2045年問題とは?シンギュラリティの意味やAI進化による影響を分かりやすく解説
「2045年問題とは?」「AIの進化により今の仕事がなくなる?」と不安を感じている方のために、2045年問題の概要やシンギュラリティが人間に与える影響を解説します。将来的になくなると予測されている仕事となくならない仕事についてもご紹介します。
目次
2045年問題とは?
2045年問題とは、「AIが自ら人間を超えた賢い知能を持つ時が到来し、人間が予測不可能なことが起きると推測されていること」から、そのときに人間が受ける影響や問題を指しています。
シンギュラリティ2045年問題の提唱者は誰?
「シンギュラリティ(技術的特異点)」とは、AIが人間を超える知能を持つ転換期とされています。
2045年問題は、アメリカ合衆国の人工知能研究の世界的権威であるレイ・カーツワイル博士が2005年に著書「The Singularity Is Near:When Humans Transcend Biology」で提唱しました。
しかし、実際に、「AIが人間を超えるシンギュラリティが来るかどうか」は、誰にも答えはわからない未知の世界です。
AIの定義自体も専門家によって異なり、明確な定義もされていないのが現状とされています。つまり、シンギュラリティの定義自体も不明瞭なものであるということです。
シンギュラリティの基準はチューリングテスト
実はシンギュラリティが来るとされているのは、あくまでもAIテスト判定の基準である「脳の計算性能」という一面においての話に過ぎません。
現在のAIテスト判定はチューリングテストと呼ばれるもので、このテストを基準とした場合にシンギュラリティが来るとされているのであれば、非常に信憑性がある話ではあります。
シンギュラリティの定義について、詳しくは下記の記事を参考にしてみてください。
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レイ博士がシンギュラリティ2045年問題を提唱した根拠
2045年問題を提唱したレイ博士は、正しくは、2045年にAIが人間を超えるのではなく、「2029年には、すでにAIの知能が人間の脳の演算能力を超えることが予測される」と記述しています。
その根拠となっているのが「ムーアの法則」と「収穫加速の法則」です。
これらの法則から「人間の脳は100兆個の極端に遅いシナプスしかなく、2045年には10万円のコンピューターの演算能力が人間の脳の100億倍になる」と述べています。これらの法則について簡単に解説します。
ムーアの法則
ムーアの法則とは、インテル社の創業者ゴードン・ムーア氏が論じた半導体技術の進化予測の指標で「半導体の集積率は18カ月ごとに2倍になる」と定義された法則です。
つまり、大規模集積回路で使用される半導体の最小単位「トランジスタ」の数が18カ月ごとに2倍に増えてコストは半分に削減されるというのです。
ただし、ムーアの法則は物理的な限界を迎えて、現在は毎年数%で10年単位で約2倍でしかないという意見もあり、この法則は明確なものではありません。
収穫加速の法則
収穫加速の法則とは、技術進歩の過程で技術革新までの期間が短くなって指数関数的に向上する法則です。
つまり、新たなテクノロジーが発明されると、それらの複数の技術がさらに新しい次の発明に利用されるので、発明までの期間が短くなるというのです。
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シンギュラリティが人間に与える影響
人間の仕事がAIに置き換わる可能性
シンギュラリティが人間に与える影響としてもっとも懸念されているのが、雇用への影響です。
すでに従来人間の手で行われていた仕事の一部がAIによって代替され始めています。
例えばAIが得意とする計算やデータの整理・解析、また物を運搬して提供するといった単純作業などはAIを活用することでより速く正確に、そして人件費を大きく削減できるからです。
シンギュラリティによってAIに代替される仕事とされない仕事については、後ほど詳しく解説します。
社会への影響
人々の仕事がAIに代替されると想定すると、仕事が減り収入の保障が必要になることが考えられます。
そこで注目されているのがベーシックインカムという制度です。
ベーシックインカムとは、年齢・性別・所得などを問わずすべての国民に一定の金額を支給する制度で、 一般的には最低所得補償と訳されます。
フィンランドでは2017年から2年間、「働いてもらうための制度」としてベーシックインカムを導入しました。
低賃金を補填する仕組みによって、よりレベルの高い仕事をするための余裕や時間を確保してもらう、つまり働く意欲を持ってもらうための制度として活用したのです。
経済が危機的状況に陥るたびに日本でも議論されているベーシックインカムですが、すでにアメリカや韓国など、先進国の多くで導入されています。
シンギュラリティにおいても、ベーシックインカムが導入さることですべての国民に最低限の所得を保障し、貧困問題や格差問題の解決に活用すべきだという声が強くなるかもしれません。
しかしその一方で財源確保の問題や労働意欲低下のような別の問題を引き起こすリスクもあるため、社会に大きな影響を与えると考えられます。
医療技術の発達
AIと親和性の高い分野のひとつが医療です。
現段階では画像診断支援の領域でAIの活用が特に進められています。
医療AIが進むことで、ゲノム医療、手術支援や治療、医薬品開発、介護などより幅広い領域でAIが利用される見込みです。
すでに脳波でコンピューターをコントロールする技術や人工関節・人工心臓など身体の一部を人工物で代替する技術は開発されています。
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2045年問題で人間の仕事は奪われるのか?
AIの進化によって人間の仕事が奪われるかどうかについては、AIの進化が原因で失われる仕事も出てくることは否めないというのが結論です。
既に、スーパーマーケットやコンビニなどのレジ清算業務が自動化されている現実もあります。
しかし、人間の仕事が奪われるのではなく、時代の変化と技術の進歩により仕事が変容すると言う方が適切でしょう。
例えば、かつては日本に数多く存在していた畳屋は街の中から消え、畳業界は衰退してきています。
最近の大きな変化では、コロナ渦で働き方がリモートワークに変わったり、失われた仕事の一方で需要が高まり普及した仕事もあります。
社会の動向によって仕事の価値はいつも変化しているのです。AIが全ての役割を果たして人間が全く不要になるかというとそんなことはありません。
そこで、ある2つの研究機関が発表しているシンギュラリティによって失われると予測されている仕事と失われない仕事についてご紹介します。
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シンギュラリティで失われる仕事・失われない仕事の予測
シンギュラリティによって人間の仕事が失われるかどうかは最も関心が深いことです。
ここでは、オックスフォード大学と野村総合研究所による予測をご紹介します。
オックスフォード大学が予測する失われる仕事
オックスフォード大学の論文「THE FUTURE OF EMPLOYMENT: HOW SUSCEPTIBLE ARE JOBS TO COMPUTERISATION?」では、90%以上の確率で将来的に消滅する職業が挙げられています。
論文の中から、将来消滅する可能性が高い仕事の代表例として以下の職業が紹介されていました。
・電話勧誘販売
・保険の査定担当者
・数理技術者
・証券会社員
・不動産ブローカー
・レジ担当者
・料理人
上記は、AIの方が正確で処理が速い傾向にある職業とされています。
レジの自動化や一部の調理器具のロボット化などは既に提供されているサービスです。
オックスフォード大学が予測する失われない仕事
AIが進化しても失われないと予測されている仕事の代表例として以下の職業が挙げられていました。
・リクレーション療法士
・聴覚訓練士
・社会福祉士
・歯医者
・精神カウンセラー
・人事マネジャー
・コンピューターアナリスト
人間にしかできないコミュニケーションが必要とされているカウンセラーや社会福祉士、専門性の高いエンジニアやアナリストなどの職業は失われない可能性が高いとされています。
野村総合研究所が予測する失われる仕事
野村総合研究所のレポートでは、10〜20年後には日本の労働人口のおよそ49%が就いている職業において、AIで代替可能との報告がされています。
なくなる確率が高いとされている仕事の代表例として以下の職業が挙げられていました。
・事務員(一般/医療/経理など)
・受付
・機械木工業/金属加工業
・マンション/駐車場などの管理人
・タクシー運転手
・建設作業員
・電車運転士
自動運転車の開発は話題にもなり、タクシー運転手の仕事が消滅すると危惧されています。
しかし、自動運転は事故の問題を始めとし、人間が運転をしている限り課題は山積みで実施が難しいのが現状です。
野村総合研究所が予測する失われない仕事
野村総合研究所が予測する失われない仕事の代表例として以下の職業が挙げられていました。
・アートディレクターやグラフィックデザイナー
・編集者/フリーライター
・漫画家/シナリオライター
・俳優/演奏家/ミュージシャン
・セラピスト/作業療法士/理学療法士/ケアマネジャーなど
・経営コンサルタント
・医師/教員/保育士/幼稚園教諭
AIが進化しても失われる可能性が低い職業には、俳優/ミュージシャン/アートディレクターなどクリエイティブな仕事が中心に挙げられています。
料理研究家/フードコーディネーターなどもレポートには挙げられており、人間の五感である視覚/聴覚・味覚/触覚/嗅覚にかかわる職業は生き残る傾向があるとされていることが見受けられます。
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AIの進化により新たな仕事も誕生する
失われる仕事の危険性について話をしましたが、AIに仕事が奪われるばかりではありません。AIの進化によって新たに誕生する仕事もあることが予測できます。
現在でも、YouTuberなどのように20年以上前には予想もしなかった新しい職種が定着しています。
時代の変化と技術の革新で新しい仕事の領域ができることは大いに考えられます。
ITサービスを提供するアメリカの多国籍企業であるコグニザントによる報告書「21 JOBS OF THE FUTURE」には、これからの時代に需要が高まる新しい職業が紹介されています。
この報告書から参考までに3つ挙げます。
Data Detective(データ調査官)
「ビッグデータ」という言葉を一度は耳にしたことがあるのではないでしょうか。
ビッグデータとは、一般的なデータ管理・処理ソフトウエアで取り扱うことが困難な巨大で複雑なデータの集合のことです。
データ調査官とは、データを専門的に取り扱う仕事です。
AIやIoT技術の発展によりデータ量が大幅に増えることから、大量のデータを解析する仕事に需要が高まるとされています。
Augmented Reality Journey Builder(AR体験クリエイター)
AR(拡張現実)が普及しつつある近年、ゲーム、エンタメ、製造現場などでARデバイスの導入がされています。
ARの導入の増加により、AR体験にかかわるクリエイターの需要が高まる可能性があります。
AR体験を専門とするプロデューサーやデザイナーなどに注目が集まることが予測されます。
Artificial Intelligence Business Development Manager(AIビジネス開発マネジャー)
AIの進化において、AIビジネスを推進する役割であるAIビジネス開発マネージャーは必要不可欠です。
たとえAIが進化しても、AI自身が売り込むことはできません。
AIに精通した専門家や開発のスペシャリストが支援しなければ、人間世界に導入されることはありません。
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普遍的に人間だけができる仕事とは
失われる仕事・失われない仕事、新しく誕生する仕事についてご紹介しましたが、AIがどれだけ進化しても、人間にしかできないことは存在します。
あらゆる領域でロボット化される時代だからこそ「人と人とのコミュニケーション」にかかわる領域の仕事は今後も重宝されるのではないでしょうか。
世の中は人間の感情で動かされているとも言われます。
機械化がどれだけ進んでも、機械的ではない「対人間の心理や感情」も含めた思考能力や、経営者や事業の責任者のように難しい判断が必要とされる仕事は普遍的に生き残ると予測されます。
また、たとえAIが人間と近い対話ができるほどにまで進化したとしても、最終的には生身の人間同士の対話がしたいと思う人間の心理は失われないのではないでしょうか。
AIやロボットの普及によって、むしろ人間との対話が高価なサービスとされる可能性すら考えられます。
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AIが人間を超えた時に私たちの仕事はどうなるのかと不安もありますが、時代とともに仕事が変容していくことは歴史が証明している事実として受け止めざるを得ません。
ただし、人間にしかできないこともあります。
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