IT先進国「北欧」を徹底解説!その実情からなぜ先進国となれたのかの背景まで分かりやすく解説します。
ITと聞くと、アメリカや中国をイメージする人が多いかもしれませんが、実は北欧が今IT先進国といわれています。伝統的な文化を重んじるイメージのある北欧ですが、なぜ先進国といわれるほどまで成長したのか、そしてそんな北欧のIT事情はどうなのか、今回はそんなITとしての北欧について紹介していきます。
目次
北欧がITに強いって本当?
IT先進国ランキングでは常に上位
私たちの生活をはじめ、いまや社会のすべてを支えているIT。一見日本はIT大国のように見えますが、実は他の国と比べるとかなり遅れています。IT先進国というイメージの強いアメリカや中国と比べても、その差は歴然です。しかしそんなアメリカや中国よりもITが進んでいる地域があります。それが北欧です。
スウェーデンやノルウェーなどの北欧諸国と聞くと、多くの人はおしゃれな家具や雑貨、特にフィンランドの場合はムーミンという印象が強いはずです。しかし2016年に発表されたIT先進国ランキングでは、トップ5に北欧の国がすべてランクインしたのです。
2021年時点でも北欧5か国はすべてトップ20以内ランクイン、デンマークにいたっては第1位です。ちなみに比較として日本は第9位でした。
技術力よりも知識量
なぜこれほどまでにIT先進国と呼ばれるようになったのか、気になる人も多いはずです。アメリカや中国がIT先進国というイメージをもつ理由としては、ITに関する技術を持ったエンジニアが多いためです。しかしいくらエンジニアが多くいたとしても、その国の住民すべてがITに関する知識を持っているとは限りません。
一方北欧の場合、エンジニアの数はそこそこ多いのですが、ほとんどの国民がITに関する知識を持っています。そのため北欧の人たちは老若男女問わず、普段の生活からスマートフォンなどの機器を扱っており、IT技術を容易に使いこなしているのです。技術力で言えばアメリカや中国などの大きな国が有利ですが、国民一人ひとりのITの知識については、圧倒的に北欧の人たちが有利です。
・北欧は国民1人1人が持つ個人のIT知識量が豊富
・年齢や性別の垣根なく、普段の生活レベルでIT技術が広く普及している
実は北欧生まれのアプリ
Skype
私たちが普段の生活で利用しているアプリやサービスは、国内で生まれたものやアメリカなどで誕生したものが多いです。そんな多くの人が利用しているアプリやサービスの中にも、実は北欧生まれのものもあります。日本で無料通話アプリが広まるきっかけとなったSkypeも、実は北欧生まれのアプリなのです。
北欧エストニアで生まれたSkypeは、無料でビデオチャットができることはもちろん、ファイル送信などの機能も付いています。最近では個人での利用だけでなく、企業の面接のときや企業間でのやり取りのツールとしても利用されています。
Spotify
皆さんは普段、好きな音楽をどうやって入手していますか。最近では定額制の音楽ストリーミングサービスのおかげで好きなだけ聴くことができますが、少し前まではお金を払って曲をダウンロードするのが一般的でした。そんな常識を大きく破ったのが、このSpotifyです。こちらも北欧スウェーデンで生まれたサービスです。
アクセスできる楽曲数は約4000万曲と、ここまでは他の音楽ストリーミングサービスと変わりありません。しかしSpotifyの場合、無料会員でも有料会員と同じく4000万曲にアクセスできるのです。さらにはいくつかのDJ関連のアプリなどとも連携が可能であるため、通勤通学のときはもちろん、DJとして活躍する人にとってもかなり便利なアプリです。
なぜ北欧はIT先進国になれたのか
- 人口が少ないためITの新サービスなど国民全体に知ってもらえる期間が短く早いから
- 参加型社会であるため国民が新しいサービスや技術革新などに進んで参加しようとする
- 公共サービスや行政取引など積極的にキャッスレス化やペーパーレス化などIT技術を使用しているから
少ない人口だからこその俊敏さ
北欧の人たちはITに関する知識を多くもっている、ということを最初の部分で説明しました。ではなぜそれが実現できたのでしょうか。それは、北欧の国は人口が比較的少ないからです。人口が少ないと一見良くないと考える人が多いかもしれませんが、人口が少ないからこそ有利になることもあります。
例えば新しいサービスなどを開始する際、すべての国民にその旨を伝えたいですよね。当然人口が多ければ多いほど、周知されるまでの期間は長くなります。しかし人口が少なければその周知期間が短くなり、より早く国民がそのサービスなどに適応します。特に北欧諸国は参加型社会が基本であるため、多くの国民が積極的にITに関するサービスに適応します。そうした繰り返しが先進国へと成長するきっかけとなったのです。
ITが社会の基盤となっている
ここ最近日本では携帯などの契約におけるペーパーレス化や、キャッシュレス化が進んでいます。しかしそれでも行政での手続きや企業間での取引は、未だに紙の書類などが主流です。では北欧の場合どうなっているのでしょう。伝統的な文化などを尊重するイメージの強い北欧ですが、実はITが社会の基盤となっているのです。
生活のいたるところでITが用いられており、特に行政での取引に関しては電子取引が主流となっています。公共交通などのインフラの部分でもITが取り入れられていたりと、既に北欧ではITと社会は深い関係となっているのです。
気になる北欧の経済状況
IT発展の実情には経済状況などの背景も関係しています。
実はスイスIMD(国際経営開発研究所)の調査によると、「IMD世界競争力ランキング2022」第1位は北欧のデンマークです。首位は北欧の国では初めてのことでした。
スウェーデン、フィンランド、ノルウェーもトップ10にランクインするなど北欧勢の競争力の高さが際立つ結果になっています。この結果にも、小国であることが有利に働いたのでは?と言われているのです。
他国に比べ、社会環境に関する課題に率先して取り組むデンマーク政府はサステナビリティファーストを掲げすでに行動を開始しています。
日本が同ランキングで34位だった事からも、こういった環境対策や国際投資の改善などによって北欧は力を強めているという背景が分かります。
参考:IT Leads
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北欧のIT事情
プログラミングの英才教育?
ここまで北欧がIT先進国といわれるまで成長した理由などについてまとめましたが、ここからは具体的にどんなことをしているのかについて紹介します。ムーミンで知られるフィンランドは、既に教育のひとつとしてプログラミングが取り入れられています。
日本でも最近授業のひとつとしてプログラミングを取り入れ始めましたが、それよりもかなり前からフィンランドでは始まっています。こうした子供のうちからプログラミングなどのITに触れる機会を増やすことが、国民全体のITに関する知識の深さの所以なのです。
数手先のことを既にやっている
最近になって急速に広まっているキャッシュレス決済。こちらも北欧では既に当たり前のものとなっています。特にエストニアでは、キャッシュレス決済が基本といっても良いほど広まっています。エストニアは今最もキャッシュレス決済が進んでいる国であり、何かと話題になる仮想通貨についても、実はエストニアが一番普及しているのです。
エストニアの首都であるタリンは北欧のシリコンバレーと呼ばれており、多くのIT企業が集まっています。先ほど紹介したSkypeもタリンで生まれており、そうしたタリンでの活発な動きが北欧諸国に広まっているのです。北欧諸国が数手先のIT社会となっている裏には、タリンをはじめとするエストニアの人たちがいることを忘れないようにしましょう。
北欧諸国では昔から国民のIT知識が高まる教育システムを構築しており、自然と生活の中でIT技術に携わる機会が多い
将来広まるかも?北欧で行われている取り組み
電話番号があれば何でもできる?
日本ではキャッシュレス決済で盛り上がっていますが、今北欧ではさらに進化したサービスで盛り上がっています。スウェーデンで用いられているSwishというサービスは、相手の電話番号さえわかればすぐに送金したりすることができます。
電話番号は電話をかけるときに必要なものであり、最近ではアプリなどの認証をする際に用いるのが一般的です。しかしスウェーデンでは送金にも用いているのです。ちなみにこのSwishはスウェーデンのパーソナルナンバーと銀行口座があれば利用できます。
手ぶらで鉄道に乗る?
私たちが通勤通学などで鉄道などの公共交通機関を利用する際、多くの場合はICカードを利用します。しかし都心から離れた地域に行くと、ICカードに対応していない地域があります。都市部ではICカードが主流になっていますが、まだ日本全体にICカードが広まっていないというのが現状です。
しかし北欧になると、もはやICカードすらも時代遅れなのです。北欧の場合はカードというより、体内にICチップを埋め込んでしまいます。つまり鉄道を利用するときは手ぶらで利用しているのです。昔のSF映画でフィクションだと思われていた未来は、北欧では既に実現しているのです。
鍵やクレカの代わりに手をかざすだけ?
体内へのマイクロチップの埋め込みが最も盛んと言われているのは、アメリカではなくスウェーデンであることをご存じでしょうか。
手の甲に埋め込まれたマイクロチップで出来ることは増えており、勤務先のアクセスキー、ジムの会員カード、自宅の鍵やクレジットカードなど日常生活に根付きはじめていていると言って良いでしょう。
マイクロチップが10,000円程度と比較的手ごろに販売されていることも普及の一旦を担っていると言えそうです。
北欧はこれからのIT社会のモデルケース
今回はIT先進国といわれている北欧の背景や実情、そして実際に用いられているユニークな取り組みなどを紹介しました。
もはやムーミンどころの騒ぎではない
日本における北欧のイメージといえば、それこそイケアのようなオシャレな家具や雑貨、そして可愛らしいムーミンというイメージを持つ人が多いです。確かに北欧では今でもそのような文化は残っていますが、今回のこの記事を読んでもはやムーミンどころの騒ぎではないと感じた人もいるはずです。
積極的にITを取り入れて時代の最先端を行きつつも、古くからある伝統的な文化なども守っていく、それが今の北欧なのです。観光スポットも数多くあるため、北欧に旅して伝統文化と最先端の技術を体験しにいくのも良いでしょう。
まとめ
- 北欧の国民性が積極的に新しいものを取り込もうとする参加型社会であるため、新しい情報技術への取り組みがスムーズでなおかつ普及も早い特徴を持つ
- 北欧諸国では率先してキャッシュレス決済や電子取引などを公共のサービスや行政取引に取り入れている
- IT教育が他の先進国と比較しても充実している
- エストニアのタリンという都市は北欧のシリコンバレーと呼ばれ、多くのIT企業が集まっている
- タリンで最先端のIT技術やサービスが開発されているのも北欧がIT先進国と呼ばれる要因の1つ
最近はエンジニアを中心にITに関する求人が増えており、そしてそれに呼応するかのようにプログラミングスクールや教材も増えています。しかしそれらはあくまで技術です。技術というのはそれにまつわる知識があってこそ初めて成り立ちます。北欧がIT先進国と呼ばれた一番の理由は、技術と知識のバランスが取れているからです。
いくら技術を取得したとしても、その技術がなぜ必要なのか、どういうことに役立つのかを知らなければ意味がありません。今もしもプログラミングなどの技術取得に励んでいる人は、ITに関する知識もあわせて勉強しておくと、かなり有望な人材となります。
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