デジタルツインのメリットを紹介!活用事例やIoTとの関連は?今後の課題を転職エージェントが解説します
今様々な場所、主に生産業から具体的な導入が始まってるのがデジタルツインという技術です。膨大なデータを利用した仮想空間の中で、モノだけではなくヒトの行動まで最適化が行えます。これからますます普及が見込まれるデジタルツインについて解説します。
目次
デジタルツインとは
現実に存在する機器・設備の仕組みや稼働状況を、仮想空間上に再現したものです。
その仮想空間に現実世界にと全く同じように使用し摩耗・劣化したものを作り、将来実際におこるであろう変化を予想することができます。
日本語ではデジタルの双子と称されますが、見た目や質感などの物理的特徴までは模倣しません。
リアルタイムでデータを収集しデジタル上に構築し、リアルタイムで同期して再現することができるためツイン(双子)と称されます。
この技術により企業は製造段階に留まらず、稼働後もリアルタイムで機器や製品の状態を確認できます。
シミュレーションとの違い
デジタルツインとよく比較されるのがシミュレーションです。
大きく違う点は、デジタルツインはリアルタイムに現実にある機器、道具と同期できる点です。
シミュレーションもあらゆる事象を想定して、理想的な設計仕様に基づき複数の事象をテストできます。
しかし、完成しすでに現実の現場で使用されている機器の利用状況に合わせて想定することは困難です。
デジタルツインは主にIoTによって、出荷後の商品・機器についてもデータの取得が可能で、出荷後も把握と解析ができます。
いつでも最新のデータで、摩擦状況や破損予測などができるのです。
IoTとの関連
IoTとは「Internet of Things」の略で、モノのインターネットと訳され、最近では随分と一般的になりました。
モノのインターネット
技術革新により、インターネットを利用できる機器がずいぶん小型化されました。
IC(集積回路)チップも小型化し、いままで搭載できなかったものにネット機能を持たせることができるようになりました。
家電や車などあらゆるものにネット機能を搭載し、リアルタイムに情報を収集・送信・分析できるのです。
IoTは大きく分けて3つの使い方がされています。
遠くから操作する
これが代表的な使い方でしょう、離れたところにあるものを操作できます。
外出先から家電を操作する、また家庭内のテレビやエアコンなどのリモコンをスマートフォンに集約するなどです。
スマートスピーカーなどもこれにあたります。
現状を知る
防犯システムなどに利用されています。鍵が正規の手段以外で開くと警備会社に連絡が行く、ペットの様子を携帯から確認できるなどです。
モノ同士で通信する
モノがモノの情報を知り、遠隔で操作、モノ同士で管理します。
車の自動運転などに使用され、信号機が渋滞状況などを察知し、待ち時間を調整する試みがあります。
デジタルツインのメリット
現実では実現不可能なことも実行できることが大きなメリットです。
物理的に難しい作業が可能
新しいことを試したくても、スペースや人材などの制約があり難しいことも仮想空間なら可能です。
またデジタルツインで試算をすることによって、どれくらいのスペースやコストがあれば可能か具体的な数字を算出できます。
仮に失敗しても物理的なコストを最小限に留めることができます。
作業の効率化
生産管理の最適化、業務の効率化を試すことができます。
リアルタイムに生産作業をモニタリングしデータを抽出していくことで、改善点がわかりやすくなり改善が見込まれます。
発注、製造、納品までの全工程をデジタルツインで試算し、効率化が図れます。
またスケジュール調整や人員の配置、標準原価の設定など正確性が求められる作業も、スピーディに行うことができます。
コスト削減
仮想空間でデジタルツインを利用し、生産ラインを現実と同じようにテスト稼働することができます。
今まで現実世界でコストをかけて製品の試作をしていたものが、デジタルツインならいままでより低予算で行うことができるのです。
例えば自動車などの試作は車両の作成・テスト走行など場所や人員が必要でしたが、大幅なコスト削減が見込まれます。
また商品が完成し、市場に流通した後のデータも、IoTによって収集が可能です。リサーチにかけるコストも抑えることができます。
リスクの軽減
製造工程の改善および新製品テストなどを、仮想空間で行うことができます。
そのために生ずるコストの削減、またシステムを入れたり停止したりする際に作業工程全体のリスクを軽減することになります。
トラブルは事前にデジタル上で試算することが可能なので、回避がしやすくなります。
リスクが少ないことで、思い切ったアイディアも試しやすくなり、改善はより進むことになります。
メンテナンス面
収集されたデータにより、流通している商品の問題も分析・予想することが可能です。スピーディな問題解決が期待できます。
アフターケアの充実
出荷後の商品の状態も、リアルタイムでモニタリングできます。摩耗状況などをチェックし、アフターケアのタイミングなども予測できます。
これにより新たなマーケティング戦略を提供していくことも可能です。
デジタルツインの課題
注目の技術であり、IoTを利用した分野の技術ではすでに一定の効果をあげていますが、まだ発展途上の技術です。
もっと高度なデジタルツインが必要である場合、超えるべき技術的な課題がいくつかあります。
開発分野を問わず、故障予知など一定の条件を付したシュミレーションには環境条件や実稼働の詳細なデータが必要です。
個体認識
まず挙げられるのは個体認識とその精度です。例えば自動車のように一つ一つ製品構成が違う場合などは容易にはいきません。
長期間稼働するものに関して
例えば建設機器など購入してから何年間も使われるものは、定期的な点検や故障対応などで整備を受けます。
交換時に供給される部品が代替わりをして、数年後には当初の構成から乖離してしまうこともよくあります。
デジタルツインを利用して作られた3Dアニメーションなどが設計段階のデータのままであると不都合が生じる可能性が出てくるのです。
こうした問題を避けるため、機器構成の変更を追跡して記録、アニメーションと連動される必要があります。
どのようにして連動させていくかについては、まだ実証段階なのです。
デジタルツインの事例
世界中でデジタルツインが普及し利用され始めています。その活用の手段は製造業だけにとどまりません。
社会課題や災害の解決
現在日本のみならず世界中の社会課題や災害予知にも、活用が期待されています。
湖や河川などを撮影、地形や水位などのデータも仮想空間に送り、仮想空間で再現することによって防災にも大いに役立つと期待されています。
シンガポールでは国土全体を仮想空間に再現する取り組みが行われており、都市計画や災害対策に活かそうという計画が進んでいます。
日本でもインフラ・データプラットフォームを目指すにあたっての参考例として挙げられており、注目の事例です。
製造業での活用
たとえば、製品のライフサイクルのすべてをデジタル化。
コンセプト・制御設定・製造保守などをデータでつなぎデジタルツインで情報を反映させ、生産性を根本から見直し高めたのです。
設計の標準化、機械の付加価値創出が可能です。開発期間を短縮させて新しい製品の開発を早め、コスト削減が見込まれるなどです。
航空機のエンジンをデジタルツインでモデリング
航空機のエンジンのメンテナンスにデジタルツインが活用されています。
エンジン部をデジタルツインでモデリングすることによって、保守費用を削減。
燃料、気温、砂塵の量などの詳細なデータを収集分析することで、最適なメンテナンス頻度を分析し、コストをカットしているのです。
スポーツでの活用
ワールドカップの試合などで見聞きしたことがあるでしょう。
審判員をサポートするVAR(ビデオアシスタントレフェリー)もデジタルツインが利用されました。
電子パフォーマンス&トラッキングシステムというシステムです。
選手とボールの動きをリアルタイムに把握しデータを収集し分析、さらに心拍数や疲労度までモニタリングされていました。
収集した情報は分析担当者にタブレットでリアルタイムに反映させ、試合に大きな影響を与えたといわれています。
デジタルツインを支える技術
先述したIoTとともに、デジタルツインを可能にするための技術も忘れてはいけません。
AI
いわゆる人工知能であるAIは収集した膨大なデータを分析することに使われています。
様々な機器に搭載されたIoTにより継続的に情報を取得し、その膨大な量のデータをAIが処理・分析を行っているのです。
AIそのものの情報処理能力のアップ、そしてIoTの進化によるデータの増加と合わせて、より正確に未来予想が行えるようになりました。
AIにはより高精度な分析が求められており、ますますの進化が期待される分野です。
5G
2020年春に商品化しました。大容量のデータを超高速で送受信できるようになります。
これによって膨大なデータも素早く仮想空間に送信され、デジタルツインへのデータ反映に高い効果が見込まれます。
今後、ますます5Gの普及は多くなるでしょう。
AR・VR
ゲームをする人は特に良く聞く技術でしょう。
仮想空間をリアルに見せるVR(仮想現実)も現実世界に、情報を拡張する技術であるAR(誇張現実)も、デジタルツインを支える技術の一つです。
仮想空間を視覚的に伝えるこれらの技術は重要です。仮想空間で起きたことを可視化し、よりリアルなフィードバックを得ることができます。
まとめ
デジタルツインは、今さまざまな分野で活用され始めた強力なツールです。すでに日本でも国土交通省や東京都が率先して利用しはじめています。
さまざまな角度からいろいろな職種の人が、デジタルツインの構築を進めています。
しかしまだまだ諸外国に比べて日本はやや遅れ気味で、これからもっと国内に広まっていきます。
いち早く理解し取り入れることで、得られるリターンは少なくないでしょう。
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