メンタルヘルステックのカオスマップを紹介!2020年版の特徴や読み取れるニーズは?エージェントが解説
2019年4月1日に働き方改革関連法が施行に続き、2020年のコロナ禍でテレワークやオンライン活用が一気に進むなど、社会人にとってストレスフルな状況が続いています。そうした状況を受けて企業では、社員の心身の健康を把握・サポートする必要に迫られており、求められるサービスも多様化しているようです。そこで今回は、メンタルヘルステックのカオスマップを参考に、2020年版の特徴やニーズについて解説します。
目次
リモートワークの推進によって注目を集めるメンタルヘルステック
労働安全衛生調査によると、メンタルの不調で1カ月以上の休業を余儀なくされた労働者がいた事業所は、平成30年で全体の6.7%に上ります。
加えて2020年に新型コロナウイルス感染が世界中に広がったことを受け、日本のビジネスマンは働き方や生活様式の変化を余儀なくされました。
その結果リモートワークの推進によって組織内のコミュニケーションが複雑化し、精神的に不安定になった人が少なくない現実があります。
対面でのコミュニケーションが難しい状況が続いていることもあり、メンタルヘルステック業界に再び注目が集まっていると考えられます。
2020年版のカオスマップに見られる傾向
メンタルヘルス関連サービスとして「emol」や「emol work」を開発・運営する企業に、emol株式会社があります。
同社が2020年1月14日、国内メンタルヘルスティックカオスマップの2020年版を公開しました。
ここでは、2020年版のカオスマップに見られる、国内メンタルヘルステックの傾向を説明します。
国内企業のニーズは人事部向けの分野に集中
2019年4月以降は、国の方針もあって働き方改革関連法の遵守と健康経営に取り組むことを表明する企業が増えました。
その背景には、個々のメンタル状態が、社員の自社に対する愛着を表す従業員エンゲージメントに大きく影響することがあります。
そのためメンタルヘルステック業界の中でも、人事部を支援するさまざまなHRサービスに参入する企業が増える傾向が強まりました。
組織によるニーズの違いによりサービスは多極化
終身雇用制度が生きていた時代の日本では、ビジネスマンに共通する幸せが明確でした。
順調に昇給・昇格し、結婚して子供を育て、マイホームで暮らすというスタンダードな幸せを、誰もが望んだ時代があったのです。
しかし現代では、雇用形態も働き方も働く場所も多様化しており、組織におけるニーズの違いが顕著です。
また個々が求める幸せの定義もさまざまなので、求められるソリューションが多極化しています。
具体的には、
・従業員のメンタルヘルス分析やケアの支援
・離職リスクやエンゲージメントの可視化
・ストレスチェックを活用した組織運営の改善
などで、どれも健康経営に欠かせない要素です。
2020年に限っては、そこにリモートワークによってコミュニケーションが希薄になる点を補ってほしいという企業ニーズが加わりました。
そのため、求められる仕組みやソリューションも変化しつつあります。
企業がメンタルヘルステックを導入するメリットとは
企業のメンタルヘルスケア対策は、業績の悪化や業務上の事故並びにトラブルなどを回避する、リスクマネジメントとして機能してきました。
そこに健康経営の概念が加わることで、企業がメンタルヘルステックを導入するメリットが増大しています。
ここでは、企業側のメリットが増大した背景を説明します。
コロナを受けて変わるコミュニケーション
日本で緊急事態宣言に伴う不要不急の外出を避ける取り組みがきっかけで、企業のリモートワークが一気に進みました。
その結果、業務で関わる社内スタッフ間のコミュニケーションもメールや電話が主流となっています。
他者が顔色や表情、声色などを通して部下や同僚の心身の体調の変化に気づく機会が激減していることは否めません。
また、上司も部下一人ひとりが置かれている状況を的確に把握するのが難しかったと想像できます。
そうした中で孤独を感じ、メンタルヘルスに不調をきたす労働者がいたことも事実です。
リモートワークの増加に伴う問題点とは
リモートワークが推進されたことで、長時間の通勤から解放された労働者もいたことでしょう。
しかし業務内容や家庭環境によっては、リモートワークにより効率が下がることも珍しくありません。
また、自宅での作業はオンオフがつけにくく、かえって労働時間が長くなることもあります。
業種によっては企業の業績が急激に悪化し、従業員が安心して働ける精神状態を保てないケースも見られました。
そうした問題を看過できないと考える企業が多かったことが、新たなニーズにつながっています。
メンタルヘルステック業界に何が求められているのか
企業がメンタルヘルスに関わるサービスを求めるのは、従業員に気持ちよく働いてもらえる環境を整えることを重視しているからです。
その結果として個々のパフォーマンスが上がることが、企業の利益につながると考えているのです。
それを踏まえて、企業がメンタルヘルステック業界に何を求めているのかを、具体的に考えてみましょう。
厚生労働省が提唱していた4つのケア
厚生労働省は2006年に、「労働者の心の健康の保持増進のための指針」を提唱しました。
その際、以下の4つを職場におけるメンタルヘルス対策としています。
・「セルフケア」
・「ラインによるケア」
・「事業場内産業保健スタッフ等によるケア」
・「事業場外資源によるケア」
そして、4つのケアを継続的かつ計画的に行うように推奨しましたが、日本ではそもそもメンタルヘルスへの関心が高いとはいえません。
そのため、まずは個人の心の動きや感情の言語化をサポートする、カウンセリングサービスが中心の時代が長く続いたという背景がありました。
組織内のメンタリング機能を重視
さらにここ数年はIT技術の導入により、メンタルヘルスにおいても情報のデジタル化や標準化が進んでいます。
中でも注目なのがemol株式会社が運営している「emol work」でリリースされた、「emol team」。
組織内のメンタリング機能をサポートするソリューションです。
従業員が匿名で社内掲示板に悩みを投稿して組織内で共有できたり、人事スタッフや産業医、保健師などに個別相談できる仕組みとなっています。
またこのソリューションには人工知能(AI)が導入されています。
従業員の状態に合わせて定期的に質問することで、個々のメンタルリスクを判定。
そのうえで適切なタイミングにメンターにサポートを要請するので、組織でフォローも可能となりました。
こうした組織内のメンタリング機能を重視するのも、昨今のニーズと考えられます。
今後のメンタルヘルステック市場の展望
超少子高齢化社会の中にある日本は、労働者人口の減少という問題を常に抱えています。
これまでの日本企業はメンタルヘルスに不調をきたした従業員に個別対応してきましたが、健康経営はそれだけでは実現できません。
そうした変化によって、今後のメンタルヘルステック市場はどう変化するのかについて考えてみましょう。
市場が拡大すると明言できる理由
2020年のコロナ禍をきっかけに、多くの企業も事業内容や経営方針の見直しを迫られました。
一部上場企業でも副業容認の動きが広がるなど、会社員を取り巻く環境は今後も大きく変化することが予想されます。
就業日数が減る、雇用形態が変わる、それに伴って年収が下がるなど、会社員が不安を抱えやすい状況は今後も続くことでしょう。
しかし、健康経営を推進するうえで、従業員のストレス要因を排除し、パフォーマンスが上がる環境をつくる必要があります。
さらに、心身が不調な従業員を早期にケアする、予防するといったニーズが高くなり、これまでとは違うサービスが求められると考えられます。
メンタルヘルステック市場は世界に広がる
メンタルヘルステックが求められているのは、日本国内だけではありません。
IoTが進む中で、メンタルヘルスに関するデータに基づき、予防や早期のケアにあたるためのサービスを提供している企業は、世界各国にあります。
インターネットの普及により、的確なソリューションを提供できれば、世界市場で活躍できるチャンスがあります。
実際に世界を見据えて事業を推進しているスタートアップ企業も、少なくないようです。
IT化が仕組みづくりを推進する
かつてはメンタルの不調者に対し、カウンセリングなどで個々の状態を把握して対処するのが主流でした。
しかしAIの導入によって、職場のメンタルヘルスに関わる基準が標準化されつつあります。
データ分析によってケア支援プログラムを提案することが可能です。
IT化が進んだことが、企業のメンタルヘルスケアの仕組みづくりを推進する原動力となったのです。
それが企業に導入され結果が出ることで、メンタルヘルスティック市場に対する期待とニーズは膨らんでいるといえそうです。
メンタルヘルステック業界が求める人材とは
メンタルヘルステック市場は、今後も拡大していることが予想され、広く人材が求められるのは明らかです。
しかし、メンタルヘルステック業界が求めている人材にならなければ、応募しても採用される確率は低いといえます。
ここでは、現在のメンタルヘルステック業界が求めている人材について説明します。
企業に寄り添うコンサルティングセールス
企業に対してメンタルヘルスティックサービスを提案するうえで、コンサルティングセールスが不可欠です。
企業や組織によって、求められるメンタルヘルスティックサービスが異なるので、ニーズの掘り起こしから担当します。
企業の現状を調査・分析し、リレーションを構築しながらサービス内容の提案を行うなど、コンサルタント業務を担う仕事です。
AI開発に欠かせないITエンジニア
メンタルヘルステック企業では、人工知能(AI)を含めた独自の機能やサービスを提供していますが、それを支えているのがITエンジニアです。
企業によって求められるニーズが異なるため、プロダクトの詳細設計から開発・検証・改善に関わる業務を担います。
実装後も変化するニーズに対応するソリューションを提案し続ける必要があるでしょう。
その実現を担うITエンジニアは、常に求められる職種といえそうです。
メンタルヘルステックへの異業種転職は可能か
メンタルヘルステック業界に将来性を感じてはいるものの、異業種転職になるため、応募に二の足を踏んでいる人もいそうです。
しかし、コンサルティングや無形商材の企画営業の職務経験があれば、コンサルティングセールスとして活躍できる素地はあります。
また、ITエンジニアもフロントエンド、バックエンド共に人材不足の傾向があるので、異業種であっても採用されるチャンスは大いにあります。
しかし、単にスキルがあるだけでは、採用されるのは難しいと考えられます。
その理由は、相手のニーズを引き出し、それを実現する方法をゼロから考えることをいとわない姿勢が重視されるからです。
異業種転職の場合は特に、応募企業の理念や事業方針に共感できるのか、社風と自分がマッチングするのかの見極めは必要です。
また、メンタルヘルステック業界にはスタートアップ企業も多く、軌道にのるまでは激務となる可能性も否定できません。
しっかりと企業研究したうえで、応募する必要があるでしょう。
ITでメンタルヘルスを支える仕事を目指そう!
メンタルヘルステックのカオスマップの2020年版から見る、業界の特徴や読み取れるニーズについて解説しました。
また、今後の市場分析や業界で求められる人材についてもお話ししました。
今後のメンタルヘルステック業界では個々のライフスタイルに合わせて、きめ細かく対応できるソリューションが求められます。
標準化や効率化を進めるうえでIT技術は欠かせないものになりました。
人間にしかない寄り添う気持ちを持って、メンタルヘルステック業界に挑戦してみることをおすすめします。
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