ディープテックとは?意味や注目分野、企業一覧を事例と共に詳しく解説
ディープテックとは、高い問題解決力を秘めた専門性の高い技術を指します。SDGsへの関心の高まりや大学発スタートアップの増加により、ディープテックは今非常に注目を集めています。本記事ではディープテックの概要や注目の分野、企業事例や一覧を紹介します。
目次
ディープテックとは
ディープテック(Deep Technology)とは、英語で深さを表す「deep」とテクノロジーをかけ合わせた造語です。
ディープテックで用いられている「ディープ」には、以下の2つの意味が込められています。
・深いところに眠っている、世の中の生活スタイルを大きく変えるような技術
・社会に深く根ざした問題を解決できるような技術
つまり、技術を活かしてビジネスを行うだけでなく、技術進歩も目的としているのがディープテックを専門に扱う企業の特徴です。
ディープテックの特徴
ディープテックは、これまで大学や研究機関などで長期にわたり研究開発が進められてきた技術を基にしています。
世の中に大きな変化をもたらすこの技術進歩は、今まで実現できなかったことを現実にする可能性を秘めているとされています。
例えば次のような要素を含んだ製品・サービスです。
- ・最先端の科学技術や研究開発が基礎になった技術がある
- ・長期間・多額の資金・高い技術を必要とする
- ・現時点ではまだ具体的な製品・サービス化されていない
このような、成功した場合に非常に大きなインパクトがある可能性を持っているのがディープテックの特徴です。
ディープテック注目の15分野
従来では、最も顕著なディープテック分野は、先端材料、先端製造、人工知能、バイオテクノロジー、ブロックチェーン、ロボティクス、フォトニクス、エレクトロニクス、量子コンピュータとされていました。
応用分野として考えられていたのは、農業、生命科学、化学、航空宇宙、グリーンエネルギーなどです。
ここからは、現在のディープテックの注目分野について解説します。
人工知能(AI)
人工知能・機械学習は金融や教育、製造業など、あらゆる分野で活用されています。中でも注目を浴びているのは、人工知能を医療分野に活用する取り組みです。
人工知能を活用することで、患者のわずかな体調の変化から病気の早期発見を行えたり、効率的な製薬を実現できます。
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ニューラルネットワーク
人間の脳の仕組みを数式にする手法です。
AI、機械学習、ディープラーニングの分野で共通する課題を解決する方法として、近年ますます発展しています。
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ロボット工学
ロボット工学は、製造業や医療分野、農業・食品分野で活用されることが多いです。
多くの人手を必要とする作業の効率化や機械の遠隔捜査技術によって、業務効率化や業務の低コスト化を実現しています。
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3Dプリンター
大型3Dプリンターに関連するソフトウェア開発やプリント技術、ロボットの設計制作も注目されています。
米国シリコンバレーでは、自転車、車、船、飛行機、大型の建造物もカーボンファイバーなどの新素材でつくることが実現されています。
モビリティ(自動運転)
モビリティは、自動車業界はもちろんのこと通販会社の倉庫などでも利用されています。
公道で自動車の自動運転が認められれば、モビリティ技術の需要はますます高まると考えられます。
IoT
IoTとは「Internet of Things」の略称で、さまざまな機器そのものがインターネット経由で通信することを指します。
IoTが発達すると、機器の遠隔操作やセンサーによるデータ収集、異常検知などが行えます。
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人間拡張ツール
人間拡張ツールとは、IoTやBMI(Brain Machine Interface)技術の進化によってさらに高度になりつつある体内への「埋め込み型電子デバイス」の事です。
これまで心臓のペースメーカーのように用途が限定されていましたが、多様な技術の実現が見えて来ています。
量子コンピューティング
量子コンピューティングとは、原子や光子のような非常に微細な粒子をうまく制御することで、非常に高い演算能力を実現するものです。
各ビットが「0」か「1」の値をとって計算を行う古典コンピューターよりも、遥かに高い演算能力を発揮するとされています。
宇宙飛行・月面探査
米航空宇宙局(NASA)を中心に、宇宙飛行や月面探査、月面基地の建設、月面での長期滞在を実現させる試みが進められています。
また、月の周囲を回る宇宙ステーション「ゲートウェー」の建設構想や2030年代の火星進出など、月面探査後を見据えた宇宙開発構想も計画されています。
クリーン電力
温室効果ガスなどの廃棄物を出さない、環境にやさしいクリーン電力・代替エネルギーが注目されています。
太陽光発電や水力発電、風力発電が注目されているのはもちろんこと、音や振動、波を発電源にする「環境発電」と呼ばれる全く新しい発電方法も注目されています。
バイオテクノロジー
バイオテクノロジーとは、「バイオロジー(生物学)」と「テクノロジー(技術)」をかけ合わせた造語です。人間の生活向上や環境保全を行うような技術を指します。
バイオテクノロジーは将来的に、食糧問題や難病問題、環境問題、資源問題の解決に貢献すると考えられています。
精密医療
精密医療とは、それぞれの患者に合った治療を行う医療です。病気の種類だけでなく、患者一人一人の体質を加味して治療を行うことで、患者に対して最適な治療を提供できます。
人工知能や画像解析技術などが今以上に発達することで、精密医療はますます発展すると考えられています。
ゲノム編集・寿命延長技術
突然変異が原因で治療法がない病気に対して期待されているのが、ゲノムの標的遺伝子を操作するゲノム編集です。
ゲノム編集治療の結果として、短縮した寿命を延長させる治療法の開発が進められています。
ナノ・テクノロジー
ナノ・テクノロジーによる合成生物学は「天然」と「人工」を合成する事で地球上には存在しない物質を製造する技術です。
医療や材料科学などの分野で、すでに人々の生活に密着しているものでもあります。
VR・AR
VR(Virtual Reality:仮想現実)とは、環境全体を仮想的な世界に置き換え、ユーザーがその仮想空間で活動できるような技術です。
AR(Augmented Reality:拡張現実)とは、現実世界の一部分を仮想的な空間に拡張するような技術です。
VR・ARの発展によって、没入感の高いエンターテイメントや実際の手順を体験できるマニュアルの提供、建物や乗り物のモデル構築などが行われています。
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新たな注目分野「脱炭素」
脱炭素・気候変動といった環境問題が大きな変動の波を起こすのではないかとも言われています。
世界の金融機関は「世界の平均気温の上昇を1.5℃に抑える努力をする『1.5℃目標 』に準じた企業以外には投資しない」としており、世界ではすでに新たな産業がうまれる前兆を示していると捉えることもできるのです。
ヨーロッパの企業を中心に設備投資が積極的に行われていることからも、環境問題に向けた新たなトレンドに注目です。
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ディープテックが注目される背景
ここからは、ディープテックが注目される背景について解説します。
SDGs達成への関心の高まり
近年、国内外を問わずSDGs達成への関心が非常に高まっています。
このSDGsの課題解決策として、ディープテックを活用したイノベーションが挙げられています。
後ほど詳細な内容を紹介しますが、実際に「SDGsアワード」でも受賞した技術などもディープテックとして注目されています。
技術の多様化
現在、AIやIoTを始めとして新たな技術が次々に生まれ、技術の多様化が進んでいます。
そのため、何か技術を活かして新たなビジネスを立ち上げる場合、0から新たな技術の研究開発を行うよりも、ディープテックをビジネスに活かす方が効率的という考え方が広まっています。
ディープテックへの投資増加
技術の多様化が進み、ディープテックをビジネスに活かす流れが生まれました。
そのため、以前からディープテックに関する研究を行なっていた企業や、ディープテックの研究そのものに対する投資が増加しています。
世界各国でディープテックへの投資の動きはありますが、特にヨーロッパにおけるディープテックへの投資が高まっている傾向です。
大学発スタートアップの増加
2001年に経済産業省で発表された「大学発ベンチャー1000社計画」により、大学発スタートアップが急増しています。
ディープテックは大学などの最先端研究機関で研究、開発が行われている技術であるため、大学発スタートアップがディープテックを保有しているケースが多くあります。
ディープテック企業の事例
ここからは、ディープテック企業の事例について紹介します。
株式会社ユーグレナ
株式会社ユーグレナはヘルスケア事業やビューティーケア事業、バイオ燃料事業、遺伝子/健康検査サービス事業、子供の健康改善事業を行っています。
バングラデシュの子どもたちの栄養問題解決を目指して創立された株式会社ユーグレナが注目しているのは、動物と植物の両方の特徴をあわせ持つ「ミドリムシ(微細藻類ユーグレナ)」です。
「ミドリムシ(微細藻類ユーグレナ)」
動物と植物の特徴をあわせ持つミドリムシには、人間に必要な栄養素がほぼ全て含まれていると考えられています。
株式会社ユーグレナでは栄養豊富なミドリムシに注目し、事業のあらゆる場面でミドリムシを活用しています。
同社ではこのミドリムシに含まれる豊富な栄養素を活用したヘルスケア商品、ビューティケア商品の開発や、「ミドリムシ(微細藻類ユーグレナ)」自体の研究開発も行っています。
株式会社Synspective
株式会社Synspectiveは、SAR衛星開発や衛星データ解析、業種や専門分野に合わせたソリューションの提供を行なっています。
データ解析やソリューション提供だけでなく、SAR衛星開発や衛星間ネットワーク構築などをまとめて担うことで、適切な相互作用を持ったシステムの構築が可能です。
小型SAR衛星「StriX(ストリクス)」
株式会社Synspectiveが開発した小型SAR衛星「StriX-α」は、民間の100kg級小型SAR衛星として日本初の画像取得に成功しています。
同社が開発した技術は、宇宙航空研究開発機構(JAXA)なども推進する技術でもあります。
Telexistence株式会社
Telexistence株式会社は、自動制御や遠隔操作によって動作するロボットの開発、提供を行っています。
ロボット利用場所や利用用途によって自動制御と遠隔操作を使い分けることで、顧客業務の効率的な省人化・効率化を実現しています。
独自AIシステムを搭載した新型ロボット「TX SCARA」
「TX SCARA」はAIシステムを搭載したロボットです。
大手コンビニチェーンでも導入され、商品陳列業務の代替を実現しました。これにより、店舗の人件費削減や労働力不足の解決を実現しております。
また、物流倉庫などで活用するための高度な認識・動作機能についても可能としていることから、今後さらに普及されることが考えられます。
エー・スター・クォンタム
労働力不足問題に対処する量子コンピュータソフトウェア開発に取り組むのがエー・スター・クォンタムです。
独自の計算処理技術は、産業界における組み合わせ最適化問題において既存のシステムより圧倒的に速く、優れた計算結果を出しています。
組み合わせ最適問題に特化したソフトウエアを開発
カナダのD-wave社やNECも商用化を発表している「アニーリングマシン」は、汎用計算を得意とする「ゲートマシン」に対し、膨大な組み合わせから最適解を導く作業に適しています。
エー・スター・クォンタムがアニーリングマシンを用いて開発したソフトウェアはテレビ広告の分野で成果をだし、日本郵便との実証実験においてもトラックやドライバーの大幅削減の可能性を示しました。
AMI株式会社
医療現場の変革を目指しているのがAMI株式会社です。
遠隔医療やAI機能の搭載など、現場の医師ならではの疑問や違和感を技術によって解決しています。
聴診器と心電図の情報を組み合わせる「超聴診器」
聴診器だけでも、心電図だけでも把握しきれない兆候をキャッチできる「聴診器と超音波の間」に位置するとされるのが超聴診器です。
これまで200年近く基本構造が変わってこなかった聴診器に革新をもたらすとして注目を集めています。
将来的に超聴診器に人工知能(AI)による診療アシスト機能を搭載することで医師が見逃してしまう部分も補う可能性にも期待が高まっています。
京都フュージョニアリング株式会社
京都大学発のベンチャー企業です。
フランス発の世界最大級のディープテックコミュニティHello Tomorrowで、特に有望な企業として「Deep Tech Pioneer」に選出されました。
核融合によるカーボンニュートラルな発電を可能に
核融合特殊プラント機器の開発に強みをもつ京都フュージョニアリングは、世界中の核融合プロジェクトに対して主要な装置やコンポーネントを供給するビジネスモデルを提供したことで世界中で大きな話題となりました。
世界有数の技術力を誇り、クライアントには英国原子力公社を始め全世界の核融合研究開発機関・企業が名を連ねます。
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ディープテックが抱える課題
ディープテックには、研究では成果が出てもなかなか実用化に至らないという企業にとってのリスクがあります。
特にディープテックスタートアップは研究開発に莫大な時間とお金がかかるため、資金不足も課題とされて来ました。
その点では、投資の機会は増加したことでチャンスも増えていると言えるでしょう。
後述しますが、政府も後押しする体制です。
しかしながら事業拡大に伴い資金調達の規模も比例して大きくなるため、資金供給量が少ない状況は依然として続いていると言えるでしょう。
解決策としては、国内のみならず海外の投資家から資金調達する試みを増やすこと、既存の株主がそのサポート体勢をとることです。
また、収益化までの道のりが長いという点もディープテック企業が抱えるリスクです。
研究コストが膨大なディープテック領域においては、イノベーションを産業化する際の障壁が他領域よりも高いのです。
企業にとってはリターンを得るために時間がかかることが障壁であると同時に、研究者にとっては研究成果を売り物にすることに対する抵抗感があり、これも課題だと捉えられています。
そこで世界中のさまざまな研究機関で、研究者に対して起業の知識やノウハウを提供することにより、市場への技術移転をスムーズにする取り組みも進められているのです。
ディープテックへの新制度
ディープテックベンチャー企業への融資や、債務保証制度について解説します。
経済産業省の債務保証制度
令和3年8月2日に施行された産業競争力強化法等の一部を改正する等の法律に伴い、新制度の申し込み受付も開始しています。
「革新的技術研究成果活用事業活動計画」認定のための申し込みで、指定金融機関も指定されました。
これはディープテックで量産体制を整えるために資金が不足しがちなうえ、金融機関で相談に乗ってもらえても融資には至らないケースが多いという実情を踏まえての措置です。
民間金融機関からの融資に対し、独立行政法人中小企業基盤整備機構が債務保証を行うという制度になっています。
なお、制度を利用するには経産大臣から事業計画の認定を受ける必要があります。
(参考:経済産業省『ディープテックベンチャーへの民間融資に対する債務保証制度』)
指定金融機関等
「革新的技術研究成果活用事業活動支援業務」への指定金融機関は次の通りです。
- ・みずほ銀行
- ・三菱UFJ銀行
- ・三井住友銀行
- ・静岡銀行
- ・あおぞら銀行
2021年9月に地方銀行としては初めて「ディープテックベンチャーへの民間融資に対する債務保証制度」の指定金融機関等に指定されたのが静岡銀行です。
上記金融機関等が、経済産業省の保証制度のもとに積極的に資金提供を行っています。
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ディープテックについて知り転職に役立てよう
本記事では、ディープテックの注目分野、ディープテックの概要や注目される背景、ディープテック企業の事例について解説しました。
ディープテックは、SDGs達成における課題解決にも必要不可欠な技術です。
先進的な技術であるために今後の注目度や社会貢献という面でも大きな役割を果たす可能性を秘めています。
そのため、ディープテックに関する技術そのものやディープテックを保有する企業は、今後ますます注目されるでしょう。
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