リーガルテックとは?ITが法律業務にもたらす変化を解説
リーガルテックとは、法律関連分野におけるITを用いたサービス、技術などを指します。例えば士業従事者の業務効率化システムや、一般人向けのオンライン法律相談サービスです。リーガルテックは私達の生活においても非常に便利かつ重要なうえ、社会貢献性の高い領域です。今回はそんなリーガルテックを具体例とともに紹介していきます。
目次
リーガルテック(LegalTech)とは
リーガルテック(LegalTech)は法律(legal)とテクノロジー(technology)を組み合わせた造語です。士業の業務効率化のためのソフトウェアや、一般人が士業の方々に相談する際のプラットフォームサービスなど、法律の分野におけるIT技術やサービスを指しています。
士業とは弁護士や会計士、社労士といった職業です。
このリーガルテックは一般人にとっても非常に役立つ領域です。
離婚などの夫婦間の問題や借金などのお金の問題、労働条件などの働き方に関する問題など、様々なところで法律に関与する問題が発生します。そのようなときにもリーガルテックが非常に役立ちます。
具体的にどのようなものがあるのか、リーガルテックが注目されている背景と一緒に説明していきます。
リーガルテックが注目される4つの理由
日本でも近年注目が集まっているリーガルテックは2000年代はじめにアメリカで生まれ発展しました。
訴訟大国のアメリカで、弁護士によって行われる作業を自動化したり効率化するテクノロジーの活用に注目が集まったことがはじまりです。
そんなテクノロジーの活用に至った理由を4つの観点からご説明していきます。
法務の精査は人間では限界がある
リーガルテックが注目されるきっかけとなった訴訟大国のアメリカでは、膨大な資料を精査しなければなりませんでした。
個人相手の訴訟なら追いついていた業務も、企業相手となると必要となる業務が多くなるうえにデータ上の書類など人間がすべての証拠の精査を行うにはどうしても限界があります。
そこでテクノロジーを活用し業務の効率化を図ったり、メールなどの電子証拠を精査するという動きになったのです。
働き方改革
日本でも近年リーガルテックが注目されている理由としては、少子高齢化による人手不足が深刻化していることによる「働き方改革」の推進が挙げられるでしょう。
ここ数年で副業やリモートワークなどの多様な働き方を推奨する動きが増えてきました。
また、それだけでなく新型コロナウイルス感染拡大の影響により在宅勤務を取り入れる企業も増え、リーガルテックを導入することでオンライン上での効率の良い業務を求めるようになったのです。
弁護士の飽和
2002年に司法制度の見直しが行われたことから司法試験合格者は急速に増加しており、実は今、都市部を中心に弁護士が飽和状態となっています。
そのため多くの弁護士が就職難になっている状況を打開するために、最先端のリーガルテックを用いて活躍の場を広げようとする動きがあります。
多くの人が活躍できる環境をつくるためにも、弁護士の勤務形態の多様化が必要となりました。
IT技術の進化
リーガルテックが注目され拡大している大きな理由には、このIT技術の進化があるでしょう。
特にクラウド技術が発展したことによって、今まで導入が難しかった中小企業でもローコストで活用できるようになりました。弁護士の飽和で激しい競争の中、最先端技術を用いた動きはさらに広まっていくことでしょう。
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リーガルテックが法務にもたらす3つの変化
では、リーガルテックを導入したことで法務はどのように変わるのでしょうか。
リーガルテックがもたらす効果をご説明していきます。
士業従事者の業務効率化
弁護士や司法書士、税理士といった士業従事者は、人間の手だけでは負えない数の業務を抱えています。
リーガルテックは事務作業から様々な手続きと幅広く活用することができ、そんな士業従事者の業務負担を大幅に軽減します。
業務効率化によってミスも減り、時間短縮もできるうえに業務品質も上がるなど、まさに士業にとって革命ともいえるサービスなのです。
セキュリティの強化
リーガルテックを導入することで、今まで紙媒体で行っていた契約書などをデータ上で保管・管理ができるため、個人情報漏洩防止に繋がりセキュリティの強化が可能になります。
データにすることで紛失する可能性も減り、どんどん増えていく書類の中から必要な書類を簡単に探し出すこともできます。
特に管理が重要となる書類を扱っている士業従事者や企業の法務担当者にとって管理の負担を減らせる嬉しいサービスでしょう。
契約関連トラブル・リスクの回避
契約書を作成した際には、内容に不備がないか専門家にチェックしてもらうリーガルチェックを行う必要があります。
リーガルテックではAIを使ったリーガルチェックも可能になり、リスクの有無・トラブル例の表示・不備の指摘等を自動で行なってくれます。
信頼問題にも関わってくる業務にテクノロジーを活用することで、時間や労力のコスト削減だけでなく事前にトラブルを回避することも可能になるのです。
リーガルテックが取り組む5つのテーマ
リーガルテックによって法務が変わっていき、負担が大きく減ったという事例も多くあります。そして何より、私達消費者が複雑な法律の問題を気軽に相談できる環境ができたという声もあります。
では具体的にはどのようなものがあるのでしょうか。代表的なサービスと共に、リーガルテックが取り組む5つのテーマをご紹介します。
契約関連
リーガルテックが取り組む業務の一つとして、契約関連の仕事があります。文書作成・レビュー・締結・管理といったことを行います。
例えば多くの企業で導入されている「クラウドサイン」というサービスは、紙と印鑑をクラウドに置き換えることで今まで紙で行っていた契約作業をオンラインで完結することができます。
契約書の作成や管理はもちろん締結などもできるため、契約関連業務の負担を大幅に減らしコスト削減やコンプライアンスの強化を目指しています。
法律相談・訴訟・内部調査
法律に関してのトラブルがあった際に多くの場合は弁護士事務所や法律事務所に相談することと思います。
実際に事務所に出向き相談・訴訟・調査となると、決して安くはない費用がかかり時間もとられてしまいます。
そこでリーガルテックはオンラインで簡単に相談できることで、消費者が今までより気軽に相談できる環境を提供し多くの悩み解決に導くのです。
「弁護士ドットコム」は、オンラインで弁護士に無料で法律相談できる『みんなの法律相談』や、自身が抱えている悩み・地域などから適した弁護士を探せる『弁護士検索』といったサービスを提供しています。
また、集団訴訟に特化した弁護士とのマッチングサービス「enjin」では少額の被害額などで泣き寝入り被害となってしまった方に向けて、被害者全員で証拠や訴訟依頼に必要な事前費用をシェアできる救世主のような存在です。
知的財産・商標調査
事業を行うにあたって重要な働きをする知的財産権。特許や商標などの権利を確保することで信頼性の高い企業であることも提示できるでしょう。
サービスとしてAIが自動で特許調査を行い特許性を評価してくれるWebアプリケーションの「AI Samurai」や、商標の知識がなくてもオンラインで簡単に商標調査・商標登録ができる「Toreru」などがあります。
これまで難しく面倒だった手続きが誰でも簡単にできるようになり、産業の発展推進のサポートをしています。
弁護士業効率化
弁護士業には上記で説明してきたように法律トラブルの相談や訴訟だけでなく、事件管理や契約書の作成・管理と多くの業務を抱えています。
そんな弁護士業をシステムで管理して効率化をサポートすることも、リーガルテックの取り組みの一つです。
「LEALA」というサービスでは複数のシステムに登録していた様々な情報を一元化したり、定型業務を自動化することが出来ます。
システムで効率よく管理することで、業務負担の軽減だけでなく漏れの防止や分析まで行うことが可能になるのです。
リーガルリサーチ
リーガルリサーチとは、弁護士や企業の法務担当者が法的トラブルについて解決に必要な関連法令、判例、法律文書などの法的情報を収集することです。
以前は書籍を購入したり論文詩を探したりと色々なフォーマットから情報を集めていましたが、インターネットの普及とともにデジタル上での効率の良い情報収集が可能になりました。
「LEGAL LIBRARY」は法律書籍や官公庁の資料を20万ページ以上にわたってデータベース化したリーガルリサーチシステムです。
複数キーワードによる絞り込み検索や横断検索が可能にし、従来のアナログ的な方法よりも費用や無駄な時間を大幅に抑えることが目的です。
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まとめ
今回はリーガルテックとはどういうものなのか、実際にあるサービスを例に解説しました。
リーガルテックによって法律がもっと身近になり、士業従事者だけでなく私たち消費者の悩みを一つでも多く解決できる可能性が広がりました。
伝統的で保守的な分野だからこそ、ITがもたらす恩恵というのはかなり大きいです。今後もさらにリーガルテックが普及され、人々の暮らしが大いに変わることが楽しみですね。
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