気候テック(クライメートテック/Climate Tech)とは?気候変動問題にどうやって対処する?注目されている背景を転職エージェントが紹介します。
2050年のカーボンニュートラルに向けて国がSDGsに取り組む影響を受け、気候テックと呼ばれる新たなテクノロジー分野が注目を集めています。そこで今回は、気候テックとは一体何なのかについて、気候テックが注目された背景や気候テックの事業事例をもとに解説します。
目次
気候テックとは?
気候テックとは、CO2排出量の削減または地球温暖化の解決に焦点を当てた技術のことを言います。
2050年までにネットゼロに到達することを目指し、温室効果ガスの排出量を減らして将来予測される気候変動に貢献しようと、今注目されている技術です。
デロイトトーマツベンチャーサポートによれば、2021年の気候テックへの投資額は308億ドルをを記録しており、市場は年々拡大しています。
参考:デロイトトーマツベンチャーサポート
『気候変動イノベーション、スタートアップを支えるエコシステム(前編)』
気候テックの9つのセクター
気候テックは大きく次の3グループに分けられるとされています。
1.温室効果ガスの排出を直接的に削減あるいは解消するもの
2.気候変動の影響への適応を推進するもの
3.気候への理解を深めるためのもの
アスエネ株式会社のカオスマップによると、気候テックはさらに以下の9つのセクターに分けられます。
- メディア
- CO2見える化・算定
- 次世代燃料+核融合
- 再エネ電力
- 太陽光
- 蓄電池
- 需要予測
- EVシェア
- EV充電
特に活発な3つのセクターをご紹介します。
メディア
ESGやサステナビリティ関連の動きが多くの企業で求められています。情報収集のためのメディアに需要が集まっていることで、今後も拡大が期待される領域です。
脱炭素電力・エネルギー
再生可能エネルギーを主軸とした脱炭素電力やエネルギーは世界でも広まっている領域です。日本では2016年ごろから増加傾向にあり、着実に市場を拡大しています。
EVや周辺産業の活発化によりさらなる成長が見込まれます。
CO2見える化・算定サービス
2021年よりCO2排出量の見える化ビジネスは増加しており、政府や多くの企業も注目する領域です。
これまで複雑とされていたCO2排出量算出業務などを、最新技術やクラウドを活用することで支援するサービスが伸びています。
気候テックの歴史
気候テックは、2000年半ばから2010年前半まで注目されていた「クリーンテック」が基になっています。
クリーンテックでは、ソーラーパネルや燃料電池、バイオ燃料など「エネルギー」関連を中心とした研究が行われていました。
その後、年々悪化する気候変動や環境問題に対応すべく気候テックが誕生し、クリーンテックよりも幅広い分野かつ世界規模で取り組みを行っています。
フードロスやリサイクルなどの食品関連を始め、IoT・MLを用いたライフスタイル関連、森林開発なども含め、技術革新に牽引される複数の知識集約型産業が中心となっています。
クリーンテックについては、こちらの記事をご覧ください。
気候テックが注目される背景
ここまでは気候テックとは何か、またどのような流れで誕生したのかを説明しました。
では、なぜ2000年に爆発的ブームとなった「クリーンテック」をより広い範囲で取り組む体制を整えようとしているのでしょうか。
気候テックが注目された背景について詳しくご説明していきます。
世界的な脱炭素・SDGsの推進
気候変動が年々悪化し、 これらが原因で起きる自然災害の発生が1970年代から5倍になったことをきっかけに、 世界規模で脱炭素・SDGsの動きが見られるようになりました。
気候テックが注目され始めた要因の一つに、このような世界的な脱炭素・SDGsの推進があります。
実際、アメリカや中国やインドなど先進国各国がカーボンニュートラルについて明確な目標を打ち出し、Z世代を中心に世界中の人々がこれに賛同しています。
日本政府の対応
世界規模の脱炭素・SDGsの動きに伴い、日本政府も2050年前後を目標に「カーボンニュートラル」を実現すると宣言し、長期的な「低排出発展戦略」が実現されることになっています。
こういった日本政府の影響を受け、日本国内でも気候変動問題の解決に向けた気候テック領域の企業・サービスが増えてきました。
グリーンジャイアントの台頭
近年、サステナビリティやソーシャルグッドを中心に事業を展開し、事業からの直接的収益が年間10億ドルを超えるような「グリーンジャイアント」と呼ばれる企業が現れ始めました。
グリーンジャイアントの多くは、 世界の気候変動問題やエネルギー問題にいち早く気づき、 主となって問題解決に取り組んでいます。
今後は、こういったグリーンジャイアントと呼ばれる企業を台頭に、気候テック版GAFAMのような企業が登場するとして世界から注目を集めています。
気候テックの事業事例
ここまではで気候テックが注目された背景について説明してきましたが、実際にどのような事業事例があるのか、 いくつか紹介していきます。
再生可能エネルギー
近年、CO2削減に向けてこれまで片方向だった配電線が両方向になったことで、より気軽に再生可能エネルギーが実用化できるようになりました。
これに伴い、工場・ビルなどでエネルギーの使用状況を見える化して分析・改善を行うエネルギーマネジメントが注目されています。
エネルギーマネジメント
再生可能エネルギーのエネルギーマネジメント事業で現在最も注目を集めているのが「アスエネ」です。
気候危機問題の解決、ESG・SDGsの取組、地方創生や地産地消などを支えるために、エネルギーマネジメントを展開しています。
アスエネは、気候テック領域でCO2削減に取り組むために、シリーズBエクステンションラウンド(ビジネスが軌道に乗り始めた段階の投資ラウンド)として約7億円の資金調達をしました。
「次世代によりよい世界を」をコンセプトに、アジアNo.1の気候テック企業を目指して事業を拡大していく予定です。
リスク分析システム
CO2削減や気候変動の確認のために、リスク分析システムなどのIT分野に力を入れている事業があります。
CO2を見える化することで月のCO2使用量を分析・コントロールできるシステムや気候変動を分析できるシステムなどが代表的です。
ここからは、リスク分析システムについてそれぞれ詳しく説明していきます。
CO2の可視化
アスエネ株式会社が展開している「アスゼロ」は、CO2の使用量を可視化できるシステムです。
月々のCO2使用量を把握できるため、環境問題に役立てられると注目されています。また、温室効果ガス排出量の算出を自動化し、業務工数を削減できる点も人気です。
さらに削減目標を設定すれば、カーボンクレジットの発行、再生エネルギーへの切り替え、省エネなど、最適な削減手法を提案してくれます。
気候変動の分析
株式会社ウェザーニューズは、気候変動リスク分析サービス「Climate Impact」を展開しています。
「Climate Impact」は、気候リスクの発生頻度などを高精度に分析できるシステムです。
2100年までの気候リスクをピンポイントで算出でき、企業の気候変動対策の一環として利用できます。
温室効果ガス排出量の算定や削減を支援
株式会社ゼロボードは、温室効果ガス排出量の算定や削減を支援するサービス「zeroboard」を提供しています。
温室効果ガスや脱炭素の関心の高まりから、サステナブルファイナンスも拡大しており、企業にとって温室効果ガス排出量はリスク管理上の重要指標となっています。
「zeroboard」は、企業活動全体の温室効果ガス排出量を見える化することで、企業価値向上やカーボンニュートラルの実現に役立っています。
2023年2月15日現在、シリーズAで24.4億円の資金調達を実施しています。
CCUS
大気中の二酸化炭素(CO2)の増加による地球温暖化を防ぐためには、再生可能エネルギーなどによるCO2の削減だけでなく、製造されるCO2を回収し大気中に放出させない対策をとることが必要です。
CCUSは、CO2を分解したり、資源として再利用したり、地下の安定した地層の中に貯留したりと様々な方法がありますが、中でも特にバイオ燃料は注目を集めています。
バイオ燃料
バイオ燃料で今世界から期待されているのが、日本ユニシス(BIPROGY)です。
日本ユニシス(BIPROGY)と株式会社ユーグレナが共同で、ミドリムシを利用したバイオ燃料を研究・開発しています。
株式会社ユーグレナのミドリムシの生産管理・生産予測分野と、日本ユニシスの「IoTビジネスプラットフォーム」「Rinza」のAI技術をフルに活用し、難しいミドリムシの培養工程をAIで自動管理し、生産量が向上しました。
ミドリムシを利用したバイオ燃料の1番の課題であった「培養の安定性」を克服したことで、CCUSの実現に向け期待を集めています。
気候テックの将来性
冒頭で述べた通り、気候テックの市場は急速に拡大しています。
その理由として投資額の大幅な増加が挙げられます。
あわせて、特定買収目的会社(SPAC)が新しい資金調達方法として定着しつつあることも後押ししているようです。
特に電気自動車(EV)と温室効果ガス排出量の少ない(低GHG)車両への投資は世界的に見ても群を抜いており、今後も業界をけん引すると考えられます。
新しい資産クラスとして確立しつつあると言われる気候テックは、今後10年程度で主な投資先として企業の展望を左右するという予測もあり、引き続き市場は拡大し続けると見込まれています。
マイクロソフトやアマゾン、ユニリーバ、イケアなど、およそ300もの企業が2050年以前のネットゼロ達成を宣言していることも業界を後押しするでしょう。
ネットゼロとは、大気中に排出される温室効果ガスと大気中から除去される温室効果ガスが同量でバランスが取れている状況を指します。
世界中で、気候テックを開拓する企業の需要は高まるはずです。
気候テックの注目職種
気候テックとは何かについて理解を深めると、気候テックで注目される職種は何かが気になります。
そこでここからは、気候テックで注目されるであろう職種を説明します。
データ分析システムの開発・改修・運用
気候テックの発展に欠かせないのが、データ分析やシステムの開発・改修・運用です。
膨大なデータを扱い、適切なサービスのプログラム開発を行う必要があるため、AI エンジニアやバックエンドエンジニアは欠かせません。
データ分析システムの開発・改修・運用に必要な職種は以下の2つです。
AIエンジニア
AI エンジニアとは、 ビジネス上の課題を AI の専門知識や技術でもって解決する人のことです。
大きく、AIプログラム開発に関わるプログラム分野と、データ解析を行うAnalytics分野の2種類に分けられ、それぞれが連携して一つの課題に取り組んでいきます。
気候テックでは、 環境問題に対するデータ分析やサービスの開発段階で人工知能を用いられることが多いです。
また、気候テックの一部として実際にリリースされているサービスの中にも、AI技術が多く使用されています。
そのためAIエンジニアは、 気候テックの発展において重要な役割を担います。これからAIを利用した開発やサービスが増えることも考慮すると、重宝される職種であると予想できます。
バックエンドエンジニア
バックエンドエンジニアの仕事の領域はとても広く、WebサーバーやDBサーバーなど、システム開発に必要なサーバの設計・構築はもちろん、実際にシステム開発も行います。
サーバサイド全般を取り扱うため、Web サービスの開発に必要な知識を網羅する必要があるのが特徴です。
気候テックでは、Web サーバーを用いたシステムを多数使用します。代表的なものでいえば、CO2の使用量が視覚的に分かるシステムや、気候変動が予測できるシステムなどです。
これら高度なシステムの開発には、バックエンドエンジニアの存在は欠かせません 。
また、これからより高度な技術が求められることが予想できます。今後は、バックエンドエンジニアは気候テックの分野において需要が高まるでしょう。
開発業務の推進
気候テックを実行する上で、エンジニアの存在は欠かせないということを説明しました。しかし、エンジニアだけではハードウェアやソフトウェアの開発を円滑に進めることができません。
ここからは気候テックの開発業務の推進に欠かせないリードエンジニアについて詳しく説明していきます。
リードエンジニア
リードエンジニアとは、開発チームなどにおけるリーダーのような立場のあるエンジニアのことです。
チームを牽引しでプロジェクトを推進していったり、 プログラマーが書くコードを確認し品質を担保したりする役割を担います。
気候テックの開発業務を推進する上で、リードエンジニアの存在は欠かせません。なぜなら気候テックのシステムは、開発を担うIT企業と開発を依頼する他の分野との共同開発であることが多いからです。
制作に全く分からない知見を取り入れて開発しなければならない際は、リードエンジニアがプログラマーとコミュニケーションを取り、開発を円滑に進めていきます。
気候テックの理解を深め、転職しよう
ここまで、気候テックの注目された背景や気候テックの事業事例をもとに、気候テックの概要や注目されている職業についても、詳しく説明しました。
もし気候テック分野へ興味が強くなった方や、気候テック分野への転職を考えている方は、ぜひ転職エージェントであるギークリーに相談してみてください。
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