AIを活用したSaaSとは?有名企業5社の取り組みについて解説
UiPathやBluePrismに代表されるRPAツールの導入割合は、国内の大企業では51%に達しています(MM総研調べ、2019年11月)。本記事ではAI×RPAツールをSaaS型で提供している注目企業や、転職のおすすめポイントをご紹介します。
目次
AI×RPAはなぜ注目されているか
AI×RPAの導入はどの程度進んでいるか
RPA(Robotic Process Automation=ロボットによる業務自動化)は、定型業務の自動化システムです。
RPAツールは基本的には、人間がルールを設定し、それに乗っ取り指示通りに、人間の操作と同じように作業を遂行してくれます。
MM総研の調査によると、国内企業のうち、年商1,000億円以上大手企業を対象に調査したRPA導入率は2019年11月時点で51%にも達しています。
また、同調査において、RPA導入企業のうちAI導入企業は77%にまでのぼり、AI×RPAの導入が急速に進んでいます。
なぜ今必要とされているか
日本社会は今、少子高齢化による労働人口減少、それによる人手不足に直面しています。
厚生労働省の試算では、2020年現在6,404万人いる労働人口が、2065年には3,946万人となり、現状の3割まで落ち込みます。
社会活動を維持するためには、子育て中の女性や高齢者など現在は働いていない層に働きかける必要があります。
労働参加率を高める動きと、労働者の生産性を高める動きの二軸が必須です。
労働参加率を高めるための動きとして働き方改革が掲げられています。
生産性を高める動きの一つとして注目されているのが、業務の自動化、つまりはAI×RPAツールです。
つまり、AI×RPAツールは私たち一人一人の目の前の業務の簡易化や各企業にとって効率化のメリットがあるだけではありません。
極めて社会から求められる事業であり、発展が強く期待されている分野です。
AI×RPAで何ができるか
RPAツールは人間が設定したルール通りに忠実に働く「実行」を担います。
AIは与えたデータに基づいた機会学習により、状況に合わせて主体的に「判断」を行い、RPAツールに指示を出すことができます。
つまり、RPAだけだと「AがでたからB」としかできなかったものが、AIを組み合わせることで以下の通りとなります。
「Ⅰの状態でAがでたらBという設定がされているが、Ⅱの状況でAがでたからCをしよう」
とAIの学習によって事前に設定がなかった事象についても判断をして指示を出し、RPAツールで実行することができます。
AI・RPAを活用したSaaS型の企業を紹介
それでは早速、AI/RPAを活用したSaaS型のサービスを提供している企業をご紹介します。
ベルフェイス株式会社
オンライン商談のベルフェイスのサービスを提供し、2,000社での導入実績があります。
「これからはデスクで営業する時代!」というCMも印象的ですよね。
従来のテレビ通話サービスとは異なり、商談相手はブラウザ検索だけで商談の画面に接続でき、音声は電話でつなぐというサービス特徴があります。
特に、レコログという機能では、音声認識による自動議事録作成+特定の営業ワードをどこで話しているかの見える化ができます。
この点で、RPAとAIの技術を活用しています。
営業マン個人のノウハウを他へ広めたり、上司が担当営業マンの指導に役立たせることができます。
株式会社BEDORE
文字と音声による対話エンジンサービスを提供しています。
自動音声応答システムなど、話し言葉を理解・学習し、目的にあった必要な情報を返信,応答できるサービスを提供しています。
LINEのチャットボットでも利用されています。
株式会社ABEJA
現場のオペレーションの自動化システムを提供しています。
例えば小売業の仕分け業務の場合、商品の画像を認識して自動でカテゴリーやタグづけを実行するシステムとなります。
特徴としては、AI学習と自動化システムのプラットフォームの提供となります。
導入企業の担当者がシステム上でモデルデータの登録・学習等を行えば、各企業に適したシステムを構築できるサービスとなっている点です。
株式会社RevComm
MiiTel(ミーテル)という電話営業特化の音声解析AI機能つきの高機能クラウドIP電話サービスを提供しています。
商談音声の解析をして、内容の文字起こしをして自他があとから学習・指導しやすくするだけではありません。
AIがトーク内容を分析・採点した結果を見てリアルタイムに自己学習する機能がついています。
例えば、商談で話す時と聞く時の時間比率を割り出してくれます。
そのためチーム内で業績の挙げている営業がどの割合で受注しているかを割り出し、他のメンバーに真似させることもできます。
この、音声を文字起こしする部分と、分析・採点をする部分でRPA×AIの技術を採用しています。
株式会社シナモン
AIを活用したサービスに特化していて、主にはFLAX SCANNER、Rossa Voice、Aurora Clipperの3つのサービスを提供しています。
FLAX SCANNERでは、帳票類の読み取りサービスで、レイアウトが異なる帳票でも特徴を設定し学習させられます。
自動読み取りができるようにしています。
帳票類は会社によりフォーマットが異なっているのが常識です。
今までは注文が発生したら手作業での発注書の作成が発生していたものが、FLAX SCANNERでの読み取りによって作成作業を短縮することもできます。
Rossa Voiceは音声認識+言語処理のサービスで、会社ごとに個別に社内用語等を学習させられます。
例えば議事録の録音・リアルタイムの文字起こし・ToDOリストの自動抽出までが可能となります。
Aurora Clipperは文章の読み取り・抽出サービスで、契約書等の各種書類からツールによって必要な箇所を探し出すことができます。
今までは手作業・目視・担当者の判断軸で探す方法しかなかったものが、個別の用語や判断軸・ノウハウを学習させ抽出することができます。
AIは業務をどう変えるか
RPAは人間が設定したルールに従い作業を実行するシステムですが、自分で判断をした上で作業を実行する、より人間に近いシステムに進化します。
この進化は以下3クラスに分けられます。
クラス1:RPA(Robotic Process Automation)
定型作業を自動化できます。
具体的にはダウンロード作業・情報の取得作業・検証作業・入力作業などの単純な業務が実行可能になります。
1つのエクセルから別のエクセルに数字を入力する作業などはこれに当たります。
クラス2:EPA(Enhanced Process Automation)
AIが加わることで、一部の非定型作業を自動化できます。
具体的には、言語の解析・音声の解析や文字起こしなどが行えるようになります。
商談音声を文字起こしする作業などはこれに当たり、上で紹介したようなAI×RPAを活用したSaaS型企業も、このクラス2の状態です。
クラス3:CA(Congnitive Automation)
AIを加えた上で機械学習を進め、より人間に近い判断力で、かつ人間よりハイスピードで業務を実行します。
具体的にはプロセスの分析、改善提案、意思決定までを自動化します。
営業KPIを抽出し、問題になっているプロセスを分析、改善すべき点を発見、どのような改善をするか決定、までをできるイメージです。
現状はここまでのサービスは発現していませんが、近い将来、このクラス3レベル活躍が期待されています。
︎AI×RPA導入のメリット
AI×RPAが有用であることはご理解いただけたと思いますが、実際に導入した結果、具体的にどのようなメリットがあるでしょうか。
直接・間接的には様々なメリットが期待されますが、今回は特筆すべき3点に絞りご説明します。
人件費の節約と、付加価値の高い業務への集中
データ入力やデータ抽出などの単純作業はAI×RPAツールにまかせ工数削減し、他の付加価値の高い業務に集中することができます。
電話商談の文字起こし業務をツールに任せれば、上司が営業マンに張り付きトーク内容の改善を指示するような時間は減らせます。
上司は営業戦略の立案に時間をあてることができます。
24時間連続稼働
人間は1日8時間以上働くとくたびれてしまいますが、ロボットの場合は24時間365日作業を実行できます。
労基署に駆け込んだりもしません。
そのため、人員不足によりデータのレポート作成が終わっていないから会議ができない、などの事態はなくなります。
人的ミスの防止
人間に単純作業を任せると、担当者のその日の体調や気分の変化による集中力の低下から、どうしてもミスが発生します。
データ抽出の見逃しや、入力箇所のミスなどが発生し得ますが最初の設定が間違っていたりバグが発生しない限り、ミスはあり得ません。
AI×RPA導入のデメリット
一方で、もちろんデメリットもあります。
導入コスト
導入コストは当然、デメリットの一つになります。
特に、個社ごとのサーバー開発型のシステムの場合、導入費用は月額数十万〜数百万単位となります。
現状、大手企業からRPAの導入が進んでいるのもこの理由からです。
一方で、上記でご紹介したようなSaaS型サービス提供企業では、低単価での提供が可能です。
だからこそ中小企業含めた多くの企業に利用チャンスがあり、成長可能性は無限大といえます。
業務改善の停滞
人間が単純作業を行なった場合「今の状態で本当に役立つ方法なのか」など考えますが、ロボットの場合は考えません。
非常にスピーディに連続して作業を行うため、ほとんどの場合は繰り返し同じ作業を任せるでしょうし、そもそも繰り返させる前提で設定をします。
一定期間で作業が実態に適しているか確認をしなければ、非効率な作業を繰り返してしまうリスクがあります。
バグ発生時の業務停止のリスク
システムにも不具合が起きてしまう場合があります。
人間の手作業で即座に代替できるのであれば問題ありません。
代替の技術や知識を持っている作業者をおいていない場合、大幅な業務停止を余儀なくされる場合があります。
作業の停滞による影響範囲が大きい場合はリスクヘッジが必要です。
転職おすすめポイント
冒頭でもお伝えした通り、AI×RPAツールのSaaS型サービス提供企業への今のタイミングの転職は、メリットが大きいです。
転職のおすすめポイント、理由は大きく分けると以下の2つです。
今後、必須になるRPAの知識や業務経験を得られる
RPAツールは現状、国内では大手企業で先駆けて導入されていますが、今後スタンダードになっていく可能性が高いです。
一方で、導入されている企業は国内で多いとはいえず、すなわちRPA人材は希少です。
その中で、RPAの知識があること・活用経験があることは、今後あなたが転職する上で、優位になる要素です。
将来性の高いベンチャー
創業した会社は10年で9割以上が潰れます。
自由度が高く裁量権が広いベンチャー企業で働きたい人は多いですが、その会社が10年もつ可能性は極めて低いです。
ベンチャー企業で働くとはいえ、今にも潰れそうな会社で働きたい人は少ないと思います。
だからこそ、ベンチャー企業への転職を考える際には会社の安定性や成長性を重要視すべきです。
その観点でいうと、AI×RPAツールの提供企業は、社会性が高いため成長していく可能性が高いです。
かつ、SaaS型サービスの提供企業では導入が可能な企業が大手企業だけではなくて中小企業まで広まるため顧客を多く確保しやすいです。
また、その成長可能性から、資金調達もしやすい現状があります。
つまりはベンチャーで働きつつ、雇用の安定も得られる可能性が比較的高く、ベンチャーで働きたい方にとってはいいとこ取りの選択肢です。
AI×RPA提供企業がマッチする人とは
AI×RPAサービスの提供企業とはいえ、エンジニアから営業、バックオフィスまで様々な職種があります。
ここでは必要なスキル/経験などは割愛し、マッチする思考や性質の点に絞ってご紹介します。
IT好き、新しいもの好き
新しいサービスを作っているからこそ、誰も経験がなく、先行事例のない常務もあるでしょう。
もしくは、社内で教育制度が未整備で教えてもらえない、などの状況もあり得ます。
自身で日々情報をチェックしたり、セミナーなどに参加するなどの積極的なインプットができる人のほうが活躍しやすいです。
そもそも、自身の価値観や好みとして、最新のIT情報や新しい技術が好きな人の方が取り組みやすい環境です。
会社が叶えたいビジョンを見て行動できるひと
最新技術を扱う会社とはいえ実業務は泥臭かったり、ベンチャーならではの未整備さもあるでしょう。
例えば営業職だったら新しいサービスだからこそ顧客の理解を得るには骨が折れるかもしれません。
人事でも新しい会社だからこその煩雑さが想像でき、一般的には不満を言いたくなるような環境かもしれません。
とはいえ、社会性の高いサービスであることは間違いありません。
その実現のための業務だと思って足元の業務を実行できる人の方がずっと楽しんで目の前の業務にも取り組めるでしょう。
そうでなければ、目の前の業務に対する不満の方が大きくなってしまう可能性が高く、要注意です。
RPA×AIの将来像は
近い将来、上述したクラス3 :CA(Congnitive Automation)の状態のサービスが提供されるといわれています。
すなわち、AIが高度な学習を行い、レポートや帳票・文字・音声・画像データの認識だけではなく、そこからの分析を行う必要があります。
目指す目的を理解した上で改善提案まで実施、実行をするサービスが近い将来で求められています。
現状はそのレベルに達しているサービスはまだ提供されておらず、各社が競って開発を進めています。
いまだ開発途中の技術であり、いわば急成長直前の分野です。
今はまさに、この分野へ転職をすることは、業界・サービスの急成長を現場で体験することができる、またとない機会になるでしょう。
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