AIが人間を超える?シンギュラリティや2045年問題の意味や定義、事例を徹底解説
AIが人間を超えるとどうなるか、そもそも超える可能性があるのか気になる方は多いでしょう。今回は2045年に到達すると言われているシンギュラリティの意味や定義を基に、AIが人間を超える可能性があるのかどうかについてIT転職のプロ目線で解説します。
目次
シンギュラリティとはどんな意味?
シンギュラリティ(Singularity)とは、正確にはTechnological Singularityという名称で、日本語では「技術的特異点」と呼ばれています。
シンギュラリティの意味は、一般的に「人工知能(AI)」が人間の知能を超える転換点と解釈されています。その時点を境に予測がつかない大きな革命をもたらすと論じられているのです。
シンギュラリティの概念は、アメリカ合衆国の未来学者であり、人工知能研究の世界的権威でもあるレイ・カーツワイル博士によって提唱されました。
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2045年問題とは?
レイ・カーツワイル博士の著書による「The Singularity is Near」(邦題:ポスト・ヒューマン誕生)の中で、「2045年にシンギュラリティに到達する」と記述されているのです。これを世間では「2045年問題 」と呼んでいます。
人工知能(AI)という言葉が初めて誕生したのは、1956年にアメリカ合衆国で開催されたダートマス会議でした。
その後、進化を遂げて現代に至るのですが、シンギュラリティがいつ論じられたのか、これまでのAIの歴史にも触れながら見てみましょう。
AIブームの歴史とシンギュラリティの概念の誕生
AIの最初のブーム(第一次AIブーム)は1960年代。この時代は「推論」や「探索」と呼ばれる技術が中心でした。
その後、1980年代の第二次ブーム「エキスパート」の時代、冬の時代を経て、2000年代は第三次ブームとなり、2006年のディープラーニングの登場でAIがブレイクしたのです。
ちなみに、レイ・カーツワイル博士が「2045年までにはシンギュラリティ(技術的特異点)に到達する 」と提唱したのは2005年です。
2045年問題の根拠となっているのは「ムーアの法則」と「収穫加速の法則」の理論からでした。
ムーアの法則とは
ムーアの法則とは、インテル創業者のひとりであるゴードン・ムーアが1965年に提唱した半導体技術の進化を予測した経験則です。
「半導体の集積率は18ヶ月ごとに2倍になる」と論文で唱えたのです。
この意味は、簡単に言うと半導体の最小単位である「トランジスタ」を、同じ面積で18ヶ月ごとに2倍作ることができるということです。ムーアの法則では、さらに18ヶ月で半導体のコストも半分になるとされています。
今日のIT業界は、まさに「ムーアの法則」が核となり、研究と生産を継続してきた業績といえるでしょう。
現在は、3次元化の技術開発の進化で新世代のプロセスに変わり、AR(拡張現実)VR(仮想現実)AI(人工知能)などのアプリケーションが実現しているのです。
収穫加速の法則とは
収穫加速の法則とは、技術的な進歩が一度起きると、次の進歩までの期間は短縮され、イノベーションは一気に加速するという概念です。
カーツワイル博士は、この法則からシンギュラリティは2045年に来るという論述を導き出したのです。
将来、人間以上の知能をもった「強いAI」が登場し、革命的な変化が起こると言われています。
強いAIと弱いAI
強いAIとは、「人間のような感情と意識を持ち、総合的な判断や作業ができるAI」のことです。
将来的にAIは、人間がプログラムした機能以上のことができ、想定外のことに対応できるときが来ると予測されています。
現在、日常生活に導入されているAIの機能は、あくまでも一部の領域のみの処理に特化した特化型の弱いAIであり、凡用型の強いAIはまだ実現していないのです。
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シンギュラリティは来る派・来ない派の主張
シンギュラリティは本当に来るのか来ないのか、未来のことは誰にもわかりません。専門家の意見も「来る派」と「来ない派」に分かれています。
シンギュラリティは来る派
シンギュラリティが将来的に来ると言っている専門家やIT起業家の代表的な例は、イギリスの物理学者、スティーブン・ホーキング氏やマイクロソフト創業者のビル・ゲイツ氏です。
ホーキング博士は、BBC放送のインタビューで「完全な人工知能を開発できたら、それは人類の終焉を意味するかもしれない。これまでにないスピードで能力を上げるAIに対して、進化速度が遅い人間には勝ち目がない」と述べています。
ビル・ゲイツは、「コンピューターが人間のように文章を読んで理解できるときが来たら、予測不可能な事態になる。その日は、今生きている世代に来る」という意見です。
テスラ社やスペースX社の共同設立者およびCEO(最高経営責任者)であるイーロン・マスク氏は、「AIが独裁者となり、最終的には人間を滅ぼしてしまう可能性がある」とまで言っているのです。
シンギュラリティは来ない派
一方で、シンギュラリティが来ない派の意見を述べている専門家もいます。
例えば、人工知能研究の権威であるジェリー・カプラン教授は、否定派の一人です。「人工知能は人間ではないから人間と同じように思考はできない」と述べているのです。
さらにジェリー教授は、AIに対して危機感を感じるのは映画やドラマ作品の影響や根拠のないメディア報道、AI研究者たちの過激なアピールが原因であると指摘しています。
AIはあくまでも明るい未来のための技術であって、脅えるのではなく、活用方法を考えるべきであるという主張です。
ドイツの哲学者、マルクス・ガブリエル氏も否定派の一人で、「『知性』は人間の非生物的、感覚的な部分であることから、人工知能は異なる」と論じています。
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AIが人間を超える定義とは?
ちなみに、「AIが人間を超える」とはどんな定義で何を基準としているかご存じでしょうか。「人間を超える」という表現は、あまりにも曖昧です。
誤解されていることが多い「シンギュラリティ」の定義について具体的に解説します。
シンギュラリティの定義の誤解
実は、レイ・カーツワイル博士は「AIが人間の知能を超える」とは言っていないという説があります。シンギュラリティの定義そのものが一般的に誤解されているのです。
例えば、Wikipediaで「技術的特異点」を調べてみると、以下のように書かれています。
レイ・カーツワイル氏は、技術的特異点を人工知能の能力が人間の能力を超える時点としては定義しておらず、$1,000で手に入るコンピュータの性能が全人類の脳の計算性能を上回る時点として定義しているのみである
あくまでも、日本円で約10万円位のコンピューターの性能が全人類の脳の「計算性能」を上回る時点としているだけで、全てを認知して、意思を持って人間と同じように判断できる機能が上回るとはされていません。
注目すべきことは、カーツワイル博士は、正しくは「2029年に汎用型AIが誕生する」と言っていることです。2045年ではないのです。
ただし、2029年も決して遠い未来ではありません。
ある説では、シンギュラリティとは「AIが自己増殖を始める時点」ともされており、その場合は、人間がプログラムを組み込むのではなく、AIが自ら進化していくということです。
そうなると「人間を超える」という表現は適切ではないとも言えます。
多角的な角度から見ると、シンギュラリティはいまだに明確な定義は不明だといえるかもしれません。しかしながら、AIの開発においてAI判定テストはもちろん存在しています。
AIを判定する「チューリングテスト」の基準
AIが人間的に行動するか判定するためのテストは「チューリングテスト」と呼ばれています。
Artificial intelligence(人工知能)の名付け親でもある数学者のアラン・チューリング氏が開発したため「チューリング」という呼称となりました。人工知能研究の分野で1950年代から現在に至るまで使われています。
チューリングテストの判定は「コンピューターが人間と会話を成立できるか」が基準とされていました。
テストの審査員がプログラムと人間の両者と会話をして、その相手が人間かプログラムか判別できなければ、そのプログラムは「人間並みの知能を持っている」とみなされて合格とされていたのです
チューリングは、全ての認知に対応できる「知能」の定義を提唱したものではありません。
あくまでも、チューリングテストに合格するプログラムや機械を開発することを目標としているものです。
深く掘り下げると、シンギュラリティの定義は、「知能とは何か?」について明確な定義がないと定義付けは困難ということです。
しかし、そもそも「知能」についての定義が明確ではありません。
つまり、「シンギュラリティ=人間の知能を超える時点」とするのは、かなり曖昧な定義であるということです。
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AIロボットが人間を超えた事例
シンギュラリティが本当に起こるかは、誰にもわかりません。
しかし、既に人間を超えたとされるAIロボットは存在しているという事実もあります。2つの事例をご紹介します。
IBM開発のワトソンと人間のクイズ対決
米IBMが開発したWatson(ワトソン)と人間のクイズ対決はご存じでしょうか。
Watsonは、自然言語処理がプログラムされ、大量のデータベースから知識を獲得できる機能を持つAIです。
そのAIであるWatsonが、2011年アメリカの人気クイズ番組「ジョパディ!」、人間のクイズ王に勝利したのです。
AIが賞金を獲得したということで話題になったことがあります。
囲碁のプロ棋士がAIと対戦して負けた
オセロやチェス、将棋などのボードゲームではAIが人間を負かした例がいくつかあることで注目されていましたが、複雑な囲碁ではAIが勝つのは難しいと言われて来ました。
ところが2010年、Google Deep Mindが開発したアルファ碁が囲碁のプロ棋士相手に勝ったのです。これはコンピューター史上初の出来事でした。
その後、2017年に中国の囲碁棋士である柯潔とAIが対戦した際もAIが勝利して脚光を浴びました。
AI判定の「チューリングテスト」は、あくまでも「人間が判定するもの」です。
つまり、その観点では将棋や囲碁で人間に勝ったことはAI判定合格とされるのです。
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2045年問題の影響とは?
人間の仕事がAIに代替される
AIは、規則性のある作業において人間よりも正しく正確に、かつ高速で行うことができます。
そのためパソコンを使った仕事のうち規則性がある作業はAI代替され、人間の仕事がなくなってしまうのではないかと危惧されて来ました。
私たちの身近には、お掃除ロボットや非接触検温、Google翻訳、自動運転といった人工知能を活用したサービスがすでに浸透しつつあります。
人工知能が人間の脳を上回ったとしたら、人間が行って来た仕事のうちAIに代替されるものがさらに増えるのではないかという懸念が2045年問題の最も大きな影響といわれています。
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高度な技術が当たり前の成果になる
これまで映画やゲームで目にして来たような、近未来的な技術を活用した生活が当たり前になるかもしれません。
すべての家事は音声認識システムを搭載したロボットが行い、移動するために自らの労力を使う必要がなく、また過去と未来を自由に行き来できるタイムマシンが存在するような生活です。
技術の向上に伴い、人間はだんだんとそれが当たり前になっていくでしょう。
労働も人工知能が代替することで、人間が収入を得ることで生活できる、そのために労働するといった金銭に関する概念そのものが変わり、社会の仕組みや価値観が大きく変化する可能性もあります。
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2045年問題の対策とは?
人間の能力向上
人工知能はそもそも人間が生み出した技術です。
私たち自身が人間の能力を高めることによって人工知能を管理できていれば、支配されることもないのです。
人間が生み出したものである以上、メンテナンスやアップデートも人間が行います。
ひとりひとりが人間としての能力向上に努めることで、必要以上に人工知能の向上を恐れる必要もなくなるでしょう。
AIに怯えるのではなく共存を目指す
人間の暮らしがより豊かになるよう生み出されたのがAIです。
仮に人工知能の頭脳が人間の能力を上回ることが起こったとしても、人間と人工知能が双方でより良い関係性を築くことができるようコントロールすることが求められます。
お互いがお互いの不得意を補い、向上していくことができればAIに怯えることもありません。
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AIやシンギュラリティに興味があるならプロに相談しよう
AIが本当に人間を超越した存在になるのかどうか、それはまだ誰にも分かりません。
現在のAIテスト判定を参考にすれば、AIが人間を超えるときが来るという話の信憑性は高いと感じるでしょう。
最新技術を駆使しAIとより良い関係を築くことを手助けできる技術者は、今後さらに市場価値を高めると予想されます。
IT・Web・ゲーム業界の転職に強い転職エージェントのGeekly(ギークリー)では、AI・人工知能に関わる職種や企業の情報を多数保有しています。
AIに関連する仕事に興味がある方は、ぜひ一度お気軽にご相談ください。
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