GovTech(ガブテック)とは何か解説!デジタル行政で何が変わる?IT転職で行政を変えたい方必読!
GovTech(ガブテック)とは、「Government(政府)」と「Technology(技術)」をあわせた造語です。行政と民間企業などが協業しデジタル化を進めていき、テクノロジーの力で行政サービスを効率化していくことなどを指します。国内の事例のご紹介と事業を手掛けるIT企業をご紹介していきます。
目次
GovTech(ガブテック)とは?
テクノロジーの力で行政サービスを効率化する。それがGovTech(ガブテック)です。
行政と民間企業が協業しデジタル化を進めることで、サービスレベルの向上を目指します。
2013年頃から国内外で始まったGovTechの取り組みは、2023年現在ますます加速しています。
GovTechでできること
GovTechでは、行政サービスを効率化するために下記のような取り組みをしています。
・申請手続きのデジタル化
・相談や問い合わせのデジタル化
・情報発信のデジタル化
・定型業務のデジタル化
オンライン申請の導入や、チャットボットの導入で市民・行政共にメリットが生まれます。
GovTechによって効率化される業務
行政で行う各種手続きをオンライン化することで、自治体に足を運ぶ必要がなくなります。
相談や問い合わせ対応はAIを活用したチャットボットで自動化することで、待ち時間の削減や利便性の向上がメリットです。
これらは行政側も窓口対応がなくなり、大幅な業務削減につながります。
役所・自治体の定型業務にはIT技術が役立つものも数多くあるため、自動化やシステム導入により効率化が期待できるのです。
カオスマップから見る7分野
ケイスリー株式会社が作成したカオスマップによると、日本国内のGovTechは大きく7分野に分類されています。
- ・Horizontal…(ホリゾンタル/業界に縛られない水平さ)
- ・Vertical…(バーチカル/垂直の、特定の分野に特化した)
- ・Administration…(アドミニストレーション/行政記録の管理)
- ・Service Delivery…(サービスデリバリ/サービス提供)
- ・Civic Tech…(市民主体のテクノロジーを活用した課題解決への取り組み)
- ・Service Provider…(サービスプロバイダー)
- ・Smart Infrastructure…(スマートインフラストラクチャ-/既存の道路インフラ×テクノロジー)
日本で増加傾向にあるスタートアップ企業ですが、実は行政DXに取り組むGovTechスタートアップ企業は他領域に比べて少ないという特徴があります。
Administration、Service Provide、Smart Infrastructureの領域に関しては、日本では代表するような企業が存在していない、もしくは少ないことも分かっています。
そもそも業界をけん引する企業が少ないという根本的な課題が見えますが、それでは日本政府はどのような取り組みを行っているのでしょうか。
(参考:ケイスリー株式会社『GovTechカオスマップ2021』)
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日本政府によるGovTech
GovTechがどのようなものかはご理解いただけたかと思います。
本章からはガブテックに対する日本政府の取り組みについて説明いたしますので、転職後の業務イメージに役立てていただけますと幸いです。
日本におけるGovTechの取り組みは、官民データ活用推進基本法の成立(2016年)から始まりました。
続く「デジタル・ガバメント推進方針」(2017年策定)に基づいて、2018年1月には、「デジタル・ガバメント実行計画」の初版が策定されました。
2020年時点で日本政府は「デジタル・ガバメント実行計画」を推進し、行政サービスの100%電子化に取り組んでいます。
日本のGovTech推進に足りないもの
官民連携で推進されているGovTechですが、実際には正しい知識や必要性の認識がない自治体も少なくありません。
また、認識はしていても人手や予算の不足により取りかかれていない自治体もあります。
加えて地方自治体の職員が減少傾向にある事も足を引っ張る形になっていると言わざるをえません。
そこで経済産業省は「GovTech Conference Japan」と題した中小企業庁とIT企業とのディスカッションの場を設けたり、「自治体DX推進会議」を行いワークショップも開催しています。(参考:経済産業省)
このような取り組みを進める日本政府による「デジタル・ガバメント実行計画」を詳しく見て行きましょう。
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「デジタル・ガバメント実行計画」の3原則とは?
日本政府の「デジタル・ガバメント実行計画」は、3つの原則に沿って実施されています。
デジタルファースト
「行政手続きをオンライン上で完結させる」という方針です。
従来の紙資料による手続きをなくすことで、行政側は業務効率化を実現し、利用者側はスピーディに行政手続きをおこなうことができます。
ワンスオンリー
「行政機関が所持している書類やデータについて、申請者に提供を求めない」という方針です。
データを連携させることにより、行政側はスムーズに事務処理をおこなうことができます。
申請者側は、一度提出した情報の再提出が不要になります。
コネクテッド・ワンストップ
「手続き・サービスを1回で完結させる」という方針です。
複数の手続きが1回で済むことで、行政側は業務効率化を実現し、利用者側はスピーディに手続きをおこなうことができます。
日本国内のGovTech事例は?
実際に日本国内で現在取り入れられている事例を紹介いたします。
兵庫県神戸市
神戸市は、全国に先駆けてGovTechに取り組んだ自治体の1つです。
「Urban Innovation KOBE」と題して、2017年よりスタートアップ企業およびベンチャー企業との協業をスタート。
神戸市役所の職員とスタートアップ企業やベンチャー企業の社員がタッグを組み、テクノロジーを活かして地域課題の解決に取り組みました。
初回は6つのテーマで公募企画をスタートし、そのうち4つが、2019年度の予算で実現可能に。
例えば、長田区まちづくり課との協働実証実験「子育てイベント参加アプリの実証開発」では参加者が40%増えるなど成果が上げられました。
2019年2月には神戸市主導で「GovTechサミット」を開催し、「Urban Innovation KOBE」の成果発表をおこないました。
そこでは全国各地の自治体と、GovTechスタートアップ事例のノウハウを共有しました。
また、同イベントにて自治体⇔スタートアップ企業およびベンチャー企業のマッチングを促進する企画もおこなわれました。
2019年以降も、介護サービス事業者への案内業務のデジタル化など、神戸市は積極的にGovTechに取り組んでいます。
茨城県つくば市
つくば市は、テクノロジーを活かした官民連携において、先進的な取り組みをおこなっている自治体です。
2019年には、「令和元年度つくばSociety 5.0社会実装トライアル支援事業」と題しスタートアップ企業およびベンチャー企業の募集を開始しました。
1つの事業あたり100万円を、合計5社に支給することが事前に決定されているため、他の自治体よりもスピーディな事業推進が可能です。
福島県会津若松市
会津若松市が推進しているのが「スマートシティ会津若松」の実現です。
現在ヘルスケア、モビリティ、フィンテック、教育、エネルギー、観光、食・農業、ものづくり、防災の9分野でDXを進めます。
取り組みは2011年8月からと早く、アクセンチュア株式会社などと「スマートシティプロジェクト」を通して官民一体となった課題解決を行っています。
市民が主体的にデジタルを利用することを目的としており、掲げる「市民ファースト」が叶いつつあるGovtech事例です。
埼玉県さいたま市
「さいたま市デジタルトランスフォーメーション(DX)推進本部」を設置するさいたま市は、日本国内でもデジタル化の先駆者と言える自治体のひとつです。
スマートシティ構想の一環として「共通プラットフォームさいたま版」を設置し、美園地区をモデルとしてデータ収集と活用するための情報共通基盤構築に乗り出しました。
行政にとってはマネジメント効率化にもつながります。
神奈川県横浜市
Govtechによるコロナ渦での成功例を挙げたのが横浜市です。
融資に関するオンラインでの事前申請を設けたことで、市役所での申請者の滞在時間を大幅な削減に成功しました。
結果として、職員の業務負担も大幅な軽減につながっています。
横浜市では、今後オンライン申請の範囲を拡大し手続きの効率化を進める予定です。
大阪府四條畷市
大阪府でもICTを使った行政サービスの効率化を進めています。
そのなかで四條畷市(しじょうなわてし)では全国初となる「Graffer® 電子申請」を導入し、住民票の写し交付請求のオンライン受付に係る実証実験を行いました。
住民票を入手するために自治体の窓口やコンビニ、郵送などで行う手間をすべて省き24時間365日どこでも申請できる環境が整えられます。
利用者はスマートフォン、マイナンバーカード、手数料を支払うためのクレジットカードを用意するだけです。
茨城県つくば市
つくば市では、スマートシティ実現に向けてスタートアップ企業やベンチャー企業の募集を積極的に行っています。
また、デジタルIDアプリ「xID」を使用して個人認証を行いネット投票を可能にしたり、行政DXサービス「手続アセスメント」を導入して手続きのオンライン化を評価判断するなどの取り組みで知られています。
ブロックチェーンなど最新技術を率先して導入する自治体です。
国内の行政デジタル化の実態
実は日本国内では2022年時点で、すでに84%の自治体がオンライン申請を導入済みであることが分かっています。
専門部署の配置が進んだり組織がより強化されるようになり、「庁内のすべての部署で一つ以上のオンライン申請を扱っている」という自治体もあるのです。
人口5万人未満の小規模な自治体ではこのようにデジタル化を率先して行うところもある一方で、全く取り入れていないところもあるのが実態です。
全庁的なオンライン化に取り組みやすいことが分かっているため、今後の展開に期待が寄せられています。
背景にあるクラウド化と人材の確保
電子申請システムを行うツールには、クラウド型が多く選ばれており、システム導入はここ数年で着実に増えています。
また、これまで課題とされていた行政でのIT人材不足ですが、採用や外部への委託を増やすことで解決に取り組む自治体が増加しました。ITスキルを持つ人材を必要とする自治体が増加していると言うことが分かります。
海外政府によるGovTech事例は?
日本国内だけでなく、いち早くガブテックを取り入れた海外の事例を紹介いたします。
エストニア
エストニアは行政サービスの99%がオンラインで完結する「電子政府」を世界に先駆けて実現した国です。
1997年より、国家戦略として「e-Governance」を掲げ、2001年にはデータベース連携用のプラットフォーム「X-Road」を確立させました。
「X-Road」の導入により行政サービスが効率化され国家レベルのコスト削減が実現できました。
さらに、医療分野のサービス効率化にも繋がったのです。
また、15歳以上の国民全員に「eIDカード」を配布することで、様々な行政手続きを簡略化することに成功しました。
2020年より新型コロナウイルス感染拡大下での官民連携施策として、「Share Force One」という就業支援サービスを開始しました。
現在大規模な雇用調整をおこなっています。
シンガポール
シンガポールは、「Digital Government Blueprint」の方針を掲げてGovTechをいち早く実現しました。
現在も先進的な取り組みで世界の注目を集めている国のひとつです。
2014年には「スマート・ネーション構想(Smart Nation Singapore)」を打ち出し、市民・企業・行政の3部門でテクノロジーの連携を始めました。
緊密な官民連携の基礎となっているのは、2000年にオープンした「GeBIZ」というプラットフォームです。
「GeBIZ」では、行政側・企業側の情報をオンライン上に集約することで、膨大な入札案件を迅速に処理することができます。
シンガポール政府の運営するクラウドソーシングのプラットフォーム「Ideas!」では、行政課題に対する事業募集を常時おこないました。
テクノロジーを活かした解決策の実現を推進しています。
GovTech事業を手掛けるIT企業とは?
実際に日本で活躍しているガブテック業界の企業を紹介いたします。
どのような業種で参入しているのかを確認して転職に役立てましょう。
xID株式会社(旧社名:株式会社blockhive)
エストニアでの事業経験とノウハウを活かし、デジタルIDやブロックチェーンなどの製品を開発・販売しています。
主力製品は、マイナンバーカードと連携したデジタル身分証アプリ「xID」や、電子署名プラットフォーム「e-sign」など。
2019年12月には石川県加賀市と協定を結び、xIDによって、行政手続きのデジタル化を促進しました。
2020年8月には社名を「xID株式会社」に変更し、より一層マイナンバーカードおよびデジタルID事業にコミットする方針を表明しました。
株式会社トラストバンク
日本に本社を置くIT企業です。親会社である株式会社チェンジのノウハウを活かし、GovTech事業を推進しています。
ふるさと納税総合サイト「ふるさとチョイス」を運営、2019年11月には自治体専用ビジネスチャット「LoGoチャット」を発表しました。
続く2020年3月には、自治体専用フォーム作成ツール「LoGoフォーム」を発表し、コロナウイルス感染防止対策の行政デジタル化に貢献しました。
2020年5月には、行政デジタル化促進事業において、株式会社blockhiveと業務提携を果たしました。
この業務提携ではxID株式会社のデジタル身分証アプリ「xID」と自治体専用フォーム作成ツール「LoGoフォーム」を掛け合わせています。
自治体の手続き・サービスの完全オンライン化を目指します。
ケイスリー株式会社
日本に本社を置くIT企業です。
先端技術を取り入れた社会的インパクト・マネジメントや政府との協業による研究開発・導入支援によりGovTech事業を展開しています。
2020年8月には、行政サービス支援プロダクト「BetterMe」を活用し、沖縄県西原町にて、特定健診受診勧奨プロジェクトをスタートしました。
「BetterMe」は行動経済学(ナッジ理論)のアルゴリズムを、携帯のSMSに搭載した公的通知自動化サービスです。
厚生労働省と連携し、特定健診の受診率向上を目指しています。
株式会社WiseVine
こちらも日本に本社を置くIT企業です。「官民連携」「官官連携」を加速するべく、GovTech事業を推進しています。
全国の自治体の予算資料を横断検索できるデータベースサービス「WiseVine Signal」。
自治体が民間企業のソリューションを探索できる「官民連携プラットフォーム」を提供することで、地方自治体の課題解決に寄与しています。
2020年8月からは、自治体向けに動画コンテンツの配信をスタートしました。
「官民連携にあたっての根源的な問題提起」や「各自治体の予算関連資料の比較、特徴の解説」といったテーマで、自治体のサービス向上を目的としたコンテンツを提供しています。
GovTech事業を手掛けるIT企業で活躍できる人材とは?
実際にどのような業種の企業があるのかを知ることができましたが、ガブテック業界ではどのような人材の方が活躍できるのでしょうか。
解説していきます。
自主的に提案ができる方
先に挙げたGovTech事例のように、行政のニーズに対し新たなサービスを構築できる企業が社会に求められています。
したがって、「指示待ち」ではなく、自主的に新たな提案ができる人材を、企業側は求めています。
英語力の高い方
GovTech事業においては、自社サービスを海外展開することや、逆に海外の事例を活かして日本国内に展開するといった動きが求められます。
これからのIT企業で「英語力」は必須といえるでしょう。
世の中の変化に対し、柔軟に適応できる方
これからの時代は、「Withコロナ」。
新型コロナウイルス感染防止対策を取りつつ、GovTechプロダクト事業を加速させることが求められます。
不測の事態に対処し、新たなビジネスチャンスを開拓できる人材こそ活躍できるでしょう。
まとめ
国内外のGovTech(ガブテック)推進に伴い、IT業界の求人は増加傾向にあります。
転職を検討している方や問題解決が得意な方、テクノロジーに興味がある方は、行政を変えるチャンスです。
ぜひ転職を検討してみてはいかがでしょうか。
転職エージェントは業界に特化した専門のサポートが多く存在しますし、汎用的にも特化的にも適した転職を行えるため、おすすめです。
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