【知っておきたい!】『みなし残業』のメリット・デメリットを徹底解説!その仕組みから現状まで分かりやすく解説します。
「みなし残業」を聞いたことのある人は多いのではないでしょうか?自分に関係ないと思っている人ほど要注意です!残業関係で、なんとく把握しているという方も多いこの「みなし残業」。言葉的にもマイナスなイメージを持たれがちですが、実は私たちの働き方にもメリットがあります。今回は「みなし残業」の仕組みと、メリット・デメリットについて詳しく紹介していきます。
みなし残業とは?
「みなし残業」を取り入れている企業も多く、誰しも一度は見たことや、ニュースなどで聞いたことはあるかと思います。
簡単に言うと「みなし残業」のメリットには労働者にとって「残業時間に関わらず残業代が固定で支払われる」、企業にとっては「計算コストを省ける」というものがあります。
一方でデメリットとしては、労働者にとっては「結局サービス残業になるリスク」、企業にとっては「残業がなくても残業代が発生する」という事になります。
それでは早速「みなし残業」がどうしてあるのか、その仕組みと一緒に紹介しますので、ぜひチェックしてください。
みなし残業の仕組み
「みなし残業」と言われることが一般的ですが、正式名称「固定残業代」と言います。
これは、残業をしたと“みなし”て支給されるから「みなし残業」とも言われるようですが、名称は企業によって異なることもあります。
この「固定残業代」とは、本来ならば残業代として支給しなければならない時間外・休日・深夜労働の割増賃金をあらかじめ定額で支払われることを言います。
なので「固定残業代」で契約している企業は、スタッフが固定残業代分の時間を働いた・働いていないに関わらず、固定残業代をスタッフに支払う義務が発生します。
みなし労働時間制との違い
実際の労働時間にかかわらず、「一定の時間働いた」とみなし、その時間分の賃金を支払うのが「みなし労働時間制」です。
「事業場外みなし労働時間制」「専門業務型裁量労働制」「企画業務型裁量労働制」の3種類があり、業務内容によって導入されるものが異なります。
みなし労働時間制では、残業も含めて労働時間をみなします。
みなし残業のメリット
みなし残業のメリット① 定時に帰れば得になる
みなし残業は、残業しなくても一定時間の残業時間分の給与が振り込まれます。
なので、実際に残業せずに定時で業務を終了し帰ればその分の時間を自分の好きな事ができますよね。
なので、固定残業代の時間分はしっかり支給され、且つ定時に帰ればその時間分だけ自由に使えるため、お得になると言えますね。
みなし残業のメリット② 不公平がない
就業時間中にしっかりと効率的に業務を行い、定時に退社するスタッフと残業代を目当てに残業する、いわゆるダラダラ残業するスタッフでは、後者に別途残業代を支給するとなれば不公平ですよね。
スタッフ同士の不公平さ、ダラダラ残業をなくし業務効率を図れるメリットがあります。
みなし残業のメリット③ 企業側にとっては給与計算が楽
残業代の支給の為に、個々人の残業時間に応じて給与計算を行うと企業側にとって負担になります。
なのであらかじめ、みなし残業代として残業時間を定めてその超過分を支給すると給与計算が楽になりますよね。
しかし、給与計算が楽になると言っても、企業側がスタッフの残業時間を把握しなくて良いというわけではありません。
みなし残業の規定されている時間を超過した場合は、別途残業代・割増賃金代を支給されます。
みなし残業のメリット④ 安定した収入
残業時間をするかどうか、また時間数に応じて残業代の支給が変わり、給与額に変動が出てしまいますよね。
そうなると毎月の収入が不安定になる可能性もあります。
みなし残業を導入することで、残業時間の有無に関わらず支給されます。
また、残業時間が規定時間分を超過した場合別途プラスで支給され、よりスタッフが安定した収入が得られることがメリットと言えるでしょう。
みなし残業のデメリット
みなし残業のデメリット① みなし残業時間分の勤務
みなし残業時間分の給与があらかじめ設定されているため、企業によっては「残業時間分は働かなければ」という雰囲気があるかも知れません。
結果「なんとなく帰りにくい雰囲気…」と気疲れをおこしてしまったり、明らか就業時間以上の業務量を任される可能性もあります。
しかし、業務に問題なければ、残業勤務をする必要はありません。
みなし残業のデメリット② 基本給が低くなることも
支給はみなし残業代が多く設定されていて基本給が低くなっている。ということはありませんか?
一般的に賞与や社会保障の手当金の算定は基本給から算出されることが多く、基本給が低いとその分、金額が低くなる傾向があります。
なので、トータルの支給額が高くても、みなし残業代が多いと全体の整合性を取るために基本給を低く設定する可能性もあります。契約時の支給明細には注意が必要です。
みなし残業のデメリット③ 残業がある程度多い
「みなし残業が設定されている=その時間分の残業発生する可能性が高い。」とも取れます。
自分が希望する仕事内容・残業時間を踏まえて、どれほど調節できるのか。よく考える必要があります。
また、残業時間があまりにも長い時間で設定されていると、サービス残業を助長される風土もあるかも知れません。
みなし残業のデメリット④ あまりに時間が長いと心身負担に
一般的に、月45時間以上の残業は禁止されています。
なので、もし45時間以上のみなし残業が設定されている場合にはその企業はいわゆるブラックの可能性が高いです。
あまりに長い残業を行うことで精神的・身体的に負担になるため、一度労働基準監督署に相談すると良いでしょう。
みなし残業のチェックポイント
「みなし残業」の内容は分かったけど具体的にどのような点に気を付けていいか難しいところもありますよね。
今在籍している企業が、みなし残業制度を導入している、もしくは、これから就職しようと思っている方向けに「みなし残業」のチェックポイントをご紹介します。
チェックポイント① 求人募集要項の条件
仕事を探すうえで重要になる求人募集要項。求職者はこの募集要項を見て就職を決定する重要な情報の一つになります。
近年、この求人募集要項に給与の中に「みなし残業」の記載がなく、実際に入社した時に初めて「みなし残業」が長い時間設定されているのを知らされて問題になった件数が多く上げられます、
現在、厚生労働省により、求人募集要項の給与欄には、あらかじめ「みなし残業」が設定されている場合、その時間と残業代を記載することが義務づけられています。
しかし、実際の労働条件にみなし残業が設定されているが、求人募集要項に記載がない場合には要注意でしょう。
チェックポイント② 超過分の残業代の支給有無
みなし残業時間以上の残業をした場合、労働基準法により別途、残業代・割増賃金を支給されなければなりません。
中には、「○○手当」を残業手当として勘案しているという企業があるかも知れませんが、実質の残業代として支給しているのか雇用契約書に規定されているかを必ず確認しましょう。
もし、しっかりとした規定がなければ、労働基準法の規則にある割増賃金の算出に則った賃金算出がされていない可能性があります。
チェックポイント③ 最低賃金を下回っていないか
給与はすべての手当がトータルで支給されているので、基本給分が最低賃金を下回っていても気がつきにくいでしょう。
毎年最低賃金が改正されているため、今支給されている基本給と、該当地域の最低賃金と自身の契約労働時間を算出しチェックする必要があります。
もし万が一、最低賃金を下回っていた場合、労働基準法により該当地域の最低賃金で算出された給与が支給予定となるので、一度企業に問い合わせてみましょう。
正しい残業代の計算方法
自身の残業代が適切な額かどうか計算する場合は、次の計算式を活用してください。
【1時間あたりの賃金(時給)×1.25(割増率)×残業時間】
※割増率は法内労働(1日8時間、週40時間以内)の深夜帯(午後10時~翌午前5時)で1.25倍、法外労働(1日8時間、週40時間超)の午前5時~午後10時で1.25倍
1時間あたりの賃金の算出方法が分からない場合は、次の方法で計算してください。
【月給÷(1日の所定労働時間〈定時〉×21日〈1ヶ月の平均勤務日数〉)】
未払いの残業代を請求する方法
①勤務先に交渉する
まずは勤務先に残業代の未払いがあるようだと相談しましょう。
直属の上司で構いません。
直接相談する場合は、給与計算に関しては経理や総務、または人事部で行っている場合がほとんどですが、会社によって異なりますので確認してください。
その際に残業時間が正確に記されたタイムカードや出勤記録などを揃えておきます。
②勤務先に請求書を送る
話し合いで解決しない場合は、内容証明郵便で請求書を会社宛てに送付しましょう。
基本的に残業代請求の時効は2年です。
内容証明郵便には、その期日を一時的に止められるというメリットもあります。
請求書には、理由や未払いの金額など具体的に明記してください。
③労働基準監督署に相談する
個人での交渉が不安な場合は、労働基準監督署への相談がおすすめです。
匿名での通報が可能ですので、特定されずに会社への未払い申請が行えます。
また、行政が介入する事で会社も対応を余儀なくされると考えられます。
④労働審判を起こす
最終手段は、労働審判です。
企業と労働者の間で起きた労働問題の解決を目的としており、平均2ヶ月という短期間で済みますし、手続きも簡単というメリットがあります。
(参考:裁判所「労働審判手続き」)
まとめ
「固定残業代」いわゆる「みなし残業」ですが、その制度を導入する背景には、人件費の負担軽減・経営リスク回避・公平な給与支給・仕事内容など様々な理由があげられます。
みなし残業は、正しい認識・合意のもとで運用されていればスタッフ・企業とお互いにメリットがある制度と言えるでしょう。
しかし、近年「みなし残業」の制度を誤った解釈しスタッフに強要する企業や、お互いの認識が合っていないことにより、大きな労務問題に発達する可能性があります。
法令遵守に則し、適正に働くためにも、自分の企業が「みなし残業」をどのように規定されているか今一度確認すると良いかも知れません。
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