぐことは本当に難しいです。副業を始めた翌月に、いきなり口座にお金が入ってくることは稀で、基本的には稼げるようになるまでの「下準備」が必要です。この下準備は、副業禁止の会社でもできるはず。
なので、まずは副業が禁止であっても「これ以上働いたら報酬が発生してしまう」という状態を作っておくと良いと思います。そうなって初めて「副業禁止」という環境をどうすべきか検討したら良いと思いますよ。
本多
Geeklyが取ったアンケートでは、「副業に費やす時間は、5時間以下/週」という人が一番多かったです。motoさんは、副業にどれくらいの時間を費やすのが望ましいと思いますか?
motoさん
費やす時間は、副業のビジネスモデルやいくら稼ぎたいのかという目標額によって変わります。僕の場合は、基本的に本業にフルコミットしてしっかり成果を出すことで自分の経験値を増やし、その経験をコンテンツにすることで副業が成り立っているため、副業の時間は短いです。
本業も副業も「時間給」で考えるのではなく、自分が手を動かさなくてもお金が入ってくる状態を作るのがベストだと思うので、本業でお金が入ってくる仕組みを学び、その仕組みを参考にしながら副業で同様の仕組みを構築するのが良いと思います。
副業を継続させるために
本多
アンケートでは、「副業をやったことがないが、興味はある」という方が副業をやったことがない理由として、「本業が疎かになりそう」という理由も多かったです。確かに副業に目が行き過ぎて、本業が疎かになってしまいそうです。
motoさん
それはやってから考えれば良いと思います。本業が疎かになるかどうかはやってみないとわかりませんし、やっていくなかで本業が疎かになるのであれば、改善すれば良いだけです。
ビジネスモデルを工夫したり、自分が動かなくても良い状態を作るなど、自分なりに考えて組み立てていけば本業がおざなりになることは無いと思います。本業ファーストを念頭においた副業を始めると良いですよ。
本多
とはいえ、本業と副業を両立するのはなかなか難しいもの。本業で結果を出しながら、副業を継続させるコツはありますか?
motoさん
目標を持つことですね。売上目標や、いつまでに何をするという、マイルストーンをちゃんと置くことが大事です。副業であっても、本業と同じく目標設定をしないとダラダラとやってしまい、結果が出ません。
また、僕自身は「本業は“できること”をやって、副業は“やりたいこと”をやる」という軸で行動しているため、副業の中身も継続するモチベーションにつながっています。自分が好きなこと・やってみたいこと・やりやすいことをやってみると良いと思います。
motoさんの今後のビジネスプラン
本多
では最後に、motoさんは今後どのようなビジネスプランを描いているか伺いたいです。
motoさん
まず、副業の方では、これまでのキャリアを活かして、自分に出来ることかつ、お金になる事業をやっていきたいです。僕はこれまで、自分の知識を切り出してお金を稼いでいました。しかし、それだけでは限界があると思っています。なので、今後は副業で「事業」を展開し、組織として大きくしていこうと思っています。同時に、自分ひとりで稼げる限界額にもチャレンジしていきたいです。
そして、本業では今までより大きな組織に所属し、副業ではできないような大きなプロジェクトを進めていきたいと思っています。「大きな金額を稼げる組織を作る」というのが、直近の目標です。まだまだ頑張っていこうと思います。
本多
転職や副業についてたくさん議論できて楽しかったです! ありがとうございました!
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転職して副業との両立を実現させるポイント
ここで、転職エージェントであるギークリーからも副業の現状について解説します。
副業を認める企業は増えている
経団連によると、社外での副業・兼業を認めている企業割は増加傾向にあります。
特に急増したのが2019年以降で、背景には厚生労働省が「副業・兼業の促進に関するガイドライン」や「モデル就業規則」を公表・改定したこと、テレワークの普及により環境が整ったことなどが挙げられるでしょう。
2022年時点で、企業の70.5%が自社の社員が社外で副業・兼業することを「認めている」(53.1%)または「認める予定」と回答しました。
社外からの副業・兼業人材を受け入れる企業も増加傾向にあるなど、副業を認める企業は増えています。
参考:経団連『「副業・兼業に関するアンケート調査結果」を公表』
企業が副業を認める理由
企業側が副業を認める大きな理由が、人材育成や社員の離職防止につながるためだとされています。
他方では、副業している人材を受け入れることで、多様な人材を確保できる、自社では培えないスキルが得られるといったメリットもあります。
こういった背景から本業に還元できていると実感する企業も増えています。
転職の際の注意点
志望動機に注意
「副業できること」が自分のなかでどの程度重要なのか認識しておく必要があります。副業可の企業を探すうちに、「副業できること」が転職軸にすり替わってしまう危険性があるからです。
また、企業側としても副業できることを理由に志望されても熱意は感じられません。あくまで企業の目的は「副業をすることで自社にも良い影響を及ぼすから」であることを忘れないようにしましょう。
レジュメに記載するメリット・デメリット
副業可の会社を志望していることを明記することで、効率良く企業探しを行えるメリットがあります。しかしその一方で、明記しない場合と比較してオファーが減るデメリットも考えなければなりません。
この際にも、「副業できること」の優先順位をよく考えてから決めると良いでしょう。
副業の始め方は要相談
また、「副業はOKだが転職後1年は不可」「競合の場合は不可」といったルールが設けられている場合もあります。面接の際に、企業の副業に対する考え方、禁止事項や注意点などを確認しましょう。
副業を推奨していないようであれば、「将来的に副業でスキルの幅を広げたいが、まずは御社で成果を上げてからと考えている」というように伝え方の工夫も必要です。
転職エージェントである株式会社ギークリーでは、副業が可能な求人も保有しております。
働き方やキャリアにお悩みをお持ちの際は、お気軽にご相談ください。
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