”ゲーミフィケーション”を通してプログラミングを学ぶ楽しさを伝えたい。MIXIの⽥那辺輝が語る、次世代のIT人材育成と地域社会への貢献を目指した「学校教育⽀援プロジェクト」とは
株式会社MIXIは『豊かなコミュニケーションを広げ、世界を幸せな驚きで包む。』をパーパスとして、心もつながる場と機会を世界中に創り出しています。
今回は、2018年にミクシィ(現 MIXI)社へ入社後、渋谷区との「学校教育支援プロジェクト」に携わり、プログラミング学習を先頭に立って推進している田那辺様に、学校教育支援プロジェクトへ秘めた思いや仕事観についてお話いただきました。
様々なキャリアを経てSTEAM教育の前線で活躍されている道のりや秘訣についてお話いただきましたので、是非ご覧ください。
目次
【株式会社MIXI インタビュイー】
・⽥那辺 輝(たなべ あきら)様
開発本部 CTO室 クライアントグループ中学⽣プログラミングカリキュラムと教材ソフトウェア開発者、および同カリキュラム講師。
⼊社前よりゲームを中⼼としたソフトウェアエンジニアとして活動しており、コンシューマゲームやブラウザゲームとスマートフォンアプリの開発、Webサービスやゲーム企画・ディレクションも経験。
2018年9⽉にミクシィ(現MIXI)へ⼊社。
2019年4⽉より現部署にて、教育現場に向けて、「プログラミング学習」を推進する講師として、学習ソフトウェアやカリキュラム開発に取り組んでいる。
MIXIが挑む「教育×IT」とは。「学校教育⽀援プロジェクト」に秘めた思い
―現在、貴社が手掛けている「学校教育⽀援プロジェクト」とは、どのような取り組みなのでしょうか。
田那辺さん:「学校教育⽀援プロジェクト」は、渋谷区の地域貢献や全国的な次世代のIT人材育成を目的とした、会社のサステナビリティ活動のひとつとして行なっている取り組みです。
現状に至るまでの流れとして、もともと行っていた企業訪問の受け入れが土台にあります。
その時に全国の中高生が学校単位で当社を見学に来ていたことから、学生に対してはどのような指導が必要なのかというイメージを早くから持つことができていました。
そして渋谷区から近隣のIT企業等に対して「学校のプログラミング教育の支援をしてほしい」というお声があり、2019年に「プログラミング教育事業に関する協定」を締結し、「Kids VALLEY〜未来の学びプロジェクト〜」が発足しました。
これは、渋谷区に本社を置く当社を含む5つの企業※と渋谷区が一緒に、⼩・中学校でのプログラミング教育の充実や、次世代に必要な資質・能⼒を持った⼈材を輩出する⼟台作りを進めることを目的とし取り組んでいるプロジェクトです。
渋谷区は本プロジェクトの発足前から、タブレットPCを小中学生に貸与したりとICT教育を先駆けて行なっていましたが、2020年に小学校でプログラミング教育が必修化され、学校だけでは対応することが難しくなり、企業も協力することになったのです。
実際の支援においては、各社の強みを発揮できるように学年ごとに担当企業を振り分けました。私たちは中学校を担当することになり、技術科の授業の中で本格的なプログラミングを教えています。
技術科は木工、金工、情報、植培の4領域があり、先生はそれぞれ専門領域を持っているものの、全部の領域が得意ではない場合も多いです。
そのため、特に情報の領域に強みを持つ私たちがコンテンツを提供することで、指導の幅を広げ、生徒さんたちの学習意欲・モチベーション向上につなげることが取り組みの1番の目的です。
※東急株式会社、株式会社サイバーエージェント、株式会社ディー・エヌ・エー、GMOインターネットグループ株式会社、株式会社MIXI
―「学校教育⽀援プロジェクト」について、どのような反響・反応がありましたか。
田那辺さん:先生方も生徒さんに交じって一緒に受講してくださることが度々あり、「コンピュータについてあまり知らなかったので良いきっかけになった」と言っていただけました。
同時に、ほかの教科の学習時とは違ったリアクションをする生徒さんや、あまり目立たなかった生徒さんが活躍する姿を見て、驚きながら喜んでいる先生もいました。
私たちはプログラミングの中でも「テキストプログラミング」という、実際にコードを書くことを教えていて、生徒さんのほとんどが未経験であり、なかにはプログラミングに興味を持っていない生徒さんもいるため、どのように教えるべきか心配はありました。
ですが、私たちの授業を経て、興味のなかった生徒さんも今ではプログラミングができるようになっており、先生方もその姿を見て大変驚いていました。
レベル差もある中で、全員が楽しいと思える状況にするのがミッションだと思っています。
また、2021年からは部活動の地域移行として立ち上げられた一般社団法人「渋谷ユナイテッド」が行う部活動の支援も行なっています。
そこではあえて「プログラミング部」ではなく「デジタルクリエイティブ部」という名前にして、プログラミング以外にもデザインなどのカリキュラムと組み合わせて、 社内のさまざまな専門領域の社員と連携して提供しています。
パソコンを触るのが得意になりたい人や絵を描いてデザインしたい人など、特定の領域だけ興味がある人でも楽しく部活動ができるように幅広く対応しています。
「学校教育⽀援プロジェクト」を支える、少数精鋭のチームに学ぶ仕事観
―「学校教育⽀援プロジェクト」は、少数精鋭のチームで運営されているとお伺いしています。規模感のあるプロジェクトを、どのように運営されているのですか。
田那辺さん:初めは私とサステナビリティ担当者の2人でプロジェクトを進めていました。
コンテンツと区に説明する場に関しては私が先頭に立って進めていき、契約や発信、取り決めなどの手続き関連はサステナビリティ担当者に対応いただきました。
コンテンツに関しては2021年まで私だけで進めていたのですが、その年の下期に新卒エンジニア1名に教育も兼ねて、メンバーに加わっていただきました。
区やKidsVALLEYや学校との関わりにおいてはこれまで通り私が担当し、彼には主にエンジニア業務で活躍してもらっています。
私から作業依頼を出して実務として稼働してもらいながらも、OJT(On the Job Training)として業務のフォローをしています。
主体性を持って取り組めるように、業務の意味やその背景について詳しく共感できる環境を作っています。
OJTとして気をつけている点として、経験豊富な人とそうではない人によって視野の幅がありますので、実際に何かやってみてもらってから足りないところを論理的に説明するようにしています。
「こういう考え方をしないとたどり着かないよね」と、やり方の説明をして学習してもらっています。
本人はもともとゲーム制作に興味がありましたが、本プロジェクトの意義や得られるものを理解するようになってからは教育分野に夢中で取り組んでおり、今は「ここで成果をあげたい」と発言してくれています。
―「学校教育⽀援プロジェクト」を進めるにあたり、MIXIだからこそ提供できたバリューはありますか。
田那辺さん:取り組み自体、リアルな現場での指導を大切にしていますので、先生や生徒さんとのコミュニケーションを大事にしています。
教育現場のなかでも新しい価値や面白さを伝えるという部分では、MIXIのパーパスである「豊かなコミュニケーションを広げ、世界を幸せな驚きで包む。」が根底にあると思っています。
加えて、ものづくりに携わるエンジニアだからこそ、そこに想像を超えるようなコンテンツを発明し、新しい価値を提供できるように心がけています。
MIXIならではの視点で授業を支援し、生徒さんにとってユニークで有意義な学びの場にしていきたいと思っています。
STEAM教育で活躍する「⽥那辺 輝」に聞く、常に先駆者でありつづける秘訣とは
―⽥那辺様ご自身のお話に移ります。現在のキャリアにいたるまでの道筋について教えてください。
田那辺さん:元々中学生の時に兄が使っていたパソコンでプログラミングをやっていたので、プログラミング自体に抵抗はありませんでした。
最初に本屋さんなどで知識を得て、BASIC言語で信号機プログラムなどを作ったりしました。
高校卒業後、サウンドデザイナーになったのですが、きっかけは音楽が好きであったことや、ゲームのモチベーションや心を動かすようなゲーム音楽を作りたいという意思で取り組みました。
その後、所属する音楽制作会社の吸収合併をきっかけにゲーム開発会社に移籍し、サウンド制作以外にもゲームソフトウェア開発の進行管理や企画と、そのゲームのスクリプトのプログラミングを担当するなど、マルチに仕事をしていました。
企画やクライアントとの交渉などディレクターの仕事も経験しながら、同時にゲーム作りの研究やプログラミングにものめり込み、3本のNintendo DSゲームソフトの開発に関わる業務を行っていました。
そこからWebコンテンツ会社に転職した後、改めてエンジニアとして「ゲームを作りたい」という思いを実現させるために準備をして老舗のゲーム会社に転職しました。
最初の業務では当時の携帯電話ゲームの主戦場であるガラケーのソーシャルゲーム開発に取り組み、モバイル部署立ち上げという状態から3ヵ月でリリースを達成しました。
その時に自分のスキルと経験値が一気に上がったと感じています。様々な仕事を通して広い視野が獲得できました。
一方で、正しく行動できないことでうまく仕事が進まない様子を見ることもありました。ですので私が推進できる仕事では積極的に発言し、すぐ行動することを意識しています。
転職を含めキャリアを積むことで得られたスキル・経験が、今に繋がっていると実感しており、振り返ってみても満足しています。
―職種を問わず幅広い経験を積まれたのですね。MIXIに入社し、「学校教育支援プロジェクト」に参加された背景について教えてください。
田那辺さん:まずMIXIの第一印象として、創業20年(当時)近いMIXIは歴史がありながらもベンチャー魂が残っていると感じました。
今まで培ってきたスキルや経験を発揮したいという思いがあり、MIXIなら仕事を任せてもらえて活躍できる可能性が見えたんです。
最初はコンシューマーゲーム機でのゲーム開発を半年ほど担当し、同時に小中学生にどのようなコンテンツが求められているのか、親が何を与えたいのかについて分析していました。
私自身が親であることからも「知育」が一番良い方法だと思い、勉強にもなるゲームが面白ければ子どもたちも楽しんで学べると考え、知育で良いサービスかコンテンツを作りたいと思っていました。
そして当時のマネージャーに相談したところ、ちょうど渋谷区から教育支援のお話があることを知り、私がプロジェクトに参加させていただくことになったんです。
学校では生徒さん用にパソコンがあっても先生が教えることができないという課題があり、解決の手段としてのコンテンツ作成や、ソフトウェアを発明する可能性に非常に興味を持ちました。
最初のプログラミング学習ソフトウェアを作ったのは、2019年6月にKids VALLEYが発足され、同年8月の学習イベントの開催が決定したときで、学校での授業支援の提案とそのテストをするためでした。
3ヶ月で完成させ、イベントのメインコンテンツとして実際に使ってみて、その後調整をしつつ、同年から中学校の放課後学習講座の中で使っていきました。
そのほか、2021年からは技術科でプログラミング教育が強化されたことに伴い、学生のみなさんが学習しやすいようにオリジナルのPython学習ソフトを作りました。
それは現在では技術科での授業だけでなく、部活動支援指導でも使っています。
また最近では、生徒さん主体で行う「PBL(プロジェクトベースドラーニング)」という形式の授業があり、そこで使うコンテンツとして都市開発シミュレーションを作りました。
街を実際に作ってその中の課題を解決するのですが、資源が減る・お金が減る・CO2が増える・電気がなくなるといった現実世界でも共通する問題を体験できます。
これは企画と制作を3か月ほどの期間で行い、完成の翌月には実際に授業で使用しました。
―本プロジェクトを通して感じるやりがいや、学びと楽しさの両立が大切な「教育×IT」に携わるうえで心がけていることはありますか。
田那辺さん:いくつもコンテンツを作って学校と教育委員会に見ていただき、 私たちが目指すことに大きな関心や期待を寄せていただけることに感謝しています。
そして直接生徒さんの反応を見ることができるため、もっと喜んでもらいたいという気持ちがモチベーションであり、1番のやりがいです。
授業では、最初からテキストの端から端まで細かく説明すると生徒さんは眠くなってしまうので、そうならないようにゲーミフィケーションを取り入れています。
楽しさの中に学びも得られるように要素を上手く紡いでいくことで、生徒さんたちが自ら意欲をもって進められる状況を作り、そのタイミングでテキストの内容について触れると理解も追いつくようになります。
実際に生徒さんたちが手を動かしたものなのでイメージもつきやすく、どのような仕組みになっているのかも理解できるので、うまくいくと生徒さんのモチベーションが上がっていくのが伝わってくるのです。
このように学習意欲に配慮した授業を取り入れられるのは、サービスやゲームの開発を行っている私たちとの企業連携”ならでは”ですので、楽しんで学んでいただく機会を提供するのが私たちの役目だと思っています。
⽥那辺さんが手掛ける「学校教育⽀援プロジェクト」が目指す、誰もがスキルを身につけた未来とは
―「学校教育⽀援プロジェクト」の今後の目標や、挑戦したい取り組みについて教えてください。
田那辺さん:プロジェクトを継続させるということは、重要な課題の一つとして目指しています。
授業を1回やるだけでは教育にならないので、毎年同じ、もしくはそれ以上の質の授業を継続して提供しなければいけません。
それだけでなく、新しい発明や新しい軸をもって学校教育の相乗効果を生みたいと思っています。
決まったことをずっとやるだけだとMIXIが介入する必要はないので、より有意義な活動をしてさらに良いものを届けられればと考えています。
もっと学びになるように、ユニークで有意義な授業を増やしていきたいです。
また、技術科で教えている生徒さん全員に「わかった!」と言ってもらえて身についていく様子は大変有意義ですし、将来エンジニアにならなくても皆が基本的な能力としてテクノロジーやプログラミングの知識を持っている状態になってほしいと思っています。
プロジェクトを通して教えたスキルは将来の仕事で使わない人もいると思いますが、「スキルを使おうと思えばすぐ使える人たち」で溢れる未来になると嬉しいです。
―「学校教育⽀援プロジェクト」を通し、⽥那辺さんが実現させたい「理想の姿」はありますか。
田那辺さん:自分自身、現時点でどこかに到達したとは思っていないのですが、もっと良いコンテンツを生み出し続けたいとは思っています。
学校教育支援プロジェクトを長年続けることによって自分が教えてきた生徒さんが増えていますし、将来会社のエースになって活躍したと知れれば嬉しいですね。
そんな生徒さんの姿に出会えるように今のプロジェクトに取り組み続けたいです。
―最後に、「STEAM教育」に興味がある方や、本プロジェクトに関心をお持ちの方に向けたメッセージをお願いいたします。
田那辺さん:まずSTEAM教育に関係なく言えることですが、私自身現状ある程度自由に活動できているのは、過去のキャリアを通して多角的な視点を養えたからだと思っています。
様々なキャリアの中で経験したことが後々繋がり、広い視野を持って臨むことができました。
今後活躍していきたい方へのメッセージとしては、1つ1つ本気で取り組んで色々なことに挑戦することに尽きると思います。
STEAM教育に関心が高いエンジニア志望の方で、教育を通して何かやりたいことがある人、自分は教育をこのように支えたいなどの考えを持っている人は、MIXIで私と一緒に活動していただけると嬉しいですね。
このほかにも、MIXIは多岐にわたって事業を展開しており、さまざまな領域にチャレンジできる環境ですので、挑戦したいと思っている方をお待ちしています。
株式会社MIXIでは一緒にチャレンジする仲間を募集しています!
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