フルスタックエンジニアとは?必要なスキルと向いている人の特徴を解説
フルスタックエンジニアは、システム開発における多くの領域をカバーできる知識・スキルを持つITエンジニアです。技術力が必要なため、今後も需要は高まり続けるとされています。そこで今回は、フルスタックエンジニアに求められるスキルや向いている人の特徴を解説。仕事内容やフルスタックエンジニアになる方法をぜひ把握しておきましょう。
目次
フルスタックエンジニアとは?
フルスタックエンジニアとは一言で言うと「エンジニアのオールラウンダー」です。
Webシステムやアプリケーション開発では、要件定義から開発・運用・保守まで様々な分野を専門とするエンジニアたちが集まります。基本的にシステムエンジニア・サーバーエンジニア・データベースエンジニア・ネットワークエンジニアなどが分業で開発を行います。
しかし、分業で行うと時間的コストと人的コストが大きくなることがデメリットです。
1人で全ての開発業務を担えるフルスタックエンジニアがいれば、開発のスピードも上がり人件費も削減できます。
スタートアップ企業やベンチャー企業のように、できるだけコストを抑えたい企業にとってフルスタックエンジニアは貴重な人材なのです。
また、最近では単純な開発分野を人件費の安い海外にアウトソーシングするオフショア開発が盛んになっています。オフショア開発する一方で、高度な作業や運用・保守の分野については国内の優秀なエンジニアに任せる企業も多く存在します。
このような企業からも、高度で幅広い知識とエンジニアスキルを有しているフルスタックエンジニアは需要が高いのです。
ただし、開発における全てのスキルを身につけるには相当な時間と努力が必要で、1つの分野を極めることすら難しいでしょう。
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フルスタックエンジニアの定義
フルスタックエンジニアには明確な定義はありません。
一般的には以下の4つの領域をカバーできるマルチプレイヤー的エンジニアがフルスタックエンジニアと呼ばれています。
1.モバイルアプリ領域
2.ネットワーク・インフラ領域
3.フロントエンド領域
4.バックエンド領域
企業によっては「マルチエンジニア」と呼ばれる事もあります。
フルスタックエンジニアがいらないと言われる理由
一方で、「フルスタックエンジニアは必要ない」という議論が起こった事もあります。
その理由は、フルスタックエンジニアが興ったアメリカと日本での企業の体制の違いだとされています。
アメリカではスタートアップ企業が多く、起業時に専門性の高い人材を多数雇用するのではなく幅広いスキルを持った人材を少数雇用する方が効率的です。
そのためフルスタックエンジニアが重宝されるといった背景があります。
その点、日本では専門性の高い人材複数名でシステム開発を行う傾向があり、これは大企業であっても変わりません。
全体を把握するための管理職(プロジェクトマネージャーなど)もいます。
こう言った日本企業の特性が「フルスタックエンジニアは必要ない」と言われた背景にあります。
しかし近年では、フルスタックエンジニアのスキルの高さに貴重な人材として改めて注目が集まっているため、需要が高まっているのです。
マネジメントや採用の金銭的、時間的コストを考えても、フルスタックエンジニアはシステム開発現場の生産性向上の観点から存在意義があると再認識されています。
他エンジニアとの年収比較
エンジニアと言ってもその種類は様々です。
フルスタックエンジニアの年収は700~850万円程度と言われています。
他のエンジニアと比較した場合、その年収はどの程度なのでしょうか。
- システムアナリスト…約1,600万円
- UI/UXデザイナー…約1,000万円
- システムコンサルタント…約800~900万円
- フルスタックエンジニア…約700~850万円
- フロントエンドエンジニア…約600~700万円
- プロジェクトマネージャー…約500~600万円
- 社内システム企画・社内SE…約500万円
- サーバーエンジニア…約450万円
全エンジニアの平均年収が約540万円という点からも、フルスタックエンジニアの年収の高さが伺えます。
他の代表的なエンジニアと、およその年収の違いの参考にしてください。
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フルスタックエンジニアに必要な言語・フレームワークのスキル
複数のエンジニアスキルを有するフルスタックエンジニアですが、具体的にはどのようなプログラミング言語の知識やスキルが必要なのでしょうか?
フロントエンド開発の言語・スキル
Webサイトやアプリケーションの「実際にユーザーの目に触れる部分」を開発するフロントエンド開発のスキルが必要です。
フロントエンド開発によく使われる、以下のようなプログラミング言語やフレームワークを熟知しておかなければなりません。
・JavaScript
・JavaScriptのフレームワーク(jQuery・React.js・Vue.jsなど)
・HTML/CSS
・WordPressなどのCMS
バックエンド開発の言語・スキル
ユーザーの目に触れない裏側のシステムを開発するバックエンド開発のスキルも必要です。
バックエンド開発には、たとえばログイン機能や会員登録機能などのサーバ構築やデータベースの構築などが含まれます。
バックエンド開発に必要なプログラミング言語やスキルには以下のようなものがあります。
・Python
・Ruby
・PHP
・Java
・MySQL(データベース管理システム)
モバイルアプリケーション開発の言語・スキル
スマートフォンの普及により、モバイルアプリケーションを開発するITベンチャーが増えてきました。そこでフルスタックエンジニアにも必要になってくるのがモバイルアプリケーション開発のスキルです。
以下のようなプログラミング言語やフレームワークのスキルが必要になるでしょう。
・Swift(iOS)
・kotlin(Android)
・React Native(iOS/Android)
特に近年ではAndroidとiOS両方のOSに対応したアプリケーション開発ができるReact Nativeの需要が高まっています。
インフラ周りのスキル
フルスタックエンジニアにはネットワークやデータベース、サーバーなどインフラのスキルも必要です。
サーバーのセットアップや、アクセスを予想してどれくらいのスペックのサーバーが必要か設計したりしなければなりません。
最近ではAmazonが提供するAWSのようなクラウドサービスも登場しています。クラウドサービスにより、サーバー・ストレージ・データベース・ソフトウェアなどを自ら開発しなくても利用できるようになりました。
そのような背景もあり、フルスタックエンジニアにはニーズに合わせてAWSなどのクラウドサービスを選定するスキルも必要になります。
UI/UXに関するスキル
Webシステムの開発にはUI/UXが重要です。
UI/UXを簡単に説明すると、「ユーザーが快適にシステムを使えるようなユーザーインターフェースを整えるスキル」です。UI/UXを考慮しないと視認性や操作性が悪いシステムやWebサイトになってしまいます。
そのようなシステムやWebサイトは、利用されないだけでなくユーザーの滞在時間が短くなるデメリットがあります。
フルスタックエンジニアには徹底的にユーザー目線でシステム開発する能力も求められるのです。
プロジェクトマネージャーとしての能力
システム開発における多くの分野を担うフルスタックエンジニアですが、全て1人で作業するわけではありません。チームで仕事を進めるうえでのスケジュール管理や人員配置、チームミーティングによる意思決定などを任されることもあります。
フルスタックエンジニアには、このようなマネジメントスキルも必須になってくるでしょう。
フルスタックエンジニアに向いている人の特徴
フルスタックエンジニアに向いている人の特徴にはどんなものがあるのでしょうか?
勤勉である
フルスタックエンジニアとして活躍するには、1つの分野だけではなく2つ以上の分野のエンジニアスキルを極めなければなりません。
そのため、1つを極めたからといって満足するのではなく複数のエンジニアスキルを学び続けることができる勤勉な人が向いています。職人気質の人よりは「あれもこれも興味がある!」という好奇心旺盛な人が向いているでしょう。
良い意味で飽きっぽい人に適性があるといえます。
モノ作りが好きな人
フルスタックエンジニアはオールラウンダーなので、システム開発やアプリケーション開発の立ち上げから関わることも多い仕事です。
自分で新しいモノを作り出すことが好きで、地道にコツコツ作業することが好きな人はフルスタックエンジニアの適性があるといえるでしょう。
コミュニケーション能力の高い人
フルスタックエンジニアは1人で作業することばかりではなく、チームの指揮をとるプロジェクトマネージャーの仕事を担うこともあります。
チームメンバーをまとめあげるだけでなく、クライアントとの折衝の際にもコミュニケーション能力は求められます。
外向的で人と接することが好きな人がフルスタックエンジニアには向いているでしょう。
フルスタックエンジニアにおすすめの資格3選
フルスタックエンジニアとは幅広いエンジニアスキルを有した人材のことですので、特別な資格は必要ありません。
ただし、取得しておくと手当がついたり実務に生かせる資格がありますので厳選して紹介します。
ITストラテジスト試験
経済産業省主催の「情報処理技術者試験」の1つで国家資格になります。
合格率が10%台というIT資格の中でも最難関試験の1つですが、ITに関わる最高峰スキルでありIT技術と経営の両方のスキルが身につきます。
フルスタックエンジニアとして大きく活躍できる資格になりますので、すでにキャリアのある人は取得を検討してみてはいかがでしょうか?
システムアーキテクト試験
ITストラテジストと同じく国家資格「情報処理技術者試験」の1つで、ITストラテジスト以上に合格率の低い高難度の資格になります。
ITの専門知識と分析力が身につく資格で、「開発を指導する力」「ニーズに応じた設計力」を持った高度IT人材になることができるでしょう。
プロジェクトマネージャ試験
プロジェクトマネージャ試験も国家資格「情報処理技術者試験」の1つです。
システム開発の最高責任者としてのスキルを証明できるもので、フルスタックエンジニアとして活躍したいなら取得しておくと良いでしょう。
システム開発における最高レベルの知識は実務に大きく役立てることができます。
フルスタックエンジニアになるには?
フルスタックエンジニアになるための方法として以下のステップがあります。
フルスタックエンジニアになるためのロードマップ
①エンジニアの基礎経験を積む
下流工程のプログラマーがエンジニアのスタートとして一般的です。
プログラミングスキルやデータベース、ネットワークといったシステム開発の基礎を習得しながら、フロントエンドとバックエンドの両方の開発に携わります。
開発に必要なエディターや統合開発環境、バージョン管理やコミュニケーションなど各種ツールの使い方も身につけましょう。
②クラウドやOSのスキルを身につける
AmazonのAWSやMicrosoftのAzure、GoogleのGCPなどのクラウドサービスの知見は近年必須になって来ています。
Linuxの知識として基本的なコマンドは習得しましょう。
サーバー構築やシステム設計、運用管理、トラブル対応の経験は強みとなりますので積極的に学びたいポイントです。
③上流工程で経験を積む
システム開発のスタートとなる企画や要求仕様、基本設計などの工程で経験を積みましょう。
この時点ではIT技術だけでなくマネジメント能力やヒューマンスキルも備える事を意識してください。
これまでの工程でどのような職種の人と関わって来たか、仕事の流れだけでなく人脈が大きく役に立つ事もあります。
スタートアップ企業でプロジェクト開発の経験を積む
フルスタックエンジニアを目指すなら、まずは総従業員数が10名〜30名程度のスタートアップ企業やベンチャー企業に転職することです。
作業人数が少ないため、ITインフラの構築からプログラミング、運用まで一通りの経験を積むことができるからです。
また、慣れてくれば1人で開発業務の全てを担当することもあります。
開発エンジニアとしての全ての経験を積める環境なので、フルスタックエンジニアに必要なスキルを効率よく学ぶことができるでしょう。
IT業界のトレンドなど最新情報を収集・分析する
IT業界は進化と変化のスピードが速く、次々に新しいサービスやテクノロジーがリリースされます。
毎年のように新しいプログラミング言語やフレームワークが登場し、1年前は求人の条件だった言語が今はもう古いといわれたりします。
フルスタックエンジニアになるには、このような新しい技術や最新のトレンドなどの情報に常にアンテナを張っておかなければなりません。
そして、新しいスキルを習得しながらエンジニアとしての自己研鑽を怠らないことが必要です。
転職エージェントを活用する
フルスタックエンジニアは複数の開発業務を担えるエンジニアの呼称であって職種ではありません。
そのため、企業によってフルスタックエンジニアの定義や業務の範囲は異なります。自分が対応できる業務なのかどうか求人を吟味しなくてはならないのですが、自力で求人情報を見極めるのは難しいでしょう。
そこで、転職エージェントの力を活用することをおすすめします。理想の企業とマッチングしてくれるだけでなく、選考書類の書き方や面接対策までサポートしてくれるからです。
転職エージェントを活用すれば転職成功率は高くなるでしょう。
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フルスタックエンジニアを目指すための勉強方法
プログラミング言語を勉強する
まず何から始めたら良いか分からない場合はプログラミング言語の勉強から始めましょう。
フルスタックエンジニアは、開発手法やシステム構成のような基本的な分野は完璧に網羅しておく必要があります。
就職を目指す方も就職してから勉強を始める方も、学びやすい言語から勉強を始め、苦手をなくす事を目指してください。
一からアプリケーションを作り上げる
キャリアを積む事とあわせて効果的な方法としては、一からアプリケーションを作り上げてみる事です。
すでにエンジニアとして就職していたとしても、ログイン機能のような基礎的な実装をする機会は意外とないという方も少なくないのではないでしょうか。
下流工程から上流工程まで、得意不得意を再確認する事もできます。
すでにあるサービスを真似て作ったり、自分なりの開発パターン作りに挑戦してみるのも効果的でしょう。
オリジナルなアプリケーションを作成できれば、ポートフォリオとしても使用可能です。
勉強会に参加する
未経験からフルスタックエンジニアになれる?
フルスタックエンジニアになるためには1つのエンジニアスキルに特化すれば良いわけではありません。
Webシステムやアプリケーション開発に関わる複数分野のスキルを持ったエンジニアになる必要があります。
そのため、未経験からいきなりフルスタックエンジニアとして活躍するのは難しいでしょう。最低でも3年〜5年のエンジニア経験と、絶え間ないスキルアップがなければフルスタックエンジニアにはなれないといわれています。
しかし、未経験から育ててくれる企業もゼロではありませんので、着実にステップを踏めばフルスタックエンジニアになることはできます。
フルスタックエンジニアになる最大のメリット
フルスタックエンジニアになる最大のメリットは「どこでも通用する人材になれること」です。
開発の全ての工程を1人で担う能力があればどんなIT企業でも通用するうえに、システム開発のどの分野でも専門にできます。そのため、キャリアアップの転職を考える際に非常に有利になります。
フルスタックエンジニアとして待遇の良い企業に移ることもできれば、フロントエンドエンジニアなど専門分野への転職も可能なのです。
フルスタックエンジニアになればキャリアアップの選択肢も大きく広がり、職にも困らなくなることが最大のメリットでしょう。
日本における需要の増加
経済産業省が行った「第4次産業革命人材育成推進会議(第3回)」で、今後のIoT時代におけるフルスタックエンジニアの必要性について言及される場面がありました。
これまで日本ではエンジニアはエンジニアとしての技術を極めるだけで目指せるキャリアアップには限界があり、マネジメント職に就く事を求める企業が多いのが現状です。
世界では当たり前になりつつあるSMAC(Social、Mobile、Analysis(ビッグデータの呼び替え)、Cloud)技術がようやく普及し始めた日本ですが、すでにその先を生み出せる人材が求められています。
つまり、「短期間でスピーディーに」「まったく新しいサービスを生み出せる人材」を育成しなければならないのです。
幅広い専門領域をたったひとりでカバーできるフルスタックエンジニアは国としても需要が高い人材だと認識されています。
(参考:経済産業省『産業界等のニーズについて』)
フルスタックエンジニアになってIT業界で活躍しよう
エンジニア市場においてフルスタックエンジニアの需要は高まっており、目指す価値のある仕事です。
まずは、自分の興味のある分野に必要なスキルや言語をいろいろと勉強してみることをおすすめします。興味のある分野のスキルを磨いていたらいつの間にかフルスタックエンジニアになっていたという人もいます。
豊富な知識とエンジニアスキルで1人何役もこなせるフルスタックエンジニアは、企業からも重宝される存在です。
IT業界でのさらなる活躍のためにフルスタックエンジニアを目指してみてはいかがでしょうか?
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