ブレインテックの注目企業を紹介!脳科学ビジネスが活用される事業を徹底解説
脳科学とITを融合させたブレインテックは、世界中から注目を集めています。アメリカやイスラエルは国が主体となってプロジェクトを進めており、日本でも各企業において研究が進められています。では具体的にどのような事例があるのか、ブレインテックのカオスマップとともにみていきましょう。
目次
国内のブレインテック注目企業
日本国内では、ブレインテック市場に大手企業も続々と参入しています。
アメリカのように国が音頭を取ってプロジェクトを進めているというわけではありませんが、企業ごとに市場へ参入している形です。
ブレインテックの市場規模はあと数年で5兆円規模になると言われていますから、ますます参入企業が増えるでしょう。
ここでは国内のブレインテック注目企業をご紹介します。
株式会社メディアシーク
メディアシークでは、自社の強みをさらに発展していくためにブレインテックのサービス開発などを進めています。
例えば脳の状態を整えるニューロフィードバックという技術を活用した治療用アプリの研究・開発や、ワーキングメモリの向上に役立つスマートフォンアプリ「ALPHA SWITCH PRO」の開発を行なっています。
ワーキングメモリとは情報を一時的に記憶・処理・利用する能力のことで、日常生活を送る上で必要不可欠な能力です。
メディアシークはそういったブレインテクノロジーなどのIT技術を活用して、教育分野であるエドテックのシステム構築にも強みを持っています。
幅広い分野から先端技術の推進を牽引している企業です。
株式会社サイバーヨガ研究所
ヨガに最新のテクノロジーを取り入れたヨガスタジオ「サイバー・ヨガ スタジオ」を運営している、筑波大学発のベンチャー企業です。
自分自身の脳活動や自律神経の状態、ストレスを可視化して、それをもとにヨガのテクニックを応用した自己コントロールのトレーニングを行なっていきます。
①分析 ②強化 ③適応
の流れで「勝てる脳」を鍛えていくプログラムになっており、高いパフォーマンスを発揮するためのメンタルコントロールに焦点をおいて研究を進めています。
株式会社neumo
「人類1.000年後の存続への貢献」を理念として、脳神経科学をベースとした音感向上や音感測定の製品開発を展開しています。
音は耳から伝わった後にその振動が電気信号に変換され、さらに音を処理する脳の聴覚野という領域に伝わります。
そこで脳波を使ったトレーニングを行い、脳の機能を高めることで音楽の可能性を広げることが可能になるのです。
neumoはスタンフォード大学やUCLAの支援を受けつつ、独自の技術開発を行なっています。
確かな技術で音楽領域での脳神経科学を推進している企業です。
アース製薬株式会社
アース製薬株式会社は、自社で提供している消臭芳香剤の消臭効果を調査するために、SOOTHと共同でニューロマーケティングを実施しています。
香りと脳波の関係を調べた結果、お部屋のニオイを消臭すると気分の安定度が高まることを発表しました。
ニューロマーケティングに取り組むことで自社の商品開発やマーケティングにも活用され、商品の確実な効果をアピールすることに成功した企業です。
日産自動車株式会社
日産自動車株式会社は、「人々の生活を豊かに」というビジョンを掲げ、未来に向けた基礎研究にも注力している企業です。
その中の1つに脳波測定による運転支援技術があります。
この技術は、ドライバーがヘッドセットを着用することで脳波を計測、解析し、自動運転に適用します。
ドライバーが操作を開始する0.2~0.5秒前に運転操作を始めてくれるため、運転操作に違和感をもたなくなり自動運転を自分の思い通りにカスタマイズできるようになります。
株式会社資生堂
美を通じて人々が幸せになる社会の実現に向けて、数多くの化粧品を生み出しグローバル展開を行なっている株式会社資生堂。
研究領域にも力を入れている資生堂は、化粧品に対する気持ちの変化を脳科学研究で解明しています。
そこで、化粧品を使い始める時のワクワク感と恋愛初期の相手に対する脳活動、何度もリピートしている化粧品と長期的な愛情関係にある相手に対する脳活動には共通性があることを発表しました。
化粧品に対する愛用意識が安心感や癒しといった心の充足に繋がる可能性を見出し、今後も脳科学を化粧品開発などに活用していくことが期待できます。
塩野義製薬株式会社
中枢神経系疾患領域や新薬の領域に強みをもつシオノギ製薬は、うつ病、認知症、発達障害、疼痛等の未病・啓発・予防・診断や重症化抑制、治療薬の研究開発も手掛けています。
協業するのはブレインテックのスタートアップとして脳波の応用価値向上に取り組むPGV株式会社です。
さらに、 ブレイン・マシーン・インターフェース(BMI)技術に強みを持つLIFESCAPES社との重症脳卒中患者の運動機能回復を目的とした医療機器開発にも取り組んでいます。
凸版印刷
印刷で培ったクリエイティブ力をニューロデザインの領域に活用するのが凸版印刷です。
ニューロデザインは脳科学カンパニー株式会社NeUと共同で行う、ヒトの生体信号・脳活動計測を基にした科学的クリエイティブ開発手法です。
二社の強みをもとに、日常的に人がデザインに対して持つイメージの感覚を科学的に数値化します。
客観的・定量的な視点でクリエイティブの制作に活かすのが目的です。
株式会社電通サイエンスジャム
電通サイエンスジャムでは、脳波をもとに消費者の動向を探る事業を展開しています。
ニューロリサーチを感情の定量化に応用することで、企業の研究開発やマーケティング活動のサポートが目的です。
実験指示をオンラインで出せる非対面方式の「フルリモートニューロリサーチ」を提供する背景には、首都圏128世帯にクラウド連携させた脳波計測器を配布し、在宅型大規模ニューロリサーチパネルを構築できる実現力があると言えます。
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海外の注目ブレインテック企業
海外で注目されているのはBMI・BCI・センサー領域のNeuralinkやKernel、研究開発・実証実験領域のFacebookです。
Neuralinkはテスラ創業者のイーロン・マスク氏が設立したスタートアップ企業で、脳で考えるだけで電子機器を動かすサービスを開発中です。
アメリカでは、スタートアップ企業や大手企業がブレインテックのために設立した新部門が市場に参入するケースが多い傾向にあります。
これも、2013年にオバマ前大統領のもと始まったBRAIN Initiativeのおかげでしょう。
ブレインテックの事例をご紹介
脳科学とITを融合させたブレインテックは、アメリカやイスラエルを中心に国家規模でプロジェクトが進められています。
各国で具体的にどのようなプロジェクトが進行しているのか、具体的な事例をみていきましょう。
アメリカの事例
2013年にオバマ前大統領が脳神経科学を推進する巨大プロジェクトであるBrain Initiativeを発表しました。
これをきっかけとし、シリコンバレ―を中心とした大手企業やスタートアップ企業が次々に市場へ参入しています。
アメリカで注目されているのは、Brain Machine Interface(BMI)と呼ばれる脳とコンピューターの連動です。
BMIに関して、大手企業マイクロソフトは頭で考えただけでアプリを動かす技術の特許を取得しました。
さらに、テスラ創業者のイーロン・マスク氏が設立したNeuralinkでは、脳で考えただけで電子機器を動かすサービスの臨床試験を始めています。
ボブスレーのスケルトンチームの選手がヘッドバンド型の脳計測装置「FocusCalm」を用いて、ニューロフィードバックよる集中度やリラックス度を高めるトレーニングの実施も始まりました。
イスラエルの事例
シモン・ペレス前大統領がIsrael Brain Technologies(IBT)を設立したことで、多くのブレインテックプロジェクトが進行しています。
IBTが主催するカンファレンスは隔年で開催され、多くのスタートアップ企業や投資家、政府関係者が世界中から集まるのです。
また、IBTはブレインテックを活用した事業に関する資金援助のための活動や創業支援を積極的に行っています。
IBTの後押しもあり、イスラエルには100社以上のスタートアップ企業がプロジェクトを進めているようです。
欧州連合(EU)の事例
EUでは、Human Brain Projectと呼ばれる脳の仕組みを理解するプロジェクトが進行中です。
脳を理解することで、あらゆる面における社会問題の解決を目指しています。
予算規模は2013年からの10年間で約10億ユーロといわれており、脳の全容解明やシミュレーションなどに力を入れています。
中国、韓国の事例
中国では2016年から15年間にわたり、国の資金援助のもとChina Brain Projectと呼ばれる脳神経の研究を進めています。
脳神経科学が進歩することで、脳疾患の治療やBMIの研究に役立つことが期待できるのです。
韓国では、脳科学分野の研究として2016年からKorea Brain Initiativeというプロジェクトが始まりました。
フランスの事例
フランスのロレアルグループは、ブレインテック企業のEmotive社と共同で香水の開発に脳波を利用する事を発表し話題になりました。
これはヘッドセットを装着した消費者が香りを嗅いだ時の脳波を測定し、消費者好みの香水を提供するというサービスです。
データは可視化され、消費者はその時の気分に合った商品をその場で見つける事が可能となります。
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日本が進めるニューロマーケティング
世界各国でブレインテック業界が盛り上げっている中、日本国内でも徐々に動きが出てきました。
日本が力を入れて取り組んでいるブレインテックは、ニューロマーケティングと呼ばれる領域です。
ニューロマーケティングとは、ある商品を使用したときにおける脳の状態を計測し、その反応を商品開発などに生かす技術のこと。
これまでのマーケティング活動では、商品使用者を対象としたアンケートや口コミを商品開発に生かしてきました。
しかし、ニューロマーケティングを活用することで言葉にできない微妙な感情を脳波から読み取ることが期待できます。
その結果、従来にくらべ詳細なマーケティング活動ができ、テレビCMや商品パッケージにも生かせるのです。
実際にニューロマーケティングの導入事例は多数あり、今後ますます発展していく領域といえます。
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ブレインテックのカオスマップ
ブレインテック関連事業を推進している株式会社メディアシークが、ブレインテックのカオスマップを作成しています。
現在のブレインテックは次の7つの領域に分類されています。
・NeuroMonitoring / Imaging(神経細胞のモニタリング/画像化)
・Brain-computer interfaces(BCI)
・NeuroFeedback(ニューロフィードバック)
・Cognitive Assessment & Enhancing(認知評価と強化)
・NeuroModulation(ニューロモデュレーション)
・Research(研究開発)
・Other(その他)
参考:メディアシーク『ブレインテック カオスマップ2021』
それぞれの分野に力を入れている企業やサービスも公開されているので、続けてご紹介します。
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脳科学ビジネスの活用分野
アメリカのBRAIN Initiativeでは、脳の全容を解明することで脳疾患の治療を確立することを目指しています。
また、選手の能力向上に役立てるため、ブレインテックサービスを練習に取り入れるプロチームも出ているようです。
プロスポーツ選手にとどまらず、私たちの生活と脳はあらゆる面で直結していますから、さまざまな分野に活用されています。
医療・ヘルスケア
ブレインテック最大の用途が、市場全体の8割以上を占める医療・ヘルスケア領域です。
脳波を読み取ることで、アルツハイマー病や認知症など脳疾患、うつ病などの神経疾患の治療や予防に役立てることが期待されます。
ブレインテックにより「脳が見える化」することで、治療が困難とされてきた病気にも対処できるかもしれないのです。
また、脳に直接磁気刺激を与え記憶力を改善する研究も行われています。
ブレインテックにより従来とは全く新しい治療法が生まれることで、更なる医療面の発展が期待されるのです。
教育・スポーツ
ニューロフィードバックと呼ばれる技術があります。
ニューロフィードバックとは、測定した脳の状態を映像や音で詳細に伝える技術のことで、教育・スポーツ領域で研究が進んでいます。
脳がどのような状態になっているか目や耳で把握することができるので、学習能力や競技能力向上に活用することができます。
既にアメリカでは、プロチームやオリンピックを狙うチームがブレインテックを練習に取り入れているようです。
日本にも教育・スポーツ領域に力を入れている企業がありますから、今後の進展に期待が高まります。
睡眠・音楽
睡眠や音楽とブレインテックも非常に相性が良いです。
脳波を測定することで質の高い睡眠を追求することが期待されます。
睡眠に関する悩みを抱えている人は多いので、快適な睡眠が実現できれば仕事や日常生活の質が上がること間違いありません。
また、音楽が脳に与える影響に着目した研究が多くなされています。
音楽を聴いてリラックスしたり気持ちを高めたりと、音楽が私たちに与える影響は計り知れません。
脳の状態に合わせたおすすめの音楽を教えてくれるなど、一歩進んだサービスの普及に期待が高まります。
マーケティング
日本が力を入れているニューロマーケティングも注目の1つです。
従来のアンケートや口コミ調査などのマーケティング活動では、言語化できない感情が散見されました。
しかし、脳の状態を直接読み取り微妙な感情の変化を察知できれば、より本質的なマーケティング活動が期待されるのです。
また、商品パッケージやテレビCMなどにも活用できるため、今後多くの企業が導入するとみられます。
ニューロマーケティングはブレインテックの中でまだ大きなシェア率はありませんが、今後伸びてくることは間違いないでしょう。
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ブレインテックは幅広く活用できる技術
ブレインテックのカオスマップでみたように、主に8つの領域で研究が進められています。
医療・ヘルスケア・教育・スポーツ・睡眠・音楽などはいずれも脳と直結していることです。
脳の全容を解明する動きが活発化し、日常生活にも使えるサービスとして普及すれば、私たち人間の可能性が大きく広がります。
カオスマップでは45の企業とサービスが紹介されていましたが、今後参入する企業は増えるでしょう。
また、日本もアメリカやイスラエルのように国が主体となってプロジェクトを進めるようになるかもしれません。
そうなれば、ブレインテックが私たちの日常にどんどん浸透すると予想されます。
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ブレインテック業界は未経験でも挑戦できる?
ブレインテックは脳とITの融合なので、IT分野に少しでも知見があるのならチャンスです。
ブレインテックは、日本国内においてまだそれほどメジャーな分野とはいえません。
しかし、ブレインテックは将来性が期待できこれからどんどん大きくなる市場であることは間違いないのです。
市場規模が大きくなれば多くの人材を必要としますから、今のうちに行動を起こしましょう。
ブレインテック市場の動向
日本のブレインテック市場動向の特徴としては、やはりヘルスケア分野の遅れです。
言い換えると、今後発展が期待できるという事でもあります。
先述のニューロマーケティングも引き続き発展が予想されており、ブレインテック市場に転職を考える人は注目しておくべきだと言えるでしょう。
内閣府はムーンショット型研究開発目標を設定し研究推進体制を整えています。
「誰もが自由に身体能力や認知能力を拡張し、生活に活用できる技術開発と社会への普及」を目指し、BMIガイドラインの作成やデバイス、脳情報の解読技術の開発を進めているのです。
参考:内閣府『ムーンショット型研究開発制度とは』
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