退職時の国民年金の免除制度を紹介!申請時の注意や免除分の追納方法は?転職中はどうするべきか解説します
現在の職場を退職するときに、年金の手続きはどのようにすればよいでしょうか?次の職場が既に決まっている場合は別ですが、いったん職場を辞めた後でじっくりと職探しを始めようと考えている場合には国民年金に加入する必要があり、保険料も発生します。決して安くはない保険料、実は免除制度があるのです。安心して転職活動をするために活用したい国民年金の免除制度について幅広く解説します。
目次
公的年金被保険者の区分と保険料を支払う仕組み
公的年金(国民年金と厚生年金)の被保険者には3つの区分があります。
「国民皆保険」の原則のもとで、日本に住んでいる20歳から60歳までの人はすべて、次のどれかの区分に属しています。
・第1号被保険者:自営業者など国民年金だけに加入している人
・第2号被保険者:企業に勤めている人や公務員で、国民年金に加えて厚生年金に加入している人
・第3号被保険者:第2号被保険者に扶養されている配偶者で年間収入が130万円未満の人
第1号被保険者は自分で保険料を納入しなければなりませんが、第2号被保険者の場合は毎月の給料から保険料が自動的に引き落とされます。
第3号被保険者の場合は、配偶者である第2号被保険者が属する厚生年金がまとめて保険料を負担してくれるので、自分で支払う必要はありません。
転職の際の年金の手続き
転職をするということは、会社員→自営、会社員→失業→会社員などというように、立場がいろいろと変化するでしょう。
そのパターンは下記に示すとおり、いくつかに分かれます。立場が変化することによって、公的年金の区分も変化します。
一番多いのが第2号被保険者の立場から第1号被保険者になるケースです。
次の勤め先が決まっていて新しい勤め先にすぐ勤める場合
現在の職場を退職してすぐ新しい職場に転職するときは、新しい職場の厚生年金に加入します。
現在の職場で退職のときにもらった年金手帳を、新しい職場に提出して手続きをしてもらってください。
次の勤め先が決まっていて退職後しばらく期間をおいてから新しい職場に勤める場合
現在の職場の退職日と次の職場への入社日にしばらく期間がある場合には、退職後いったん国民年金に加入する必要があります。
入社日が退職日の翌月以降の場合が該当ケースです。
その後、新しい職場へ入社する際に改めてその職場の厚生年金へ加入します。
ただし退職日が月末で新しい職場に翌月中に入社する場合は、いったん国民年金に切り替える必要はありません。
この場合のみ、年金手帳を新しい職場にそのまま提出してください。
次の勤め先が決まっていない場合・退職後個人事業主として独立する場合
職場を退職したら、国民年金へ加入する手続きを取ってください。
第3号被保険者である配偶者がいる場合、その人を第1号被保険者にする手続きも必要です。
退職と同時に配偶者の扶養になる場合
「次の仕事はパートで十分」と割り切って配偶者の扶養に入るケースもあるでしょう。
配偶者の扶養に入って第3号被保険者になる場合の手続きは、配偶者の勤務先で行ってもらいます。
自分自身で何か手続きをする必要はありません。
国民年金への加入手続き
大半の転職の場合では、退職後いったん国民年金に切り替える場合にのみ手続きが必要になります。
(第2号被保険者→第1号被保険者、あるいは第2号被保険者→第1号被保険者→第2号被保険者)
加入するタイミング
現在の勤め先を退職して第1号被保険者として国民年金へ加入する場合、手続きは退職日の翌日から14日以内に行う必要があります。
加入手続きを行う場所
国民年金への加入手続きは、現在の住居がある市区町村の役所(あるいは役場)の国民年金担当窓口で行います。
手続きに必要なもの
手続きにはマイナンバーカード、基礎年金番号がわかるもの(年金手帳など)、退職の事実とその日付を確認できる書類、そして印鑑が必要です。
第3号被保険者も要注意
第3号被保険者だった配偶者がいる場合には、配偶者を国民年金の第1号被保険者にする手続きも忘れてはいけません。
手続きを忘れると配偶者は年金未納とみなされてしまいます。
第3号被保険者と第1号被保険者の切り替えの手続きを申請者本人と同時に行うときの注意点です。
手続きの際には配偶者(第3号被保険者)の年金手帳と委任状も必ず忘れないようにしましょう。
国民年金の保険料が払えない場合
毎月の給料から天引きされる厚生年金と異なって、国民年金の場合は手元のお金をやりくりして毎月支払いをしなければなりません。
しかし現在の職場を辞めてから新しい職場をゆっくりと探す予定の場合には、生活するのに不十分な収入しか見込めないことも多いです。
このような場合失業保険や貯金を取り崩したお金で生活をすることになるのが普通です。
国民年金の保険料は、令和2年度の場合、月額16,450円もかかります。1円のお金も無駄にできません。国民年金の支払いも、待ってもらいたいくらいです。
国民年金保険料の免除
国民年金の保険料を支払わなければならない40年の間に、さまざまな事情で支払いが困難になる期間があるかもしれません。
国民年金保険料には払い込みの猶予や全額免除、一部免除(4分の1免除、半額免除、4分の3免除)といった制度が用意されています。
転職の際に関係するのは、このうち払い込みの全額免除と一部免除です。
国民年金保険料の免除は、申請者本人とその配偶者と世帯主の前年の所得の合計が一定の金額より少ない場合に申請することが可能です。
転職のための失業ももちろん保険料免除の申請理由に該当します。そして失業の場合は特に「特例免除」という制度の対象です。
国民年金保険料の特例免除とは、通常(申請者本人と申請者の配偶者、そしてその世帯の世帯主の収入を合計して審査を行う)と異なります。
申請者本人の前年の収入をゼロとみなし、申請者の配偶者と世帯主の収入の合計だけで審査を行うものです。
国民年金保険料の免除手続きのメリット
それでは、国民年金の保険料の免除手続きをわざわざ行うメリットは、何かあるのでしょうか?
保険料未納の状態のままでしばらく放っておくのと、短い期間であっても保険料免除の手続きをしておくことの間には、大きな違いがあるのです。
保険料の一部を納付済みとみなしてくれる
保険料を未払いのまま(未納)にしておくと、その期間は年金を納めた期間として当然カウントされません。
しかし、保険料の免除手続きを済ませておくと、将来の年金支給の際にその年の保険料を全額納付した場合の年金額の2分の1が支給されます。
また4分の3免除の期間は本来の年金額の8分の5、半額免除の期間は8分の6、4分の1免除の期間は8分の7が支給されます。
ただし一部免除の場合には、免除されなかった納付額を支払っておかないと、保険料未納と同じ扱いになるので注意してください。
4分の3免除の場合は4分の1、半額免除の場合は半額、4分の1免除の場合は保険料の4分の3にあたります。
障害年金や遺族年金の受給資格
保険料の免除手続きをしておくと、求職中にけがや病気で働けない場合や死亡した場合に障害年金や遺族年金が支給されます。
しかし保険料を未払いのままにしておくと、このような不測の事態が起こったときにも障害年金や遺族年金が支給されない可能性が生じます。
追納制度
保険料の未払い分をまとめて支払うことにしても、最長で2年間しかさかのぼることができません。
2年以上前から未払いのままになっている保険料を改めて支払うことは不可能な制度になっています。
そのため最終的に受け取ることができる老齢基礎年金の年金額が、その分少なくなってしまいます。
しかし、保険料免除の手続きを済ませておくと、10年前までさかのぼって保険料の追納ができるので、ずっと有利です。
なお、追納の際は、次の点に注意してください。
・追納されたお金は、原則として一番古い免除期間の支払いから順番に使われて行きます。
・免除をはじめて受けた年から数えて3年目以降になると、支払う金額には一定の加算額が加わります。
お金を支払う余裕ができたら、できるだけ早く未納分の支払いを済ませておくことをおすすめします。
企業年金の存在も確認しておく
企業によっては、厚生年金とは別に企業年金を運用している場合があります。
「確定給付企業年金」「厚生年金基金」「確定拠出年金(企業型)」と呼ばれるものです。
現在の勤め先で企業年金が運用されていたら、これらに関する手続きも忘れないようにしましょう。
このうち「確定給付企業年金」「厚生年金基金」の場合は10年以上勤務していると、将来その企業から年金が支払われます。
勤務期間が10年より短いと納付金は企業年金連合会に移管されて、将来は連合会から年金が支払われます。
ただし勤務期間が短すぎる場合には、どこからも年金が支払われないこともあります。退職前に確認しておくと、安心です。
確定拠出年金(企業型)に関しては、退職後原則6カ月以内に移行手続きが必要です。
新しい勤務先の企業でも確定拠出年金を運用している場合には、古い年金から引き継ぐ手続きを忘れないようにしましょう。
一方、転職先では確定拠出年金を運用していない場合、自分で「個人型確定拠出年金」に入る手続きを行う必要があります。
求職期間は国民年金の免除制度を上手に利用しよう
国民年金は、老後の安心のためだけの制度ではありません。
障害年金や遺族年金など万が一のときに身を守るための制度でもあるのです。
求職期間中であっても、お金が足りないから国民年金保険料の支払いをしないというわけにはいきません。
国民年金保険料の特例免除は、そのために用意されている制度です。
この制度を上手に利用して、お金が不足しがちな求職期間を上手に乗り切りましょう。
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