保障給の仕組みを解説!求人票の想定年収との関係についても併せて転職エージェントが解説します
特に給与は生活に直結するだけにとても気になるポイントでしょう。この給与欄に保障給という文言が見受けられる求人があります。この保障給とはなんでしょうか? 想定年収との関係性や条件の見方について解説します。
目次
保障給とは?
保障給について、言葉の意味が分からない方はいらっしゃると思います。
一言でいうのであれば、最低限保証される給与額のことです。
採用条件には、支払われる給与についての記載があります。
そこには、月収、年収のような金額とともに給与体系について記載されています。
保障給についてはその給与の記載の中で、追記されるような形で明記されている場合や、備考欄のような場所の中に記載がされている場合があります。
基本的には歩合制に記載がある
歩合制となる場合、給与は実績を出すことで積みあがっていきます。
その際に、実績が0だった場合に給与が0円になってしまうことを防ぐのが保障給となります。
また、基本的には一定額が保障給として定められるため、その金額を下回ってしまった際も保障給の金額までは支払っていただけるということになります。
閑散期や想定していた成績ではなかった月には、収入が大きく減少するリスクがあります。
このため、労働基準法第27条には労働時間に応じた一定額の賃金の保障を規定しています。
賃金が確実に、また、労働者の生活を保障するに足りる程度に、労働者の手中に支払われる
ことを確保するため、以下の規定が設けられている。
出来高払いの保障給(第27条)
出来高払制の労働者について、労働時間に応じ一定額の賃金を保障しなければならないことを規定
厚生労働省資料『賃金に関する労働基準関係法令等について』
歩合給を含んだ給与システムの場合、月によって受給額が大きく変動しないよう一定の金額に満たないケースに限って支給しなければなりません。
そのため、歩合給を含む給与システムの場合、但し書きで保障給についての記載があるのです。
そもそも固定給や歩合給とは?
保障給は月によって成果や業績に大きな変動が起き、そのために生活が不安定にならないように定められています。
では、そもそも固定給や歩合給とはどのような給与システムなのでしょうか?
固定給は勤務時間をベースにした給与体系
固定給とは、一定時間勤務することによってその決められた時間や期間に対して一定額の賃金が支払われる給与制度です。
固定給には、住宅手当や通勤手当、家族手当などの様々な手当が含まれています。
歩合給は業績や成果に応じた給与体系
歩合給とは、業績や成果などの基準に対して一定の成果に応じて、給与額が決まる給与制度です。
歩合制が比較的に多い職種として、営業職、販売職、ドライバー職などがあげられます。
歩合給の仕組みは、個人の売上高の何%、というものや、成約につきいくらなど企業によって様々です。
その中で共通しているのは、時間に対して対価ではなく「成果」に応じて賃金が決定していることでしょう。
固定給+歩合給とは?
固定給と歩合給の組み合わせとなる給与システムでは、それぞれの割合によって大きく性質が異なります。
固定給の比率が大きければ変動が少ないため、月々で比較的安定しているでしょう。
逆に歩合給の比率が大きければ、好調な時は高く、低調な時は低くと給与が月々で変化してきます。
固定給+歩合給を採用する業種では、不動産、保険の営業職、自動車のディーラーなどがあげられます。
この給与制度を導入している多くの業種において、歩合給の比率を高く設定しています。
その理由はインセンティブによるモチベーションの向上を狙う意味合いが強いといえるでしょう。
保障給の仕組みとは?
保障給は日常生活に著しく困窮を招かない程度の支給をする労働基準法に則った制度です。
その仕組みはどのようになっているのでしょうか?
労働基準法が定める保障給について
労働基準法の第27条には、労働者の最低水準の生活を保障するために、労働時間に応じて一定額の賃金保障を企業に義務づけています。
それに伴い、就業規則や労働契約に給与に関する記載が求められています。
本条項の保障給は労働時間1時間について、いくらと定める時間給であることが原則です。
そのため、保障給がいくらなのか?ということは、時給を導き出す必要があります。
歩合給の時間給計算
歩合給は元々、時間単位で労働単価ではなく成果に応じて支給する、という考えの給与システムです。
しかし、保障給に関しては成果単位の歩合給であっても、支給額を労働時間で割った数字が時給となり基準として計算されます。
そのため、算出方法は以下のようになります。
歩合給の時給換算式:歩合給の支給額÷総労働時間=時給
歩合給の時間給からみた保障給
例えば、月収30万円と見込んだ歩合給で計算してみましょう。
一日実務8時間(9時〜18時、1時間休憩)で、月22日(一カ月の所定内労働時間)働いた場合、176時間の労働となります。
300,000円÷176時間=1,704円となり、この例における時給は1,704円となります。
この算出された時給に対して、保障給額の基準となる金額は労働基準法には記載はありません。
しかし実務的には労働基準法の休業手当にて6割と定めています。
このことから歩合制の保障給は同様の水準にするのが妥当とされて運用されることが一般的です。
通常の時給1,704円×0.6=1,022円となります。
この事例の場合、時給1,022円が都道府県で定める最低賃金以下になっていないかが保障給の基準になります。
完全歩合制は成立しない?
完全歩合制はその名の通り、固定給の部分はなく、すべてが歩合給となる給与システムで、フルコミッション制などとも呼ばれています。
労働基準法第27条に記載されているとおり、生活が不安定にならないように、保障給が労働契約には求められます。
正社員やアルバイトなどのように雇う側・雇われる側で労働契約を結ぶ場合、完全歩合給という制度は成立しないと考えて良いでしょう。
そのため、基本的に歩合給で成果が全く無い月であっても最低限の収入は確保できると考えて問題ありません。
求人票に記載される想定年収とは?
求人情報の給与欄をみると想定年収という文言がある場合がありますが、この想定年収とはどのようなものでしょうか。
現在の給与と比較して、下げること無く適正な給与となるかは、転職においてとても重要な項目です。しっかり確認していきましょう。
求人票に『想定年収』と書かれているワケ
求人情報に企業が記載する給与情報は、大きく2つの情報になります。
ひとつはすでにご説明している保障給に関する情報。もうひとつが想定年収になります。
想定年収とは、その言葉の通りで、『想定される』年収になります。
通勤交通費と残業手当を除いたすべての手当てを含めた給与の12カ月分と満額だった場合の賞与が合算された年収になります。
給与例として、年齢や勤続年数などごとに例を挙げている場合もあるでしょう。
企業がこの想定年収を掲示している最大のワケは、多くの人がこの想定年収を参考に応募するかどうかを決めているからです。
「これくらいの年収であれば応募してみたい」と思わせるためにもっとも重要な項目として位置づけていることが最大の理由といえるでしょう。
想定年収で実際にもらうことのできる年収はどれくらい?
それでは転職して実際に支払われる年収はどれくらいになるでしょうか。
先に述べたように想定年収は交通費と残業代を除いた手当のすべてを含んだ給与と満額となる賞与が含まれます。
しかし、入社初年度は賞与は寸志であることが少なくありません。
歩合給の割合が大きい給与であると、想定年収よりも大幅に下回る金額になる可能性が高いでしょう。
まずは想定年収と実際の年収に乖離があることを把握しておきましょう。
その上で、労働契約を結ぶ際に歩合給の部分や賞与がどのような扱いになるのかを確認しておきたいところです。
保障給と想定年収の関係性について
想定年収はモデル的な一例を示した数字ですので年齢や経験年数などによって、想定していた金額と異なる可能性があります。
特に歩合給のみや、固定給より歩合給の比率が高い営業職や販売職、ドライバー職などは注意が必要です。
想定年収を元に年収を仮定して転職してしまうと、予想を大きく下回る年収になってしまう可能性があります。
当然年収は生活に直結したものですので、とても重要となります。そこで、確認を重視したいのは保障給です。
こちらは、労働基準法から逸脱しない金額の提示が法的にきまっているものです。
保障給に記載されている金額から、時給換算して、まずは基礎時給がいくらになるのかを導き出します。
想定される残業や、成果やノルマの達成予想から検討できる歩合給の伸びを想定します。
それによって転職時にどれくらいの数字を出すことができるのかを検討するようにしましょう。
歩合給における給与条件の見方
歩合給の比率が高いと想定される業種、職種では、保障給の金額から確実に支払われる最低金額を確認した上で基礎時給を導き出します。
基礎時給がいくらになるのかで想定する給与を導き出す
歩合給における基礎受給の計算方法は以下になります。固定給+歩合給もありますので、固定給と比較してみましょう。
固定給の基礎時給=固定給の金額÷所定労働時間
歩合給の基礎時給=歩合給の金額÷総労働時間(所定労働時間+残業時間)
固定給の部分の労働時間は所定労働時間ですが、歩合給の部分は総労働時間になります。
つまり、固定給の部分よりも当然労働時間が長くなりますので、時給換算で金額が低くなります。
この金額をベースとして、想定される残業の割増分などを鑑みて、歩合給(または固定給+歩合給)の想定される給与を導き出しましょう。
手取額が現在より高くなるか低くなるか
固定給ではなく、歩合給の割合が高い職種であっても支払われた給与から控除される項目があります。
そのため、給与がそのまま振り込まれるわけではありません。
主な控除項目は保険料(健康保険や厚生年金、雇用保険)と税金(所得税や住民税)で、この金額が差し引かれたものが手取りになります。
歩合給の給与体系で、成果がでない場合に固定的に差し引かれる控除がカバーできる範囲で保障給が賄われているか確認が必要です。
給与から控除された、いわゆる手取りとなる金額はおよそ80%となるので、保障給で提示されている金額と鑑みて検討するようにしましょう。
まとめ
歩合制は働くことで生まれる成果やノルマに応じて給与が導き出されます。
自分のスキルを活かすことで高い給与を得られる可能性もあり、高いモチベーションを持てる給与システムといえるでしょう。
しかし、自身の体調不良や社会情勢によって「昨日までは好調だったのに今日いきなり低調になる」という可能性もあります。
そのようなリスクに対する備えを転職前にしっかりと把握しておくことが重要です。
そのためにも求人情報における給与欄に記載された想定年収とともに、保障給の金額および保障給の仕組みを理解しておきましょう。
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