ブロックチェーンとは?仮想通貨との違いや活用事例、将来性をわかりやすく解説
「ブロックチェーンって何?」ブロックチェーンは仮想通貨のイメージが先行していますが、実はその他の業界のシステムを置き換えるほどのインパクトがあることをご存知でしょうか?本記事ではブロックチェーンの簡単な説明を交えながら、活用事例を紹介します。
目次
ブロックチェーンとは
ブロックチェーンとは、一度データを書き込むと上書きができないデータベースです。
「不正や改ざんができない」ことが魅力のひとつに挙げられ、仮想通貨(暗号資産)の盛り上がりとともに認知度が高まりました。
また、ブロックチェーンのデータ管理は中央集権ではなく、分散管理できることも特徴です。
ブロックチェーンをベースとしたシステムを使う人たち全員で、データの整合性を担保して運用されます。
誕生してからこれまで活躍の舞台を広げるブロックチェーンは、以下のように分類されます。
・ブロックチェーン1.0:仮想通貨(暗号資産)のベースとなる技術として稼働
・ブロックチェーン2.0:金融(フィンテック)のIT技術として広がる
・ブロックチェーン3.0:金融以外の分野にも浸透
・ブロックチェーン4.0:ビジネスに対応
現在は前段階の要素に加え、ビジネス対応を可能とした「ブロックチェーン4.0」というステージに進んでいます。
ブロックチェーンの特徴
ブロックチェーンは、以下の4つの特徴をもちます。
・改ざんが極めて困難
・システムダウンしない
・取引履歴はコピーも削除もできない
・自律分散システム
ブロックチェーンへデータを記録するためには、ブロックチェーン技術をベースにもつプラットフォーム上で、トランザクション(取引)を発生させる必要があります。
プラットフォームとして利用されている分野が仮想通貨(暗号資産)で、ビットコインシステムやイーサリアムシステムといわれるものです。
発生したトランザクションに対して、データの信憑性を判断する人たち(ビットコインシステムではマイナーと呼ばれる)が、正しいデータであるかを計算によって証明し、過半数の合意が得られたらブロックチェーンへ書き込まれます。
これが、システムの中央となる管理者が存在していた従来の分散システムとは異なる「自立分散システム」の特徴です。
ブロックチェーンに記録されるデータはブロックという単位でまとめられ、一定方向に繋がれていきます。
ブロックの繋がりは前後のハッシュで結びついているため、一箇所だけを書き換えるなどの改ざんは不可能です。
これが、ブロックチェーンが改ざんできないといわれる理由です。
ブロックチェーンで実現できる事
上記のようなブロックチェーンの特性を活かせば、社会に大きな変化をもたらすとされています。
すでに実現しているものと言えば独自通貨の流通です。
改ざんやコピーができない、匿名性や透明性が高い、正当性が保証されるといったブロックチェーンの強みがしっかりとマッチした事例です。
同様の理由で決済や契約、身分証明などもブロックチェーンによって実現可能とされています。
さらに社会に深く関連する実例は「製品がいつ、どこで、だれによって作られたのか」を透明にする特性を利用した、食品や流通における移動の管理です。
これはトレサービリティと呼ばれ、農林水産省が推進している分野です。
業務の効率化や自動化が広まる現代において、ブロックチェーンの活用によって見込める変化はとても大きなものだと考えられます。
ブロックチェーンと仮想通貨(暗号資産)の違い
ブロックチェーンはビットコインとともに誕生した技術です。
中央集権に頼らず、デジタルデータに通貨の価値をもたせるための仕組みがブロックチェーンによって実現しました。
例えば、ビットコインはブロックチェーン技術をインフラに持つシステムの一つです。
そして、仮想通貨取引で取引されているコインと呼ばれるものは、ブロックチェーンに記録される実態のないデータのことです。
ブロックチェーン技術は、後に変更されたくないデータを保存するデータベースとして利用することで、過去の情報を操作できない、つまりデータベース書き換えができないシステムを作ることができます。
ブロックチェーン技術の活用事例10選
金融
金融では、ブロックチェーン技術を使った国際決済の高速化と利便性が期待されています。
現在の国際送金は対象国の銀行口座へ送金する際、コネクションのある銀行までいくつもの銀行を経由するため手数料と時間がかかります。
例えばIBM Blockchain World Wireでは、ブロックチェーンを使うことで「数日」かかる決済を「数秒」にまで短縮することができ、経由する銀行も減らすことで手数料を削減する仕組みを実現します。
(参照元:IBM Blockchain World Wire)
保険
保険では全国の営業拠点や事務センターでブロックチェーン技術を導入し、保険申し込み書類の参照などの情報を共有します。
ブロックチェーンに格納されたデータは改ざんできないという特性があるため、信頼性を担保し、保険申込書類の確認業務を効率化する狙いです。保険証券発行期間の短縮やセキュリティの確保などの効果が期待できます。
2018年2月には、三井住友海上火災保険株式会社と株式会社bitFlyerが協力し、実証実験を開始したことを公表しました。
(参照元:三井住友海上)
電力
電力では電力融通に関する実証実験が、中国電力とIBMにより開始されています。
再生可能エネルギーの固定価格売買制度に、ブロックチェーン技術を基盤としたシステムを導入します。
簡単にいえば、電力が個人を仮想通貨のように売買する仕組みです。
(参照元:中国電力株式会社)
食品トレーサビリティ
食品トレーサビリティでは、食品に関する品質の管理や健康被害発生時の原因究明に役立ちます。
商品を出荷する農家や加工業者・流通業者など、販売までに商品に係る業者をトレースすることで、食品から起きた健康被害の原因を瞬時に判断できます。
これは、アメリカのWalmart Inc.(ウォルマート株式会社)とIBMが共同で行う、ブロックチェーン技術で食品の安全を担保する事例です。
(参照元:BLOCKCHAIN-BUSINESS)
不動産
不動産では現状分散されている家賃情報を共有するため、ブロックチェーン技術を利用したプラットフォームを活用します。
不動産情報は分散されたデータでは正確性が担保できないことや、業務の非効率化が不動産を求めるユーザーにとって不利に働くという問題があるのです。
これらの問題をブロックチェーン技術を基盤とする不動産ポータルサイトで管理することで、データの透明性と正確性を担保する狙いです。
(参照元:ブロックチェーン技術で物件情報を共有。不動産業確変への挑戦)
教育
教育では学位証明の発行にブロックチェーン技術を利用する動きがあります。
世界をみると、学位の公証は紙ベースで行われていることや学位公証の不正が横行しているという問題があります。
この問題を解決するために、公証をブロックチェーンで管理し、発行者や所有者(公証取得者)を明示することで、公証に信頼性を持たせます。
例えば、マレーシアには学歴詐称の問題が深刻です。そこで、マレーシア国内の大学ではブロックチェーン技術を利用して学位を証明する「e-Scroll」というシステムが発表されています。
ブロックチェーンに記録された所有権を改ざんすることはできず、不正も不可能です。
公証に対して所有権をつけ、ブロックチェーンで管理することで公証の査証が不可能になるでしょう。
自動車
ドイツのメルセデスベンツ社は、中古車販売にブロックチェーンの活用を始めています。
進めているのは中古車の適正価格を算出するプラットフォーム「Vehicle Residual Value Management Platform」の開発です。
ブロックチェーンで管理するのはベンツ販売店や車検の記録で、走行距離や車検証明の改ざんを防ぐのが目的です。
これにより、中古車販売における情報の透明化をはかります。
音楽
ソニーが取り組んでいるのが、世界初のブロックチェーンを活用した音楽権利管理実証です。
音楽の作成や販売が自由になった現代においても、権利情報の証明には、業界団体・著作権管理団体による管理・証明が必要です。
ブロックチェーン技術を活用することで、こういった手間を省き著作権情報登録や証明がしやすくなります。
医療
医療業界では、患者の健康情報の管理のほか、受診予約システムなどすでに身近なところでブロックチェーンの活用が始まっています。
例えばこれまで医療機関ごとにカルテが異なり、共有や連携がうまくとれなかったことは大きな課題とされてきました。
ブロックチェーン技術を用いれば、個人の健康情報を収集して統合し、システムで一括管理ができます。
さらに電子情報の改ざんリスクをなくすだけでなく、患者自身も安全に情報を扱えるというメリットもあります。
直近では新型コロナウイルスのワクチン接種における予約や摂取証明のプラットフォームにブロックチェーン技術が応用されました。
非代替性トークン(NFT)
ブロックチェーン技術を活用し、デジタルデータのコピーに唯一無二な資産的価値を付与する技術が非代替性トークン(NFT:Non-Fungible Token)と呼ばれるものです。
この技術が活用されている一例は鑑定です。
「デジタル鑑定書(NFT鑑定書)」は偽造不可という特性を最大限に利用し、商品の偽造防止や真贋判定をより正確かつ簡単に行えるようにしました。
2022年3月には、貨幣・紙幣の鑑定書を発行する団体「日本貨幣商協同組合」が、日本で初となるブロックチェーンを用いた貨幣のNFT鑑定書発行開始を発表しています。
NFTの技術は医療の現場でも活躍しており、canow株式会社は2022年4月に「NFT処方箋」の実証実験を行いました。
患者が持つ情報の秘匿性を保ったまま、医療機関と調剤薬局、さらには配送業者との間もシームレスにつなぎます。
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ブロックチェーンは選挙にも活用されている
ブロックチェーンの活用方法として、現在特に注目を集めているのが選挙の投票です。
仮想通貨を管理するシステム技術であるはずのブロックチェーンが、なぜ選挙に関わっているのでしょうか。
ブロックチェーンはお金ともいえる仮想通貨の情報や記録を管理することに長けており、情報の改ざんも困難です。
一方で選挙の投票もまた、国を左右する重要な出来事です。
投票データがハッキングされてしまうことは、国を窮地に陥れかねません。つまり、ブロックチェーンの高いセキュリティ技術が重要なデータを扱う選挙で注目を集めているのです。
投票率が向上
ブロックチェーン技術を使ったインターネット投票は、すでに日本やアメリカで行われています。
日本では政治の選挙までは利用されていおらず、インターネット投票による投票率の向上が期待されています。
実際、海外駐在中のアメリカ軍が米国外から投票する大統領選挙は、ブロックチェーンのインターネット投票が行われました。すると、従来の投票手順よりもインターネット投票の方が投票率が2倍に増えました。
インターネット投票は場所や時間を選ばず、また顔認証で本人確認もできます。そのため、管理者と投票者双方の手間を削減可能です。これは日本の実証実験でも証明されています。
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ブロックチェーン技術者の将来性
IT技術者の中でも、ブロックチェーン技術者はまだまだ人材不足です。
始まったばかりの技術であるうえ、ブロックチェーンを利用したサービスも現時点では多くが実証実験の段階です。
しかし、ブロックチェーン技術が活躍する分野は多岐に渡るため、需要は増えることが予想されます。
例えば、著作権や所有権をもつコンテンツを正確にトレースできるようになれば、デジタルコンテンツの再販(二次販売)も可能になるかもしれません。
ブロックチェーン技術を基盤としたシステムがあらゆるマーケットを活性化させることも考えられます。
ブロックチェーン技術者としてのスキルをより早く習得することで、技術者としての将来性や事業者としての将来性も期待できる分野です。
ブロックチェーンの市場規模
2019年までは大手企業が中心となってブロックチェーンの特性を学ぶ最初期のフェーズでした。数々の実証実験を経て、現在は自治体や中堅企業でも活用される普及期に突入しています。
このような背景を受け、2025年には7247億6000万円にまで市場規模が拡大するとの予測も出ています。
これは2019年と比較して、6年で42倍以上の成長です。
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ビットコインについて
ブロックチェーンと共に生まれたビットコインはただ仮想通貨というイメージだけが独り歩きしていますが、実際はどのようなものなのでしょうか。
仮想通貨とは
ビットコインは形こそないものの、現在は価値が上がったことで本物のお金に近い性質を持っています。それが仮想通貨の定義です。
仮想通貨はデータでのみ取引されるものであり、円やドルといった現金と違って国が価値を保障するものではありません。
そのため、法的な拘束力がない資産でもあります。
ブロックチェーンとビットコインの関係
混同されがちなブロックチェーンとビットコインは全くの別物です。
ブロックチェーンは、ビットコインなどの仮想通貨の取引を記録する台帳のような存在です。
取引情報をまとめているのがブロックチェーンであり、ブロックチェーン技術は仮想通貨にとって重要な技術基盤です。
仮想通貨で行われた取引の履歴データを「トランザクション」、複数のトランザクションを集めて整理・収納したものを「ブロック」と呼びます。
さらにブロックがいくつもできると鎖(チェーン)のようにつながっていき、ブロックチェーンの仕組みを作っています。
マイニングとは
ブロックチェーンについて知ると、「マイニング」という言葉が登場します。
マイニングとは、先に解説したブロックを作ることです。その報酬として仮想通貨が手に入ります。
マイニングは元々「採掘」を意味する英単語で、トランザクションデータが書き換えられないように検証する役目を持ちます。
多くの値を入れながら条件を満たすハッシュ値を探さなければならず、探し出すための計算は手順が多く困難です。
このような難易度の高さが鉱山から宝を掘り当てることに似ているといわれており、これが「マイニング」という名称の由来です。
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使い勝手の良いスマートコントラクト
ブロックチェーン技術の活用が広がりつつありますが、使い勝手のよいシステム基盤として重宝されているのが「スマートコントラクト」という機能です。
ビットコインシステムとは別の「イーサリアム」の一部の機能として実装されており、ユーザーが起こしたアクションによって契約を自動化します。
例えば、生命保険でユーザーが加入するときから、死亡時の遺族への保険金支払いまでを自動化可能です。
ブロックチェーン上に生命保険契約のシステムを構築することで、契約内容は改ざんできない状態で半永久的に残り、更新条件をシステムで自動化すれば、死亡情報を取得することで遺族が行う複雑な手続きを全て自動化できます。
経済産業省が公開したユースケース
経済産業省は、ブロックチェーン技術活用のユースケースとして以下の分野に分類しています。
・金融系:決済、為替、送金、貯蓄、証券取引など
・ポイント/リワード:ギフトカード交換、アーティスト向けリワード、プリペイドカードなど
・資産調達:アーティストエクイティ取引、クラウドファンディングなど
・コミュニケーション:SNS、メッセンジャーなど
・資産管理:bitcoinによる資産管理、土地登記等の公証
・ストレージ:データ保管
・認証:デジタルID、アート作品所有権、薬品の真贋証明など
・商流管理:サプライチェーン、トラッキング管理、マーケットプレイス、金保管など
・コンテンツ:ストリーミング、ゲーム
・将来予測:未来予測、市場予測など
・公共:市政予算の可視化、投票、バーチャル国家、ベーシックインカムなど
・医療:医療情報
・IoT:IoT、マイニング電球など
参照元:平成27年度 我が国経済社会の情報化・サービス化に係る基盤整備(ブロックチェーン技術を利用したサービスに関する国内動向調査)
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ブロックチェーンの事例は、現行の世の中のシステムを置き換えることから始まります。
特にデジタルコンテンツの目に見えない証明を確固たるものとすることで、コンテンツ製作者もデジタルコピーという障害がなくなります。
食品の安全を守ることや国際決済を安く、高速にすることも実現します。
ブロックチェーン技術は、デジタルの世界と物質の世界を橋渡しするインフラとしてさらに普及するのではないでしょうか。
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