高齢化社会を救うエイジテックとは?事例や注目される背景を解説します
海外でも注目されている「エイジテック」をご存知でしょうか。エイジテックとはテクノロジーを用いた高齢者の方々向けのサービスのことです。今回はエイジテックが注目される社会背景や具体的な導入事例を解説します。ITの技術を用いて高齢化社会の課題解決へ貢献したいという方は、キャリアの選択肢として検討してみてはいかがでしょうか。
目次
エイジテック(AgeTech)とは
エイジテック(AgeTech)とは主に高齢者(Aged person)とテクノロジー(Technology)を組み合わせた造語です。
高齢者の方々を対象に、生活や健康をサポートするためのテクノロジーやITサービス、概念の総称です。
高齢化社会は日本はもちろんのこと、海外の先進国でも問題視されています。そんななかで、近年急速に注目されているのがエイジテックなのです。
海外でも注目!エイジテックが期待される背景
高齢者向けのサービスとテクノロジーを合わせたエイジテックは海外でもニーズが高まり開発が進められています。
それでは、なぜ海外でエイジテックが注目されているのでしょうか。
海外でも高齢化が進んでいる
先にも述べた通り、海外でも高齢化は深刻な問題となっています。
全人口のうち、65歳以上の方々が占める割合が21%を超えた状態を指す「超高齢化社会」に、日本、イタリア、ドイツが該当しています。
そして米国、カナダ、イギリス、フランス、スウェーデンといった欧米諸国もすでに高齢者人口が14%を超える高齢化社会であり、2030年には「超高齢化社会」になると言われています。
このように世界で高齢化が課題となっているいま、テクノロジーを用いた高齢者向けサービスが注目されているのです。
ヘルスケアにかかるコストの増加
高齢者の人口が増えるとそれだけヘルスケアにかかるコストが増加することになります。
介護というものは1回限りのサービスではなく長期的なサポートが必要になるからです。
つまり今後高齢化が進むほどコストも考えていかなければならなくなります。
そういったものをIT技術を使ってうまく管理できないかということでエイジテックへの期待が高まっているのです。
介護従事者の減少
高齢化が進むということは介護を必要とする高齢者が増える可能性が高いといえます。
しかし、人口に対して高齢者の割合が増えているのですから、当然介護を担う人材が少なくなっていきます。
高齢者1人に対して7人で介護していたのが、3人になると1人当たりの負担が大きくなります。
これは日本だけでなく、すでに米国でも課題とされている問題なのです。
介護をする人が減れば、介護者も高齢者も精神的・身体的負担が増してしまいます。
そういった負担軽減のためにもエイジテックが求められています。
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エイジテックの利用が医療・介護現場で増えている?
これまで医療や介護の現場では人間対人間の関わりが求められてきました。
高齢者向けのサービスにテクノロジーを結びつけるというよりも、どうにかして介護者の手で提供してきたのが現状です。
また、医療面では医師の診察は対面が当たり前で、診察を受けたければ病院へ行く必要がありました。
しかしこういった概念では今後高齢者サービスを継続していくことが困難になるリスクがあります。
また、遠隔地で暮らす高齢者が移動手段がなく受診できないこともあるでしょう。
そういった高齢者は必要なその理由は医療・介護の担い手の減少や負担の増加です。
医療が受けられず健康管理ができなくなってしまう事態になりかねません。
そのため海外でも日本でもエイジテックが導入され、医療・介護の現場でも利用が拡大しているのです。
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エイジテックのカオスマップ 5分野を紹介
家族介護
家族介護は高齢者の周囲にいる人たちが利用するエイジテックです。
老人ホームの検索サイトや、親の自分史を作成するサービス、介護に関する疑問や不安を解消するためのQ&Aコミュニティサービスなどが該当します。
「はじめての介護でどうしたら良いか分からない」といった家族の悩みは今後も増加するため、家族介護の負担や知識不足を軽減するサービスが生まれています。
コミュニティ形成
コミュニティ形成は高齢者の活躍推進や地域を巻き込んだ介護体制の整備、高齢者介護に関する情報の発発信等をおこなうサービスです。
例えば、一般社団法人「注文をまちがえる料理店」が運営する「注文を間違える料理店」は、認知症の方々の活躍推進と認知症への理解の促進を目的として、認知症の高齢者の方々がレストランやカフェでホールスタッフとして働くイベントです。
社会にもたらす影響やプロジェクトのデザイン等が評価され、国内外で多くの賞を受賞する取り組みとなっています。
高齢者向けサービス
高齢者自身が利用するサービスについては最も想像しやすいものといえるでしょう。
ロボットによる高齢者のコミュニケーション促進・孤独防止や、相続・葬儀を取り扱う終活サービス、移動手段の乗り合いサービスなどが該当します。
その他にも、ウェアラブルデバイスや排せつ管理アプリなど多くのプロダクトが生まれています。
高齢者向け医療
高齢者向け医療の分野においては、訪問看護の記録管理や請求処理をおこなうためのソフトウェア、オンライン薬局、認知症予防プログラムの提供、リハビリ専門職の方向けの情報共有サイト等のサービスが該当します。
高齢者の増加により医療負担の増大も懸念されるなか、医療従事者の業務効率を高めるためのIT導入に注目が集まっています。
介護
介護分野では、介護事業者の業務管理システムや介護用品のデリバリーサービス、ウェアラブルデバイスを用いたリハビリ効果の測定、遠隔での高齢者見守りセンサーといったサービスが展開されています。
医療と同様に、高齢者の増加によって介護事業者や家族の負担も増大するなか、ITを用いることでデータによる健康管理や高齢者の一人暮らしの安全性を高める取り組みが注目されています。
参考:Shotaro Asano「『介護/Aging 』のカオスマップを作ってみた」
エイジテックの導入事例3選
見守りセンサーによる介護職員の負担軽減
介護施設に入所している高齢者は転倒のリスクがあったり健康に不安を抱えているなど見守りが必要な状態が多いです。
職員は高齢者の安全を守るために見守りをしていますが、その負担は大きいといえるでしょう。
そんな介護施設での職員の負担を減らし高齢者の安全を守ることができるエイジテックの導入事例をご紹介します。
夜勤は1人で受けもつ高齢者の人数が多い
入所型の介護施設では、日勤だけでなく夜勤という勤務形態があります。
夜勤は高齢者が寝ている時間帯なので人員配置は日勤よりも少なくなります。
しかし高齢者は夜間でも排泄のために起きたり、認知症の人は徘徊することもあるので見守りが必要です。
コール対応だけでなく定期的な巡視をしますが、それでも突発的な事態に備えなければという緊張感があります。
人手が少ない中での介護なので1人当たりの負担が大きくなってしまうのです。
センサーを設置することで見守りが可能に
ある全個室の施設で見守りセンサーが導入されました。
各部屋に高齢者の動きや体温などを感知するセンサーが設置され、それが職員用のパソコンで閲覧が可能になるというものです。
これによって高齢者がベッドで休んでいるのか、起きて部屋の中で動いているのかがパソコン上で確認できるようになったのです。
また体温や脈拍を感知できるタイプのセンサーは夜間の体調不良に気づくきっかけになります。
高齢者サービスにテクノロジーを活用することで介護者の負担軽減だけでなく高齢者の安全を守ることもできるのです。
高齢者の排泄予測
医療・介護の現場では排泄介助も仕事の1つです。
介護者がトイレに連れていき介助することもあれば、失禁したオムツを交換することもあります。
しかし、排泄のタイミングはなかなか外からはわかりにいもので介護者にとっても悩ましいところなのです。
そんな高齢者の排泄に関するエイジテックの導入事例を見てみましょう。
排泄は高齢者本人も介護者も負担が大きい
高齢になると自分で排泄の感覚がつかめず失禁することもあります。
オムツを使用している場合はオムツ交換が介護職員の仕事になります。
しかし、「オムツを交換してほしい」と言えない高齢者はしばらくそのままになることもあるのです。
そうなると気持ち悪さからオムツの中に手を入れたり、自分でオムツを外してしまうことも。
そんな時は本人も精神的に辛い思いをしますし、職員にとっても負担になってしまうのです。
排泄を予測することで早めの対応が可能に
高齢者の排泄のタイミングがわかれば早めにトイレに連れて行ったりオムツ交換ができる可能性があります。
実際に、排泄をサポートするエイジテックシステムがあります。
それは、尿意を感じる程度に尿がたまるとアラームなどで教えてくれるシステムです。
尿がたまるあたりのお腹の部分にセンサーをあてておくことで、尿が溜まっていることを感知できるようになっています。
これによってトイレで排泄したい高齢者をトイレに誘導することができ失禁の回数を減らすことができます。
またオムツの中に排泄する場合も、すぐにオムツ交換ができるので高齢者の不快感の軽減につながります。
ロボットを利用したコミュニケーション
年を取るにつれて周囲の人とコミュニケーションをとる機会が減ることも少なくありません。
そして、そういったことが社会から孤立したような孤独感につながることがあります。
そんな高齢者にコミュニケーションの機会を提供してくれるエイジテックの1つにAIロボットがあります。
人とのコミュニケーションが薄れがちな高齢者
仕事をしているうちは会社の関係者とのコミュニケーションの機会があります。
しかし定年退職後は次第に関係が薄れ、友人や近所の人と関わることが減ってしまいがちに。
家族が一緒に住んでいれば会話をする機会がありますが、1人暮らしではなかなかそうはいきません。
また近年利用者が増えているテレビ電話も、相手の都合を確認してからになるので頻繁にはできないでしょう。
コミュニケーションの機会が減ると会話をしなくなるので日々の生活に刺激がなくなってしまうこともあります。
そうなると認知症が進み介護が必要な状態になる人もいます。
ロボットで会話を楽しめるように
コミュニケーションの機会が減ってしまいがちな状況を変えるためにロボットを導入する事例があります。
高齢者の話し相手にロボットやぬいぐるみ型のロボットを利用するのです。
ロボットに話しかけると返事をしてくれたり、話しかけてくれるものもありコミュニケーションをとっている感覚になります。
これは災害時の高齢者の精神的サポートにも用いられ、孤独感を軽減させるのに役立ちます。
医療現場や介護施設などでも少しずつ導入が増えているロボットとのコミュニケーションに期待が高まっています。
エイジテックの今後の課題
これまでにない高齢者サービスの提供ができる可能性のあるエイジテックですが課題もあります。
今後発展していくためには課題をクリアしていく必要があるのでしょう。
導入コストがかかる
エイジテックの導入にはコストがかかるのが課題の1つです。
導入事例でご紹介したようなエイジテックは、導入できればその効果を実感することができるでしょう。
しかし導入に際してかかるコストを考えて断念する医療・介護施設も多いのが現実なのです。
企業がいかにしてコストを抑えながらサービスを提供できるかが注目されます。
エイジテックを上手く利用できるか
エイジテックは高齢者や介護者など利用する側の方が使いこなせるかということも課題といえます。
例えば遠隔医療では高齢者がパソコンにインターネットをつなげるところから始まります。
またどうやって医師と連絡をとるのか、必要な情報はどうやって共有されるのかということも知っておく必要があるでしょう。
そして介護施設でエイジテックを利用する時には介護職員の理解が必要です。
使い方はもちろんのことテクノロジーを用いて得た情報をどのように使うかがポイントです。
先ほど導入事例でご紹介した排泄センサーも、情報を理解できなけば上手く利用できません。
エイジテックは高齢者向けのサービスに利用するので、高齢者をはじめ多くの人が理解できるものでなければならないのです。
提供するエイジテックの使い方や説明をどうしていくのかも企業の課題となるでしょう。
まとめ
今回はエイジテックについて、注目されている社会背景や具体的な事例をご紹介しました。
高齢化社会は日本だけでなく海外でも課題となっています。そのため、エイジテックは世界的に注目されている領域なのです。
テクノロジーを用いて高齢化社会を支えることに興味があるという方は、まずはエイジテックの情報収集から始めてみてはいかがでしょうか。
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