職能別組織を具体例でわかりやすく解説!メリットデメリットや他組織との関係性は?
会社という組織をイメージする際の代表である職能別組織。社員それぞれができることによって部署を分けるのは一見合理的に見えます。しかし、本当にそうなのでしょうか。今回は職能別組織を採用する意味、そのメリット・デメリット、デメリットの解決策についてご提案します。これから転職を考えている人や、今まさに職能別組織で働いている人にとっては必見の情報ですよ!
目次
職能別組織の特徴
職能別組織は「職種ごと」に部門を分ける
職能別組織は「機能別組織」とも呼ばれる組織構造の1つです。
具体的に言えば「営業」「販売」「人事」など、職種に応じて部門を分けています。
「どのような役割を持った人が集まる部署か」ということを第一に考えるため、様々な業務を展開している際には同じ部署に違う業務担当が所属しているという状況にもなります。
例えば一言に「営業」と言っても、「個人」に対する営業と「法人」に対する営業等、そもそも取り扱っている商品が違う可能性があります。
【具体例】職能別組織を採用した日本企業は?
パナソニック株式会社(松下電器産業株式会社)では、もともと事業部制組織が取り入れられていました。
1933年から始まっており、松下幸之助氏が独自の発想だったと言われています。
しかし1990年代後半に普及し始めた家電のデジタル化やネットワーク化の波によって、事業部制組織のデメリットである事業の重複による無駄を削除せざるを得なくなったことで職能別組織の導入に踏み切りました。
その後は時代の変化に応じた組織構造を積極的に取り入れることで業績回復を実現しています。
職能別組織がふさわしい会社の特徴は?
職能別組織には向き不向きがあり、一般的には事業や製品が限られている場合に向いているとされます。
先述したパナソニックのように、数多くの事業部が存在していることで事業が重複することが業績に悪影響を与えることがあるからです。
例えば国内の企業を見てみると、事業部ごとに職能別組織がたてられているような状態も多いようです。
職能別組織と事業部制組織との違い
それぞれの部署は基本的に社長の下に置かれる
事業部制組織は各事業部ごとに営業、販売、マーケティング…といった機能が存在し、各事業部ごとに事業活動を行っていきます。
それに対して職能別組織は営業部、販売部、マーケティング部…などと分けられた部署は基本社長の直下の部署となります。
つまり最終決定権の大半がその企業の社長に委ねられているということです。
もちろんそれぞれの部署に取りまとめる役職はありますが、あくまで部署自体の責任者で監督者という立場。その部署の運営方針だけではなく、契約など企業にとっての重要事項を独断で決定する権利を持ちません。
ですがある程度の裁量は与えられている場合も多く、部署内で収まることは報告する必要がないとして事後報告で留めるケースもあるようです。
職能別組織の部門
職能別組織は部門ごとに分かれていると解説しましたが、実際どのように分かれているのでしょうか。
企業によっては特定の製品を開発するための開発部門や製造部門があったり、特有の部門があったりします。つまり、一概に職能別組織といっても独自の形態をとっている場合もあります。
今回はあくまでも、企業を経営する上で最低限必要となる経理や総務といった基本的な部門の解説をします。
- 経理部門
- 総務部門
- 開発部門
経理部門
職能別組織に限らず、どの組織形態でも会社の運営をする上で必ず必要になるのがお金です。
職能別組織では、お金のことを担当するのは「経理部門」になります。日常のお金の管理・処理や資金調達をする部門です。
社員のお給料に加えて会社の経営費・開発の予算など事業の幅広い部分で関わる、非常に大切な存在となります。
経理部門はお金の調達や流れを担当しますが、実際の運用は別の部門である財務部門の管轄になることが多いです。
総務部門
企業内で起こる事務全般を扱う部門です。「何でも屋」と呼ばれるほどにその業務は多岐にわたります。物品の管理から環境保全に秘書まで、様々なことをしなくてはなりません。
社内のイベントや社葬、また社員の結婚のお祝いの品を送る準備も、全てこちらの部門が行います。
こういわれると「会社の雑用係」という印象が強く、地味であまり良いイメージを持てない人もいるかもしれません。ですが事務業務を行わないと、会社は正常に回らなくなってしまうのです。
事務がしっかりとできて、初めて他の部門を円滑に動かすことができます。この組織が目指しているのは、「事務業務から会社をレベルアップさせること」なのです。
大きな会社なら、秘書や環境保全を別の部門にして組織を編成出来るでしょう。
しかしながら、中小企業やベンチャー企業となると編成できるだけの人員がいないことがほとんどです。
規模が小さい企業であるほど、総務部門はより重要な立ち位置になっていきます。
開発部門
メーカーの商品開発やIT企業のシステム開発といった、商品やモノを直接作るのは開発部門です。中には「マーケティング部」という、商品開発の設計に関わる部門の傘下に入っていることもあります。
掲げられた目標と品質に達する商品を、予算内の金額で製造または開発する組織です。
会社や組織形態によっては「技術部門」と分かれていることもあります。その場合専門技術は技術部門、その他の開発系統は開発部門と担当する業務がより細かく分かれていることが多いです。
職能別組織と他の組織構造との関係性
「事業部制組織」の基盤となっている部分も
事業部制組織は事業ごとに部署を分ける組織構造です。
しかし、事業部単位で見ていくと、その中で職種に応じた振り分けがなされていることも少なくありません。この事業の営業 / 広報 / エンジニアといったように職能別組織の制度を利用していることもあります。
言われてみればあらゆる事業単位で業務を細分化している、徹底的な「事業部制組織」の企業はあまり見かけないですよね。
「マトリクス組織」にも一部取り入れられている
また「マトリクス組織」というものもあります。職能別組織と事業部制組織のいいところ取りを試みた組織構造です。
カンパニー制においても職能に応じて部門を分けるという方式を採用している場合もあります。
つまり、職能別組織は単に1つの組織の形に留まらず、あらゆる組織構造の根幹を担っているということです。現代での組織づくりを考える上で欠かせない要素であると言えるでしょう。
職能別組織のメリット
- 部署ごとのスキルが高まる
- 業務のノウハウが集約される
- 企業としての方針にブレが生じにくい
部署ごとのスキルが高まる
部署に応じて必要となるスキルが異なるため、社員が持つ能力の専門性が高まっていきます。部署内でスキルアップに必要なことや知識共有もなされるので、部署全体がその職能に特化していくのです。
特化していった結果、企業全体の生産性も上がり、利益増大に貢献します。
部署間で全く異なるスキルが求められるため、自分の仕事に必要な能力を磨くことに集中できるのもメリットと言えるでしょう。
また部署ごとの仕事内容が大きく異なることにより、各部署同士がライバル関係になるのも少ない傾向があります。
業務のノウハウが集約される
新人で入った際に、業務内容がわからなくて困惑した経験はありませんか?
職能別組織制を採用しているとその職種に必要な技能、コツ、業務の進め方などが蓄積されています。そのため、先輩や上司に聞けば解決する、というケースもかなりの数あるでしょう。
こういったノウハウの蓄積は社員育成のためにも大変有益と言えます。
企業としての方針にブレが生じにくい
全ての部署の決定権が社長に集約されているということは、最終的には社長の意思が優先されます。
これから事業をどう展開していきたいか、どういう方向性で企業を経営していきたいかという視点で部署に指示を出すことができるのは、基本的には社長一人だけです。
トップが指示を出すので方針にブレが生じにくく、企業として一本筋の通った経営が可能となります。
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職能別組織のデメリットと対処法
- 業務範囲が狭い
- 転勤や異動の可能性が高い
- 保守的な社風がある
- 出世争い・社内競争が激しい
- 経営陣との距離が遠い
複数の業務に対応しにくい
『職能別組織の特徴』の部分でも述べましたが、職能別組織制では職種によって部署が分けられ、異なる事業に携わっている人が同じ部署という場合があります。
つまり、展開している業務が多ければ多いほど、部署内での事業内容の把握や担当者がいない場合の対応に困る場面も増えるということです。
積極的に事業展開をする場合には職能別に部署を分けるよりも、事業ごとに部署を分ける事業部制を採った方が効率がよくなります。
特定の業務に特化された人材しか育たない
営業であれば営業の能力は磨かれます。しかしいきなり人事部や広報部などの仕事を行え、と言われても仕事をするのは難しいですよね。
逆も同じです。ある職能における「スペシャリスト」は育成することができても、他の業務についてはまるで知識がないという状況が起こりえます。
キャリアを積む上で、選択肢が狭まるのはかなりの痛手です。
確かに専門性が高い職というのは需要もあるでしょう。とはいえその職種を続けることが困難になったとき、全くの未経験からでも採用してくれる会社はそう多くはないはずです。あってもほぼ確実に待遇は前職より落ちてしまいます。
また、他の職種についての業務内容に理解がないと、他部署と軋轢が生じてしまう可能性も考えられます。多くの業務に触れることでそれぞれの大変さ、難しさを知ることができるのも事実です。
現在職能別組織を採用している企業で働いているとしても、自分以外の部署の人の話を聞くなどして見識を広げるのも大切ですよ。
トラブルが起きた際に責任の所在が不明確
社長をトップとした組織でも、業務トラブルや問題の一つ一つ全ての責任を社長一人で取ることは現実的ではありません。
社長や企業幹部がトラブルを起こしたのならともかく、部署が起こしたトラブルについての原因究明や改善策を考えるのは基本的に問題が生じた部署及び担当者になります。
ですが同じ部署内で担当者が複数いたり、部署を超えた案件だった場合は責任をどこが/誰が取るべきか揉めるでしょう。仮に揉めに揉めて、最終的に責任を負う人間が決まったとしてもわだかまりが残るのは必然です。
職能別組織であっても、業務ごとに臨時のチームを組むなどして責任の所在をはっきりさせておくのが責任問題関連のトラブル回避に繋がります。
同じ職種の部署内で対立してしまう場合も
ノルマが課される営業職などであればイメージしやすいですね。
営業部という部署内で「どの社員がどれだけ売上を上げたか」と競争のようにしてしまうと、部署内の人間関係がギスギスしてしまうのも無理がありません。
足の引っ張り合いに発展してしまい、結果として業績悪化の原因を作ることにもなってしまいます。
同じ部署で異なる業務に関わっている社員についても同様です。自分の利益を優先しようと、互いに相手の業務を妨害しようとすることもあります。
切磋琢磨するような関係であればいいのですが、相手を陥れる方向にシフトした場合は損害にしかなりません。
社員同士を比べて、特定の誰かだけ優遇しないこと。
業務が違う(特に他方の案件の利益がもう一方の案件の損害になる)社員同士は極力関わる機会をなくすこと。
それによって労働環境や職場の人間関係の悪化を防ぐことができるでしょう。
広い視野を持つことが肝要〜職能別組織で働く中で〜
- 職能別組織とは職種ごとに部門を分ける組織構造
- それぞれの部門が社長の直下にあることが多い
- 部門ごとのノウハウが溜まりやす一方、風通しが悪くなりやすい傾向がある
あらゆる組織構造と密接に関連している職能別組織。採用しやすい体制だからこそ、生じやすい問題点への対策も十分検討されてきました。
専門性を高めること自体は悪くありません。それによって視野が狭くなることがよくないのです。
ある分野に特化しながらも、他の業務についても知識を身につけた方がこの先キャリアを積み重ねる、または転職をする際の選択肢を増やすことにも繋がります。
「自分の担当はこの分野だけだから」と言わず、余裕があるときにはぜひ様々な仕事に触れてみましょう。
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