試用期間中の社会保険加入の必要性を解説!加入義務がある要件は?期間中に退職した場合の影響と対応も紹介
近年は、正式採用の前に試用期間を設定することで、解雇のハードルを下げた形式の雇用形態を取っている企業も少なくありません。ただし、試用期間中であったとしても、扱いは正社員と変わりません。そのため、給与や社会保険といった条件においても正社員と同様に扱われます。この記事では、社会保険加入の必要性と、加入義務の発生条件や未加入の危険性、退職時に必要となる社会保険の手続きについて解説していきます。
目次
試用期間中であっても社会保険加入は必須
試用期間中であっても、給料が発生する雇用形態であるなら、社会保険の加入義務は発生します。
社会保険の加入義務が発生するのは、原則として入社初日です。社会保険の加入状況については、必ず会社側に確認しておきましょう。
社会保険に未加入の社員がいた場合、社員個人にも会社にも大きなリスクが発生します。
正規雇用と同様の手続きが必要であると、双方が認識しておかないといけません。
試用期間が短ければ加入しなくてもよい?
時折、試用期間が2ヶ月以内であれば社会保険に加入する必要はない、といった話を目にすることがあります。
試用期間が終了してから加入することで保険料の節約になる、という裏技のような話です。
しかし、これは全くの間違いです。
正確には、2ヶ月以内の有期契約で契約を延長する見込みがない場合に限ってのみ、社会保険加入の義務が発生しません。
ただし、試用期間はその後の正式採用を見込んでいるため、この条件には合致しません。
試用期間を2ヶ月以内に設定しても、社会保険の加入義務は発生します。
試用期間中の社会保険加入を拒否できる?
試用期間中に個人の都合で退社をした場合、次の就職で不利になる場合があります。
そのため、社会保険を未加入にしておき、記録が残らないようにしたいと考える方もいます。
しかし、社会保険の加入は義務であり、拒否する権利は誰にもありません。
社会保険加入の条件がそろっている会社に入社するのであれば、試用期間かどうかは関係なく社会保険には加入しなくてはいけません。
この記事内でも後述しますが、社会保険未加入におけるリスクは甚大です。入社時には、必ず社会保険に加入してください。
社会保険の加入義務はどんなケースで発生する?
社会保険の加入義務は、どんな会社であっても必ずしも発生するわけではありません。
以下の条件に該当する強制適用事業所に所属する従業員に対してのみ、加入義務が発生します。
・株式会社などの法人の事業所(事業主ひとりだけの会社も含まれる)
・従業員が常時5人以上在籍する、一部業種を除いた個人事業所
この要件を満たしている会社は強制適用事業所に該当し、例外なく社会保険の加入義務が発生します。
上記の通り、個人事業所においては業種が条件に絡んできます。
強制適用事業所に該当する事業と、該当しない事業をそれぞれ詳しく解説していきます。
強制適用事業所の条件に該当する業種
強制適用事業所に該当する業種は以下のようなものがあります。
・製造業
・土木建築業
・鉱業
・運送業
・金融保険業
・物品販売業
・公告業
・電気供給業、医療保険業などのインフラ関連
・教育や研究に関する業種
・通信と報道に携わる業種 など
これらの業種の個人事業所は、従業員が常時5人以上いる場合は強制適用事業所となります。例外なく社会保険への加入が必要です。
強制適用事業所に該当しない業種
加入義務が発生しない業種としては、以下の業種が該当します。
・農林漁業
・飲食や接客などのサービス業
・理容および美容
・娯楽業
・法律事務所や会計事務所をはじめとする専門的な自由業
・寺社や教会といった宗教施設
強制適用事業所以外は社会保険に加入できない?
強制適用事業所に該当しない会社であっても、任意適用事業所として認可を受ければ社会保険の加入は可能です。
任意適用事業所になるためには、事業主が申請し、厚生労働大臣の認可を受けなくてはいけません。
このとき、従業員の半数以上が社会保険に加入することに賛同していないと許可がおりません。
そのため、事前に社員に聞き取りをする必要があります。
任意適用事業所として認可がおりた会社は、強制適用事業所と同様、所属社員全員に社会保険の加入義務が発生します。
加入を希望する人のみが社会保険に入ればいいというわけではない点には注意が必要です。
強制適用事業所であっても、任意適用事業所であっても、入社時には社会保険の加入が必要です。
それは試用期間であっても変わりません。
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パートとアルバイトの加入義務は勤務時間次第
試用期間は、パートやアルバイトといった、短時間労働者として雇用されるケースもあります。
しかし、短時間労働者は社会保険の加入義務発生の条件が変わります。
短時間労働者で社会保険の加入が必要になるケースは、2パターンに分けられます。
それぞれのパターンにおける条件を詳細に解説していきます。
勤務日数および時間が正社員の75%以上
その事業所におけるフルタイムの正社員と比較した勤務日数や勤務時間が関係します。
短時間労働者にも社会保険加入義務が発生するのは、ひと月の勤務日数と、1日もしくは1週間内での勤務時間が4分の3以上である場合です。
これは、強制適用事業所、任意適用事業所のどちらでも適用されます。
注意が必要なのは、勤務日数と勤務時間の両方が正社員の4分の3以上でないといけない点です。
勤務日数が正社員と同じでも、1日もしくは1週間内での勤務時間が4分の3に満たない場合は、適用対象外となります。
勤務時間が多くても、勤務日数が4分の3に満たない場合も同様です。
雇用形態がパートやアルバイトのときに社会保険に加入したい場合、勤務日数と勤務時間を正社員と比較しておきましょう。
特定適用事業所や任意適用事業所で4つの条件を満たす
上記の条件を満たせていなかったとしても、事業所の規模などによっては、まだ社会保険に加入できる可能性はあります。
まず、すでに社会保険対象となっている社員が501名以上いる会社(特定適用事業所)。
もしくは半数以上の社員の同意を得た任意適用事業所です。
このどちらかであれば、以下の4つの条件をすべて満たすことで社会保険に加入できます。
1. 一週間あたりの所定労働時間が20時間を超えている
2. 残業代や交通費を除いた1ヶ月の所定賃金が8万8,000円以上
3. 雇用期間の見込みが1年以上である
4. 学生ではない(夜間学校、通信制学校、定時制学校は除く)
上記のすべてを満たしている必要があるため、いずれかひとつでも満たせていない場合は対象外となってしまいます。
特に難しいとされているのが、2番の賃金の条件です。
毎月8万8,000円以上の給与を得た場合、年収は106万円以上となるため、106万円の壁と称されています。
社会保険未加入のリスク
社会保険の加入義務があるにも拘わらず、加入していない社員がいると違法行為にあたり、様々なリスクが発生します。
社員個人と会社側で背負うリスクには差があります。社会保険未加入時に発生するリスクについて詳しく解説していきます。
社会保険未加入における罰則
加入義務を無視して社会保険に加入していない社員がいることが発覚すると、6カ月以下の懲役または50万円以下の罰金が事業主に課せられます。
仮に、社員自身が社会保険への加入を断ったとしても、この罰則は事業主が対象となります。
社員を社会保険に加入させるのは、事業主としての責務であると心がけましょう。
さかのぼり加入による保険料の支払い
また、未加入が発覚した時点から、最大で2年分をさかのぼって社会保険に加入しなくてはいけなくなります。
さらに、さかのぼった分の保険料の支払い義務が発生します。
さかのぼり加入は、未加入だった社員と会社で折半して一括で支払うケースが多いです。
100万円以上の支払いをしなくてはいけなくなり、個人としてはかなり手痛い出費となります。
年金受給額の減少
当然ながら未加入の期間中は厚生年金加入記録が残りません。
そのため、将来の年金受給額が減ってしまう可能性があることも忘れてはいけません。
年金を1年納めていないと、受け取れる年金が1年につき約2万円も減額されてしまいます。
2年ならば年額約4万円も減ってしまうため、将来的に大きな痛手となります。
試用期間中に退職したら社会保険はどうなる?
試用期間中にミスマッチが発覚した際は、退職を検討することもあります。
退職したあとは社会保険の切り替えや解除が必要です。
通常、入社時の健康保険の切り替えは会社側で手続きをしてくれるケースがほとんどです。
しかし、退社時の切り替えや解除の手続きは自分でする必要があります。
健康保険の切り替え
健康保険は、退社後に切り替えなくてはいけません。
切り替え先には、任意継続健康保険、国民健康保険、家族の扶養に入るという3つがあります。
どのような手続きが必要になるのか、それぞれの保険に分けて手続きの方法を解説していきます。
任意継続健康保険
これは、任意で在職中と同じ被保険者資格を継続するという制度です。
切り替えるためには、退職前の健康保険に2ヶ月以上加入している必要があります。
任意継続健康保険の期間は、最長で2年間まで延長できます。
任意継続健康保険に切り替えるためには、退職の翌日から20日以内に手続きを行ってください。
4月1日に退職したのであれば、その翌日の4月2日から20日以内、つまり4月22日までに手続きをする必要があります。
手続きを行う場所は健康保険の種類によって異なります。
事業主が組合を設立した組合管掌健康保険なら健康保険組合事務所が窓口です。
全国健康保険協会の協会けんぽなら居住地を管轄する全国健康保険協会が窓口となります。
全国健康保険協会の窓口やホームページなどで任意継続被保険者資格取得申出書を入手し、必要事項を記入し提出すれば手続きできます。
また、必要書類を郵送しての手続きも可能です。
国民健康保険
市区町村の健康保険に切り替える場合は、会社の健康保険を解除したことを証明する書類の他にも必要なものがあります。
マイナンバーが確認できるものや、本人確認ができるもの、口座振替用のキャッシュカードが必要です。
書類とともにこれらを持参して、自治体の保険係で手続きを行います。
原則としては退職翌日から14日以内に手続きをすることとされていますが、期日を超えてしまっても手続きは可能です。
家族の扶養に入る
年収が130万円未満であれば、家族の健康保険の被扶養者になるという方法もあります。
家族が健康保険の被保険者であることのほか、家族の年収が自身の年収の倍以上であることが条件となります。
扶養に入るには、家族の健康保険を発行している機関に問い合わせてみましょう。
厚生年金から国民年金への切り替え
会社の社会保険に加入しているときは、厚生年金に加入していますが、退社後は国民年金に切り替えなくてはいけません。
こちらも健康保険と同様に退社時の手続きは自分で行います。
国民年金への切り替えは、退職から14日以内に手続きすることが原則で決められています。
実は、退職翌日の時点で国民年金加入者に切り替えられてはいるのです。
しかし、この期日内に手続きをしないと保険料の納付ができないため、年金未払いの期間が発生してしまうというケースがあります。
年金を切り替えるときは、年金手帳と印鑑、退職した日付を証明する書類を持参して、年金窓口で手続きを行います。
入社時に年金手帳を会社に預けているときは、返してもらうのは忘れないようにしましょう。
試用期間での退職は失業手当を受け取れない
雇用保険による失業手当を受け取るには、1年以上雇用保険に加入していることが条件となっています。
そのため、試用期間内で退職したのであれば失業手当を受け取る要件を満たしていないことがほとんどです。
また、仮に1年以上雇用保険に加入していても入院などの理由で勤務期間が1年に満たない場合なども失業手当をもらえないケースにあたります。
雇用保険の解除は、企業側で行う手続きなので、退職者の方ですべきことはありません。
まとめ
試用期間は、後々の正式採用を見込んでいるため、正社員と同様に社会保険の加入義務が発生します。
保障を得るためはもちろんのこと、未加入でいると違法行為にあたるため、社会保険の加入は必須事項です。
試用期間は社会保険に加入しなくてもいいということはまずあり得ません。
退職後の社会保険の処理も正社員と同様にはなります。
しかし、勤務期間の関係上失業手当てをもらうことはまず不可能である点は覚えておきましょう。
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