モビリティサービスの事例を紹介!国内外の現状や課題は?MaaS企業の転職希望者は次世代MaaSも確認
「Mobility as a Service(MaaS)」は2010年代から注目されています。MaaSはモビリティ分野だけの話ではなく、新たなライフスタイルを作る重要な動きとあって、トヨタをはじめさまざまな企業や国がMaaSへの動きを見せています。国内外の現状や課題、次世代MaaSについても紹介します。
目次
モビリティサービスの3本柱
モビリティサービスは交通渋滞・事故の緩和や減少・駐車場代やマイカーの維持費の削減が期待できるサービスです。
シニア世代の移動手段を充実させることも可能であり、免許返納後の足を確保すると共に高齢者の運転事故を減らす未来を切り開きます。
個人のニーズに合うシームレスな移動を実現するモビリティサービスの基盤となる3つの柱を解説します。
カーシェア
車を使いたい人と車両をマッチングさせるのがカーシェアサービスです。
車を提供するのは事業者もしくは個人のオーナーです。
オーナーの自家用車をシェアするCtoCはライドシェアと呼ばれ、相乗りで目的地まで向かいます。
国内でもライドシェアを利用できるサービスが普及してきています。
中国やインドなどのアジア、欧米では当たり前のCtoCが日本に定着するのはそう遠くありません。
オンデマンド交通
オンデマンド交通は要求があったときだけ車やタクシーを走らせるというモビリティサービスです。
電話・インターネット・アプリから配車予約を行い目的地へ送ってもらいます。
同方向へ向かう複数の利用者が同乗することもあり、いわば時刻表の無いバスのようなものです。
交通機関がない地域や公共交通機関の維持が負担になっている地域などに見られるモビリティサービスです。
マルチモーダルサービス
移動に必要なすべてのアクションを統合し、それらをアプリ上でまかなえるのがマルチモーダルサービスです。
電車・タクシー・バスなどの公共交通機関を利用した目的地までの最適ルートの検索ができます。
それだけでなく料金計算・チケット予約・決済まで可能です。
乗り換え手順の検索や選択・窓口でのチケット購入などの手間を省きシームレスで効率的な移動手段を提供します。
カーシェアの事例や取り組み
オリックスやタイムズ、トヨタなどが行うカーシェアサービスの事例を紹介します。
有人の店舗に足を運ぶ必要がなく、ICカード1枚で好きなときにレンタルできるのがレンタカーとの大きな違いです。
このサービスではアプリを通してステーションの検索・予約・延長などを一括管理できます。
長時間の利用料金が業界最安クラスで、日帰り旅行や長距離ドライブといったシーンに便利です。
空いている自宅の駐車場や保有する土地にカーシェアサービスを導入する取り組みもあります。
マイカーを手放そうと考えている人やマイカーを持たない人、土地を活用して賃料を収入として得たい人ともタッグを組んでいます。
ステーションを幅広い角度から確保することで事業者にもメリットのある取り組みです。
Times CAR SHARE
街のコインパーキングでもよく目にするタイムズのカーシェアサービスです。
元のステーションに車を返却するラウンドクリップ型を基本としています。
さらに追加料金を支払うことでいわゆる乗り捨てのワンウェイ型を利用できるカーシェアサービスも提供しています。
通勤の片道だけ車を使いたい人や荷物の多い買い物に利用したい人など、スポット的な利用に応えるモビリティサービスです。
Anyca
国内でCtoCを実現しているのがDeNAとSOMPOホールディングスが提供するAnyca(エニカ)というカーシェアサービスです。
2社は「株式会社 DeNA SOMPO Mobility」という合併会社を設立しています。
マイカーを使わない時間に、車を使いたい人に自家用車をシェアする個人間のサービスです。
オーナーは収益を得た分だけ車の維持費や生活費の負担を軽減できるメリットがあります。
車を維持したい人やマイカーを持たずして快適に暮らしたい人の双方を満足させるマッチングサービスです。
GO2GO
GO2GOは中古車ガリバーを運営するIDOMの子会社、株式会社IDOM CaaS Technologyによる個人間のカーシェアサービスです。
あいおいニッセイ同和損害保険株式会社と共同で運営しています。
ドライバーとオーナーのマッチングはアプリから可能です。
ただし東京・千葉・神奈川・埼玉・大阪と利用エリアが限定されています。
それでも、マイカーを持たない人の増加で影響を受けるモビリティ分野の救世主となる数少ない国内のCtoCカーシェアです。
課題の残るワンウェイ型
ワンウェイ型のカーシェアサービスは海外では広く実現しているものの国内ではごくわずかです。
2014年と2015年にトヨタや日産などが実証実験を行ったことがありましたが実現化にはつながっていません。
自動車の保管場所に関する法律があり、保管場所は使用する本距離から2kmを超えてはならないと決められています。
そのため駐車スペースを確保できる事業者しかサービスを拡大することができませんでした。
さらに、ワンウェイ型は乗り捨てたいステーションが満車の場合は返却できないという問題が出るなど、まだまだ課題が残ります。
オンデマンド交通の事例や取り組み
人口の大幅な減少や高齢化により公共交通機関の維持が難しい地域に効果的な兆しを見せているのがオンデマンド交通です。
移動が不便な地域でも、自宅から病院・自宅から職場へドアtoドアの移動を可能にします。
MONET
MONETはトヨタとソフトバンクによる共同会社、MONET Technologiesによるオンデマンド交通の取り組みです。
効率的な稼働を望む公共交通事業者とマイカーが無くても快適な移動手段を求める利用者をつなぐプラットフォームを構築しました。
これにより移動が不便な地域を中心にサポートしています。
高齢者の通院や郊外に暮らすビジネスマンの通勤だけでなく、点在する観光地へのアクセスなどにも利用できます。
単なる移動だけでなく幅広い分野と連結して新たなモビリティサービスを提供しているのです。
利用者・ドライバー・データ管理者それぞれにアプリを用意し、円滑なモビリティサービスを提供しています。
コンビニクル
道路交通システムの開発や、オンデマンドバス交通システムの開発および運営などを行うオンデマンド交通サービスです。
バスとタクシーの中間にあたる利便性を維持し、その他の交通機関と連携しながら地域活性化に取り組んでいます。
移動の利便性が高まったことで高齢者が活発に活動するようになりました。
商店街や温泉施設の売上が上がった、人と人とのコミュニティが構築されたなどその効果は確かなものです。
埼玉で13地域・千葉で5地域・東京1地域・神奈川2地域など全国60カ所で取り組みを拡大しています。
孝行デマンドバス
システム開発のコガソフトウェアが開発したオンデマンド交通サービスです。
クライアントが取り入れやすいクラウド型SaaSを使用するため地域に限らず導入が可能です。
過疎化の進む町にデマンド交通を取り入れ、交通が不便だからという理由による都市部への人口流出対策になり得ます。
高齢者の移動手段の確保や長距離通学を行う子供の移動手段など、さまざまな運行目的を持つサービスです。
AIROS
AIROS(エアロス)は低価格のプライベートフライトでシームレスな移動を叶える空のオンデマンド交通です。
ヘリポートの検索・移動時間・料金をアプリで割り出します。
提携する全国の航空会社と連携し、ヘリコプターの空き時間を有効活用することでヘリの管理など事業者側のコスト負担をカバーしています。
デートや観光・家族旅行など、普段の移動に空を活用することができます。
2020年代に実現を目指す空飛ぶ車の前身ともいえる次世代につながるサービスです。
マルチモーダルサービスの事例や取り組み
日常の移動はもちろんのこと、慣れない観光地でのスムーズな移動にも便利なサービスがマルチモーダルサービスです。
中には飲食店のお得な特典を受けられるものなどもあります。
普及が進めばシームレスな移動の実現だけでなく、観光、飲食などさまざまな業界の活性化につながります。
my route
トヨタと西日本鉄道によるマルチモーダルアプリがmy routeです。
ルートの検索・配車や予約・決済といったスマートな移動をサポートしてくれます。
さらに、観光スポット・イベント・グルメ情報などガイドブックの要素も加わった新たなモビリティサービスです。
はじめてその地に訪れる人でも、移動や検索に無駄な時間を省くことなく観光や旅行を楽しむことができます。
Ringo Pass
JR東日本が開発するマルチモーダルアプリがRingo Passです。
タクシーの配車サービスとシェアサイクルサービスをシームレスに利用できるサービスです。
JR東日本が提供するSuicaとクレジットカードを登録しておけば決済をスムーズに行えます。
タクシーへの乗であれば支払いの手間がなくなり、空車のタクシーや自転車を探す手間や無駄な時間ロスもなくせます。
EMot
MaaS Japanのデータベースを利用したMobilityアプリがEMot(エモット)です。
目的地までの最適な移動手段を提供してくれます。
さらに飲食店やショッピングのお得なチケットや、観光パスなども組み込んだサービスを提供しています。
小田急電鉄によるマルチモーダルアプリで、静岡西部エリアではすでにサービスを開始しました。
東京・神奈川では実証実験中です。(2020年11月執筆時点)
【海外】MaaSの現状・課題
海外では日本よりもMaaSが生活に定着しています。
国連は2030年までにすべての人々が安全で快適に暮らせる移動手段や緑あふれる公共スペースを確保するという目標を定めました。
この目標への良い見本となっているのがフィンランドのWhimです。
Whimはいくつかの月額プランから使いたい交通機関や利用頻度などを考慮して個々で選択できます。
100以上の企業や組織が連結して移動や料金決済に必要なデータベースを作り上げています。
タクシーやバス会社だけでなく大学や民間企業まで参入し、2016年には点在していたデータを統合しているのです。
ハイグレードなプランだと月499ユーロ(約6万弱)と高く感じますが、車の維持費やローンも同じくらいかかります。
このサービスの普及により公共交通の利用率が上がり、自家用車は大幅に減少しました。
交通量が減れば人の歩行スペースが広がり、子供の遊ぶ場所や人々のコミュニティスペースも必然的に広がります。
【国内】MaaSの現状・課題
日本ではmy routeやEMotなどMaaS実現に向けて着々とアプリがリリースされています。
しかし国内ではフィンランドのようにシームレスな移動に必要なあらゆるデータの統合がなされていないのが現状です。
車の走行データは自動車会社、高速道路の交通状況は高速道路会社など、それぞれのデータを各分野が管轄するのに留まっています。
ただし今後、国土交通省は公共交通データのオープン化を実証実験する予定です。
同時にトヨタ・JR東日本・小田急電鉄・KDDIなどの民間企業間でデータの連携を行う動きが進んでいます。
スピード感のあるMaaSの実現には大きな組織でオープンデータを整備することが課題となるでしょう。
注目の次世代MaaS
次世代MaaSは、移動が容易ではない人々にもシームレスな移動を提供するサービスが存在感を放ちます。
目的地までの移動にモビリティサービスをプラスすることですべての人々が快適なライフスタイルを送れる時代はそう遠くないでしょう。
グリーンスローモビリティ
観光時の案内や移動に不便を感じる高齢者の足となることが期待されているのがグリーンスローモビリティです。
これはCo2の排出が少ない小型の電気自動車を活用した新たな移動手段です。
時速20km未満の速度制限付きのため、高齢者による交通事故の削減にも効果的です。
さらに乗り合いバスやタクシー事業としても活用でき、道路の広さなどからバスが走れない地域でのオンデマンド交通に代わります。
WILL
すべての人のシームレスな移動のためには、WILLのような短距離を走るMobilityも必要です。
WILLは車椅子や杖を使った歩行困難者向けに開発が進む車椅子型モビリティです。
空港・ショッピングモール・美術館など、あらゆる施設で移動をサポートします。
衝突回避システムや目的地への自動運転機能などを搭載し、安心・安全の移動を提供しています。
歩行困難で外出を控えていた人々にもシームレスな移動を提供できるのです。
e-Palette
MaaSの普及によりマイカーを持たない人が増え、モビリティ業界は100年に一度の革命といわれています。
その中でトヨタはいち早くモビリティ・カンパニーへの変革に動き続けています。
トヨタが2018年1月に発表したMaaS専用のEV車e-Paletteは今後人々の新たな移動手段となる自動運転自動車です。
最後に
モビリティサービスは環境問題や交通問題などの解決に必ず役立つものです。
交通弱者・障碍者・高齢者などあらゆる人が暮らしやすいまちづくりを行うための重要なサービスとなります。
転職する際、各企業がどのようなサービスを展開しているのかは転職先を決める上で重要です。
先進的なモビリティサービスに取り組む企業を転職先の選択肢として考えてみてはいかがでしょうか。
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