産休の法律を徹底解説!産休の期間からその期間の給料まで。これを押さえておけばOK!
女性にとって、妊娠・出産は大きなライフイベントのひとつ。
働く女性が妊娠した際に、企業には「産休」を取得させる義務があります。
しかし、法律による取り決めと、企業が定めている就業規則とで、効力や内容はさまざまです。
ここでは、国が定めている「産休」に関する法律をもとに、産休期間や、産休中の給料について解説していきます。
目次
産休とは?
産休とは産前産後休業や産前産後休暇のことを意味します。妊娠中の女性労働者のみに申出・取得する権利があります。
子供が産まれる前の休業が産前休業、産まれた後の休業が産後休業といいます。
この権利に条件はなく、現在働いており妊娠中の女性であれば正社員・契約社員・派遣社員・アルバイトなどの立場に関係なく取得が可能です。
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国が定める「産休」の期間は?
産休は労働基準法で定められている法律
産休に関する法律は、労働基準法第65条で定められています。
条文は以下のとおりです。
※条文中の使用者は雇用主のことを、多胎妊娠は双子以上の妊娠のことを指しています。
つまり、ひと口に「産休」と言っても、「産前休暇」と「産後休暇」でそれぞれ休暇期間が定められているのです。
産前休暇は6週間
産前休暇は出産予定日から6週間前(42日前)から取得することができます。
公務員の場合は、8週間前(56日前)と、やや長くなります。
実際の出産日が予定日とは異なった場合でも、出産当日までが産前休暇として扱われます。
ただし、産前休暇は妊娠している本人が雇用先の企業に申請することで取得可能なものです。
申請の仕方は企業ごとに規定されているので、そこは就業規則に沿うことになります。
申請に際しては、勤め先の取り決めを確認しておく必要があります。
産後休暇は8週間
産後休暇は、出産日の翌日から数えて8週間(56日後)です。
産前休暇が申請制だったのに対して、産後休暇は請求の有無にかかわらず最低6週間は休む義務があります。
最低6週間としたのは、労働基準法第65条第2項において、本人の就労希望があり、さらに医師による許可が下りた場合は、就労することができるためです。
しかし、出産後の女性の身体は特にデリケートなもの。無理をせず、ゆっくりと身体を休めることを第一に考えてほしいところです。
産休において、企業に禁止されていること
「妊娠したことで事業主から解雇された」「自主退職するように促された」「派遣の契約期間が残っていたのに切られた」などの扱いを受ける可能性も考えられます。 ですが、心配には及びません。女性が妊娠・出産することで不利益を被らないような法律が存在します。
法律で守られている権利
産休は、妊娠・出産後も復職して働きたい女性のための当然の権利です。
しかし、残念なことにその間に労働力を失うことを快く思わない企業があることも事実です。そういった企業は、産休取得者を不当に扱うこともしばしば。
そのような企業の対応を許すべくもなく、働く妊婦を守るための法律も定められています。
労働基準法65条において、企業側が、妊娠・出産・産休を取得したことを理由に、労働者を解雇することを禁止しています。
また妊娠している労働者を不当に扱うことも、法律で禁止されています。
もしも妊娠や出産・産休が原因と思われる職場での不当な扱いに疑問を感じたら、すぐに勤め先の人事・総務担当に相談するようにしましょう。
雇用機会均等法の存在を知っておこう
雇用機会均等法において、妊娠や出産したことが理由で解雇したり正社員からパートにしたり、賞与などを不当に減額したりといったことは禁止されています(雇用機会均等法第9条)。
- 時間外に就労しないという希望
- 軽易業務への転換希望
- 母性健康管理措置の要求など
産休期間中の給料は基本的になし
産休期間中は、原則として給料は出ません。
企業が福利厚生として祝い金を設定している場合もありますが、法律では、産休中の給料支給に関する取り決めはありません。企業が給料としてお金を支給することは稀です。
そもそも、給料は労働の対価として支払われるものなので、休暇期間中に給料が支給されることはないのと同じ考えです。
では、産休中の収入がゼロになるということ? と不安になる方もいらっしゃるでしょう。
ご安心ください。産休中に給料が支払われない無給状態を補填するため、いくつかの制度が設けられています。
健康保険の出産手当金
1.出産手当金の対象
健康保険に加入している労働者本人に支給されるのが、出産手当金です。
正社員・契約社員・パート・アルバイトなどの雇用形態を問わず、被保険者であるすべての労働者が支給対象となります。
そして、妊娠4カ月(85日)以降の出産であることです。
これには、4カ月を過ぎてからの早産、死産、流産、人工中絶となった場合も含まれます。
また、出産のために休業していることも、支給条件に含まれます。
上記の条件を満たしている場合に、出産手当金を受け取ることができます。
支給対象外となるケースも紹介しておきましょう。
国民健康保険に加入している人は、出産手当金の支給対象外となります。
つまり、健康保険に加入していないとこの手当金は受け取れないということです。
2.出産手当金の支給額
出産手当金は、以下のように算出されます。
支給開始日以前12カ月間の各標準報酬月額を平均した額÷30×2/3
目安としては、月収の3分の2程度と想定しておきましょう。
3.出産手当金の適用期間
出産手当金は、産前休暇期間(6週間)、産後休暇期間(8週間)までの、14週間(98日間)が適用期間となっています。
もし、出産が出産予定日より遅れてしまった場合でも、遅れた日数分も追加で支払われます。
4.出産手当金の手続き
出産手当金は、申請をすることで受給できるようになります。
申請は本人でも出来ますが、勤め先の企業が代行して行うことも出来ます。
雇用条件によって休暇のとり方が変わってくることも想定されますので、まずは会社の人事や総務担当者に相談することをおすすめします。
もし個人で申請する場合には、社会保険事務所が発行している申請書に、必要項目を記入のうえ提出する必要があります。
なお、出産手当金には申請期限があり、産休開始の翌日から2年以内となっているので注意が必要です。
妊娠・出産費用に出産育児一時金
出産手当金は、産休期間の生活費に補填されることを目的としたものですが、妊娠・出産時の医療費、入院費を補助するための保険制度もあります。
それが出産育児一時金です。
1.出産育児一時金の対象
出産育児一時金は、妊娠している本人が働いていて、かつ健康保険や国民健康保険に加入している場合に受け取ることができます。
2.出産育児一時金で受け取れるのは42万円
妊娠4カ月以上で出産した場合、子ども1人につき42万円を受け取ることができます。
1人につきということは、双子の場合はその2倍の84万円となります。
申請の際には出産した子どもの人数分の申請用紙が必要になることもあるので、注意が必要です。
3.出産育児一時金の手続き
基本的には、妊娠している本人の勤め先の健康保険に申請することになります。
もし、妊娠している人が夫の健康保険の扶養となっている場合、夫の勤め先に確認しておいたほうがよいでしょう。
産休中は社会保険料が免除される
産休中に給料が支払われないとなると、毎月の保険料を給料から差し引きされていた場合、
保険料の支払いはどうなるのでしょう?
実は、社会保険料(健康保険、厚生年金)は申請することにより免除される制度があるのです。
無給のママにとっては助かる制度ですね。
この制度は給料が有給でも無給でも適用されるものです。
つまり、産休中に給料や賞与が支給されていても、社会保険料の免除対象となります。
この制度の申請は産休期間中に限ります。
また、申請は勤務先から年金事務所へ行うものです。
業務に慣れている人事・総務担当者であれば当然のように対応してくれると思いますが、
漏れのないように、ご自身でも制度内容を把握しておくとよいでしょう。
産前産後休業と育児休業の違い
産休と育休は混同されがちですが、両者は別物です。 育休は「勤務期間が1年以上」「子供が1歳の誕生日の前日までに職場復帰して引き続き勤務する」などの条件付きでもらえる休業です。 雇用保険に加入している方が育児休業した場合、休業をスタートした時点の賃金の50%相当額が給付されます。 育休終了予定日は、出産した子供の誕生日の前日です。 ただし、子供が1歳になっても保育園へ入園できないなどの理由がある場合は育休を延長できます。
中小零細企業の場合は育休取得ができない場合あり
中小零細企業の場合、労使協定を締結していれば雇用期間が1年未満の労働者の育休取得を取扱い適用外にできます。 そのため、勤続年数が1年未満の女性は注意が必要でしょう。 なお、労使協定を締結していなければ育休を拒否されることはありません。
法律を理解して、産休の不安を払拭する
- 「産休」は国の法律で定められている
- 産休中は基本的に給料はでない
- 産休のための国からの補助制度もある
妊娠・出産は女性にとって身体はもちろんのこと、医療費や入院費、産休中の生活費など出費の面でも負担が大きいものです。
そんな負担を少しでも軽くするため、働く女性を支援するための法律が定められているのです。
今は、男女別け隔てなく職場で活躍する時代。
そういった時代背景を反映して、労働基準法をはじめ、労働に関する法律も時代にあわせて改定されています。
法律を理解することは生きることにおいて武器になります。
知らないままで権利を放棄することは、非常にもったいないことです。
産休については、女性の社会進出に伴い、今後も改定されることが予想されます。
せっかく持っている権利を放棄しないよう、日頃もしっかりとアンテナを張っておきましょう。
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