オフショア-ニアショアの違いとは?それぞれのメリット・デメリットを徹底解説!
システム開発を海外や国内の地方へ委託することで、人件費などのコスト削減を実現する手法をオフショア開発やニアショア開発と言います。オフショアとニアショアへ期待する効果は似ていますが、それぞれの特徴を把握することで使い分ける必要があるのです。そこで今回はオフショア/ニアショアのメリットとデメリットを分かりやすく解説します。
目次
オフショアとは
そもそもオフショアとは沖合を意味する用語で、大きくは「海外」を意味しています。金融用語として広まったオフショアという用語はその後、システム開発を海外のエンジニアへ委託する意味で「オフショア開発」と使われるようになりました。
主に中国やインド、そして東南アジアを中心にシステム開発の委託が行われ、日本国内では実現できなかった大幅なコスト削減に成功しています。
オフショア開発の目的
システム開発におけるオフショア開発は、大幅な開発コスト削減を目的として行われます。削減されるコストは人件費であり、安価で技術力のある人材が豊富な東南アジアへのアウトソースを主とします。
昨今では、日本国内のITエンジニア不足が深刻ですが、オフショア開発ならばその煽りも受けにくいという特徴も表れてきました。
ニアショアとは
オフショア開発が海外という遠方への業務委託を指すのに対し、ニアショアとは比較的近い場所である日本国内の地方都市へ業務委託する手法です。
ニアショア開発の目的
ニアショア開発の目的もまた、コスト削減です。東京近郊と地方の人件費を比較した場合、システム開発を地方都市へ委託した方がコスト削減に繋がることから、ニアショア開発にも注目が集まったのです。
オフショア開発の委託先
人材の幅を広げるためには、国内だけでなく海外へ目を向ける必要があるといえるでしょう。
主にアジア圏へ依頼先を絞るのですが、初めはどこに委託すれば良いのかわからない場合がほとんどだと思います。
それぞれの特徴を踏まえてお勧めの国を紹介していきます。
ベトナム
今やベトナムはオフショア開発国として認められている国となりました。
近年ネット環境や住環境は問題なく安定しており、開発環境で不利になることは少ないといえるでしょう。
また、一般的なオフショア開発国として認識されていることもあり、英語だけでなく日本語を話すことのできるエンジニアや通訳も多いため、コミュニケーションを取る上で問題が少ないというメリットもあります。
さらに、時差が2時間と少ないためコミュニケーションの障害が発生することもありません。
また、人件費として開発コストは月に20万円〜35万円となっており、ベトナムの中でも地方都市であれば20万円前後で依頼することができるので、案件によって使い分けても良いでしょう。
中国
オフショア開発業務での依頼先として選ばれるのは中国とインドが定番であるといわれています。
ITについての市場が伸びており、世界で一番の圧倒的な人口を持つ中国は優秀な人材を見込める国ではありますが、人材獲得競争が盛んでベンダーに十分な人材がいないという場合もあるため確認が必要です。
また、英語が話せるエンジニアが多いことや、日本との時差が1時間しかなくコミュニケーションに問題が少ないことも中国を選ぶメリットといえます。首都圏と地方では人件費も異なるため、任せたい案件と比較して選ぶと良いでしょう。
インド
オフショア開発といえばインド、というイメージがありますが開発コストが30万円〜40万円ともいわれており、「安さを求める」ためのオフショア開発先としてはお勧めできません。
日本企業だけでなくアメリカなどのオフショア先として長い間選ばれてきたというエンジニアのレベルの高さから、インドを選ぶ企業が増えてきています。
また、インドは公用語が英語であり数字に強いという民族性も有名企業に選ばれる理由の一つだといえるでしょう。
フィリピン
前述のインドや、オフショア開発業務として人気の高い中国に比べ人件費が安く済むと近年人気を集めているのがフィリピンです。
日本に比べてインフラ設備が脆弱であり、災害時の対応力が低く連絡が途絶えてしまう等のリスクもありますが、そのリスク以上に開発をローコストで依頼できるという魅力的なメリットがあります。
優秀なIT人材が豊富だといわれており、英語でコミュニケーションを取れることや時差が1時間しかないこと、国自体が親日国だということもメリットであるといえるでしょう。
オフショアのメリット
大幅なコスト削減
オフショア開発のメリットは、システム開発における大幅な人件費などのコスト削減です。日本と比較して、中国やインド、また東南アジアでは、大きな経済格差があります。それに比例して、人件費も非常に安く抑えることができるのです。
また、IT技術に関しては非常に優秀な人材が多いため、システム開発を海外に委託するオフショア開発が注目を集めています。
日本よりも人材の確保が容易
現在の日本では、ITエンジニア不足が顕著になっています。しかし、東南アジアを対象にエンジニアを探すことで、人材不足という問題を解決できるのです。
特にベトナムなどでは、年齢も若く技術力も高い人材が豊富です。そこでオフショア開発を目指すことで、システム開発における必要人材を比較的容易に見つけることができます。
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オフショアのデメリット
開発チームとの距離がある
安くて豊富な人材を獲得できるオフショア開発ですが、海外の開発拠点は物理的な距離の遠さがデメリットとなります。開発チームとの打ち合わせは主にSkypeなどを通すことになりますので、直接開発現場を見るということが困難です。
言語の違い
海外の人材は基本的に英語でのコミュニケーションとなるでしょう。日本語のニュアンスを正しく伝えることが困難な場面は多くあります。
システム開発において、仕様の意識統一は必須です。ですので、言語の壁を意識レベルまで克服する能力が必要となります。
もちろん、オフショア開発チームを提供している企業へ委託することは可能ですが、自社で直接オフショア開発チームを持つ場合と比較すれば、他社サービスを利用するコストはかかってしまいます。言語の違いはオフショア開発の大きなデメリットとなるでしょう。
管理に手間がかかる
オフショア開発における全体的な管理は、基本的にインターネットを通した遠隔管理となります。ITツールを使うことで物理的な距離は克服できますが、自社内や日本国内で管理するプロジェクトよりも遥かに手間がかかるのは事実です。
進捗管理や問題解決における迅速な対応が難しい場面もありますし、品質管理にはより気を配る必要も出てくるのです。
現地責任者の育成に時間がかかる
オフショア開発では、開発現場はもちろん海外ということになります。ですので、現場責任者となるSEの育成を行わなければなりません。
日本から責任者を常駐させる方法もありますが、現地のエンジニアに責任者を任せる場合もあります。その際には、日本の“働き方”を含めて、文化的な面についても育成しなければ、日本と開発現場の足並みを揃えることが難しくなります。
小規模な単発プロジェクトには向いてない
オフショア開発はコスト削減を目的として行いますが、開発するシステムの規模によっては本来の目的が機能しない場合があります。
小規模な単発プロジェクトでは、要件定義からの細かな仕様を詰める時間がないことも多くあります。しっかりと仕様が決められていないプロジェクトでオフショア開発を利用すると、急な仕様変更に現場が対応できず、手戻りなどが頻発する可能性があるのです。
納期が短いシステム開発案件では、オフショア開発がデメリットになる可能性もあります。
ニアショアのメリット
コスト削減
ニアショア開発におけるメリットも、コスト削減にあります。ただし、委託するのは日本国内の地方都市が対象です。
定められた最低賃金が違うように、東京近郊よりも地方都市の人件費の方がコストを抑えることができるため、システム開発を地方都市へ委託するニアショア開発が注目を集めています。
国内なのでコミュニケーションが容易
オフショア開発に比べ、ニアショア開発では言語でのコミュニケーションに壁はありません。ですので、システム開発における意識統一が容易で、仕様認識の決定的なズレが起こりにくいことがメリットとして挙げられます。
オフショア開発では、コミュニケーション不足によるトラブルも少なくありません。しかし、ニアショア開発ならば、もっとも重要となる言語によるコミュニケーションに壁はありませんので、このようなトラブルを避けることができます。
ニアショアのデメリット
想定よりもコスト削減にならない場合もある
ニアショア開発の目的はコスト削減ですが、あくまでも委託先は国内の企業ですので、大幅なコスト削減は期待できません。東京近郊の単価よりも安いという程度に認識しておく必要があります。
また、打ち合わせなどで国内移動を頻繁に行う場合には、交通費などのコストも負担になる可能性があります。
再委託が行われる場合がある
委託先の企業が、さらに別企業へ再委託を行う場合が多くあります。この場合、システム開発における意識統一に時間的なズレが生じたり、意思決定が正確に伝わらないという場面も出てくる可能性があるのです。
ですので、ニアショア開発を行う場合には、再委託についての取り決めを書面で交わしておく必要があるでしょう。
ITエンジニアの不足
日本国内はITエンジニアの不足が深刻です。少子高齢化という日本の事情もありますが、ITエンジニア自体の高年齢化や、IT業界からの人材流出により、人材そのものが希薄になっているのです。
そのため、システム開発における人材が集まらないだけではなく、エンジニアの単価が高くなるなど、ニアショア開発の効果自体が薄れてしまう場合があります。
オフショア開発チームをサービスとして提供する企業もある
実際にオフショア開発を自社で準備することは手間がかかります。言語の違いに基づくコミュニケーションの問題など、ハードルが高いことは事実です。
そこで利用できるのが「オフショア開発」を提供する日本企業のサービスです。このようなサービスを利用することで、文化や言語の壁はもちろん、システム開発の委託までをスムーズに行うことができるでしょう。
サービス内容も様々で、中には専用のオフショア開発チームを持てるプランも存在します。専用のオフショア開発チームを持つことで、規模の大小を意識することなく、デメリットを極限まで抑えたオフショア開発が可能となるのです。
まとめ
オフショア開発やニアショア開発は、根本的な目的はどちらもコスト削減にあります。また、オフショア開発では、現在日本国内で深刻な問題となっているITエンジニアの不足を補う一つの手段にもなっています。
最後に、オフショア開発とニアショア開発のメリットとデメリットを簡単にまとめておきますね。
・オフショア開発のメリット:大幅なコスト削減が期待できる
・オフショア開発のデメリット:コミュニケーションが難しい場合がある
・ニアショア開発のメリット:コスト削減とコミュニケーションのバランスが取れる
・ニアショア開発のデメリット:ITエンジニア不足という背景もあり、大幅なコスト削減には繋がらない場合がある
これらの開発手法を導入するには、まずそれぞれのメリットデメリットを理解し、開発規模に応じて使い分けることが必要不可欠です。
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