【前編】ランサーズ株式会社 ~僕らはオープン ・タレント・プラットフォームを創る~
「ありがたいことに『ランサーズってオンラインの仕事マッチング(クラウドソーシング)事業をやっている会社だよね』とよく声をかけていただきます。実はそれ、過去の話なのです」。ランサーズ株式会社は「フリーランスや副業など働く『個人』」に対して、誰もが自分らしく働くことができる環境や社会インフラ創りを目指しています。そんなランサーズ株式会社の歴史からこれから目指している世界まで、ぜひご覧ください!
目次
秋好 聡さん
ランサーズ株式会社の創業時メンバー。1983年生まれ。大阪府出身。2008年4月に株式会社リート(現・ランサーズ株式会社)を兄陽介とともに創業し、システム開発からデザインまで独学で幅広く活躍。現在はプロジェクトマネージャーとしてプロダクト開発や組織作りを担当しています。
ランサーズの歴史
創業の経緯
本多
まず、秋好さんが抱かれている「創業時からの想い」についてお伺いさせていただきます。2008年の4月にご創業されまして、フリーランスプラットフォームにおいては今やリーディングカンパニーとなっていらっしゃるかと思います。そこで、設立からこのリーディングカンパニーになられるまで、どういう歴史を辿ってきたかをご教示頂けますでしょうか。
秋好さん
それでは、何故このランサーズという会社ができたのか、からお話しますね。
代表の秋好(兄陽介)は、2000年代初頭の学生時代にフリーランスとしてSEOコンサルタントやHP制作を請け負っていました。当時、会ったことがないお客さんからの仕事を受注し、期限内に納品したところ、「振り込みました」という連絡がきて、きちんとお金が振り込まれていた出来事がありました。その時、顔も知らない人と取引をして報酬を得たことに衝撃を受け、非常に感動したそうです。その時から、「こういう働き方があるのか!」と新しい体験をしたことでインターネットの世界にのめり込んでいきました。
そこから、2004年代表の秋好は新卒でIT企業に入社し、ディレクター・プロデューサーという立場で色々なサービスを作っていました。そんな中で、自分がフリーランスとして働いていた時に知り合った優秀なエンジニアの方と一緒に仕事がしたいと思い、発注をしようとしたところ、会社として個人(フリーランス)には発注できないと言われてしまいました。その時、企業がフリーランスに仕事を発注することに否定的な態度を見て、「企業がもっと簡単に優秀な個人と繋がれる場をつくるべきだ」と思いたち、サービス開発を決意しました。これが、ランサーズの始まりです。
創業時の強い想い
本多
創業期には、どういった想いでサービス展開されようとしたのですか?
秋好さん
今後、インターネットが普及していけば、個人での裁量が広がり、個人が活躍する時代になっていくだろうという前提がありました。そこから、個人に対して後押しし、勇気を与えることを意味する「個のエンパワーメント」を作り出していきたい、というのが弊社の創業時の想いであり、弊社のミッションでもあります。
企業が障壁なく個人の優秀なフリーランスの人と繋がれる、そこでフリーランスの人も営業活動をしなくても仕事を手にする機会が増えていくことを夢見て始めました。
ターニングポイントは2011年
秋好さん
2008年にリリースして、4年間くらいは苦しい時間が続きました。もの凄く静かでした。もちろんお仕事の依頼があったり、成約もあったのですが、サービス自体は全く伸びず、ランサーさん(※)もなかなか増えませんでした。そんな状況が変わったきっかけは、2011年の東日本大震災の時でした。震災や停電をきっかけとして、社会全体が働き方を見直すことが多くなり、時間や場所によらない新しい働き方に注目が集まり、ノマドやテレワーク等の言葉が世間で飛び交うようになりました。2011年を区切りに、会員登録数やお仕事の依頼数が大きく伸びていきましたね。
当時から様々な競合他社のサービスが出てきていましたが、粘り強く諦めなかったし、先述のような「企業が障壁なく個人の優秀なフリーランスの人と繋がれる、そこでフリーランスの人も営業活動をしなくても仕事を手にする機会が増えていく」という世界が絶対に必要だと思っていたので、それを信じてやり続けることができました。それが結果的に大きかったと思います。当時に数百と出てきた競合他社さんは次々と諦めていきました。
※ランサー:ランサーズ独自の言葉で、フリーランスの方(会社員の方も含む)を指します。
会社としての拡大・成長フェーズへ
本多
2011年から右肩上がりの成長を遂げ、今では従業員の方も150名を超えております。そんな会社の成長・拡大フェーズである2011年から今までについて、詳しくお話しいただけますでしょうか?
秋好さん
広報に力を入れ始めたことが大きいと考えています。それまでもインバウンドでの取材が時々あったのですが、「自分達から取りに行く」ことにしました。一番の契機は、2012年9月のテレビ東京のWBS(World Business Satellite)に出たことでした。その頃は会社としてもまだ認知されていなかったのですが、あの番組に出てからは明らかに会員登録の傾向が変わりました。
本多
2011年までは、会社としてランサーの方と企業とをマッチングできるような体制を作ることや技術的な部分にパワーを割いてきました。それを諦めずに続けていき、2011年に市場の流れが出てきて、その流れを活用してテレビ出演も決め、会社として大きく成長・拡大していったのですね。
秋好さん
会社として、自ら広報の機会を取りに行けたのは大きかったと思います。
ランサーズが目指す未来
「クラウドソーシング」≒「フリーランス」
本多
ランサーズ様が成長・拡大していくフェーズについてお話を伺えたので、次は今にフォーカスを当てていきたいと思います。現時点で、ランサーズ様はどこを目指されているのでしょうか?
秋好さん
僕らはお仕事のオンラインマッチングの「クラウドソーシング」事業だと思われているのですが、僕らはオンラインマッチング(クラウドソーシング)のみをしたい訳ではありません。我々は、テクノロジーの活用によって個人の「働く」をデータベース化し、あらゆる個人を 広義 のプロフェッショナルに変える「Open Talent Platform(オ ープン・タレント・プラットフォーム)」の構築を目指しています。
僕らがやりたいのは、企業はフリーランスに対して信頼のおける優秀な特定の方に仕事が依頼できる、そしてフリーランスも企業に対して的確な価格や納期などを指定した質のいい仕事と気持ちよい関係性のクライアントが見つかる、というお互い安心して仕事ができる環境を作ることです。
本多
「クラウドソーシング」と「フリーランス」をしっかり区別されているのですね。
秋好さん
フリーランスという言葉を使っていますが、僕らは「広義のフリーランス」と言っていて、専門性のある方や個人事業主として働かれている方、パラレルワークの方、副業の方なども含んでいます。個人が自由な働き方をするのに会社員だと難しい。だからといっていきなりフリーランスになるには不安を抱く方も多いと思います。ただ、その過程に副業しながらフリーランスをするというのがあっても良いと思うんです。働き方は多様なので、大学を卒業してそのままフリーランスになることがあっても良いと思います。
「フリーランス市場」は今後伸びるのか?
本多
次の話題に移りたいと思うのですが、求職者様がよく疑問に思われる点として、「フリーランス事業って今後伸びていくの?」というものがあります。それは、日本という国が個人で何かをやるという国ではなく、終身雇用や年功序列などを会社として大切にしてきた集団を大切にする国だからこそ生まれる疑問だと思います。以上から、事業自体はこれから本当に伸びていくのでしょうか?また、どういった考えでサービスを展開されていくのかをお教え頂きたいです。
秋好さん
フリーランス市場で言うと、広義のフリーランスの方は約1000万人の方がいらっしゃいます。つまり、約1000万人の市場規模があるという事ですね。「広義のフリーランス」と捉えると労働者の6人に1人が該当している推計になります。
本多
すごい市場規模ですね…
秋好さん
更に言うと、2つの理由があると思います。
1つ目は、企業の人材不足の課題を解決するためです。企業様も優秀な人材確保をするために、働き方改革を実施し副業解禁などを行っていると思います。人材を確保する手段としても「正社員のみ」だけではなく、副業やフリーランスの方を雇うことによって新しい人材確保につながります。そういった状況を考慮した上で、フリーランスの方々が働きやすい環境を作っていくことが、僕たちのミッションだと思っています。
2つ目は、個人のモチベーションが「やりがい」に向けられているためです。日本で言えば、戦後の経済成長期はお金を指標として追う時代で、それから今は成熟して「やりがい」に対してお金を払うんですね。そういった意味では、人はある会社で手にしたひとつの経験や知識だけでは「本当にこれからを生きていけるのか?」と不安になってくるんだと思います。なので、色々な所で働いたり、色々な経験をすることが、当たり前になってくるんじゃないかなって思います。これは、僕らが言う「広義のフリーランス」に対するニーズの高まりとも言えると思います。
本多
とても納得感があります。柔軟で多様な働き方が、社会全体で今後求められてくると思いますし、そんなニーズに十分応えられるのがランサーズ様のサービスなのだなと思います。
フリーランスと一緒に作る、未来のプラットフォーム
本多
ランサーズ様の最終ゴールはどこにあるのでしょうか?創業者の秋好社長の想いと重なる部分が大きいと思いますが、お教え頂ければと思います。
秋好さん
安心安全にやっていけるフリーランスと企業とのプラットフォームを作っていきたいです。例えば、日本の仕事における受発注の構造って、「これやっておいて」といった、ある種「丸投げ」のスタンスになってしまっていると思うんです。採用を考えてみてください。採用ってフラットだと思うんですね。企業も人を選ぶし、人も企業を選ぶ。当たり前のことなのに、なぜか「仕事を依頼する」となると構造がおかしくなってしまうんです。これは変えていかなければいけないと思っているので、前提として信頼できる人に仕事が依頼できることも必要ですし、仕事を受ける側も何の会社でどういうことができるのかがわかることも必要です。そういったフェアな状態を作りたいと思っています。
プラスで社会的な制度も必要だと思っています。実際に最近の取り組みとして、「フリーランスベーシックス」ということをやっています。フリーランス専用のクレジットカードを新生銀行のグループ会社と作ったり、福利厚生の工夫や取り組みを続けています。他にもフリーランスの成長コミュニティ「新しい働き方Lab」というものがあります。会社でやっていると同僚がいるように、フリーランスにもコミュニティが必要ですし、そんなコミュニティを指しています。実は、そのコミュニティリーダーはフリーランスの方なんです。各地にフリーランスのリーダーを立て、彼らが中心に作ってくれています。
そういう横のつながりもうそうですし、生活面だったり保障面だったりというのが課題になってくると思っています。なので、フリーランスの方と一緒に、フリーランスの方を「エンパワーメント」するようなプラットフォームを作っていっている感じですね。
システムの力で、自由で垣根のない世界へ
本多
他に、事業・システムなどの側面でのお話はありますでしょうか?
秋好さん
事業、システムというお話で言うと、働いた経験がクラウドにあって、それがデータとして蓄積していくような世界がいいなと思っています。例えば、インタビューの仕事をしていたことが事例となり、クラウドにそのことが残るので、わざわざ履歴書に書かなくていいんです。副業でやったことも事例になり、そういった経験がある人だという事で信頼を獲得することができれば、個人だろうが企業だろうが仕事をお願いしたい人っていうのは沢山いるはずなんです。そういった仕組みができたら素晴らしいですよね。これについては僕らだけではできないことで、色々な企業さんと協力しないといけないですし、そういった世界がいいと思うんですよね。逆に言うと、サボれなくなっちゃうんですけどね(笑)
本多
全部透明になっちゃいますもんね(笑)
秋好さん
フリーランスでやるっていうスタイルを選択しているのであれば、例えば朝起きて「貴方にオファーが来ています」や「あなたのこれまでの経験上、この案件にも挑戦してみてはどうですか?」みたいなAIの仕組みがあっても面白いです。面接に行くときに、ランサーズのそういったデータをもっていけば、スキル面での判別もできますね。そういった、自由で垣根のない世界になったら面白いですよね。
【後編】はコチラから⇓
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