MedTech(メドテック)とは?ITによる医療の進化を事例つきで解説!
メドテックが医療をアップデートしてくれる?高齢者の増加により医療の需要が増大するなかで、メドテックへの注目度が増しています。本記事では、メドテックの活躍が期待される領域や具体的なサービスについて紹介していきます。将来性も期待できるメドテック業界について、理解を深めましょう。
目次
メドテック(MedTech)とは
非常に簡潔に説明すると、医療にITを導入することです。
比較的新しい言葉で、メディカル(medical)とテクノロジー(technology)を組み合わせた造語です。
IoTなどのIT技術を医療に活用し、情報技術を利用した医療やサービスを提供することを指します。
この度の新型コロナウィルスの世界的な流行を踏まえて、今注目の医療技術として期待を集めています。
メドテック業界の動向
オーストラリアのメドテック・アクチュエーターが日本に進出し、大阪に拠点を構える事で話題になっています。
主に医療・ヘルスケア分野のスタートアップ企業の育成・支援を行います。
また、東京工業大学と東京医科歯科大学の2つの国立大学が統合に向けた協議を始めた事も注目を集めています。
理工学系と医療系でトップクラスの大学が研究力の強化を目的として統合する事で、メドテック・ヘルステック領域での底上げに期待が集まるニュースとなりました。
期待される分野
インターネット上での医療サービスの提供
診断機器・医療機器などにIoTを搭載し通信技術を組み合わせ、インターネット上で情報の記録をするなど。
さらには医師や技師と直接つなげ、病院に行かずともインターネット上での医療サービスが受けられるようになります。
現在は新型コロナウイルスの影響で、外出しなくても診察できるオンライン診療の分野の開発が急ピッチで進められています。
医療機関と同じレベルの診療を受けられるオンライン診療を目指し、かつてないスピードで医療の技術の進化が行われているのです。
健康の自己管理
健康維持や増進などを目的としたモバイルデバイスやモバイルアプリを利用した自分自身で健康管理を行うことが可能です。
AI診断を利用し自分で管理を行うことによって、そもそも病院を利用する機会を減らし医療需要を抑えることにつながるのです。
新薬の開発
現在、IoTなどを用いて多くの詳細な人体の情報を集めることができます。
それを分析し新薬の開発に役立てるという分野も期待されています。
センサーで生活観察
日本の大手企業では国立の研究センターと共同で、軽度認知症障害を早期発見するシステムを研究すると発表しました。
すでに高齢者向け施設で、入居者の同意を得て実際に設置して研究されています。
ドアにセンサーを設置し不自然な時間に外出していないか、ベッドには就寝・起床時間・熟睡度合いを測り記憶するなど。
生活のリズムを把握し、収集したデータを分析。
そして軽度の認知障害が見つかった場合は医療機関での受診をうながすシステムです。
軽度の段階での発見に期待が高まる認知症治療の分野です。
ロボットによる効率化
産業用ロボットの出荷額や稼働台数が世界一の日本ですが、近年では欧米各国の効率化推進や中国などの投資参入によって導入台数ではすでに抜かれつつあります。
そこで、日本では政府が「ロボット革命」と言う戦略を立て、国内の研究機関が情報共有をしながら競争できる仕組みづくりを進めています。
これが医療機器の承認審査をより速くする事で、弱点とされて来た点の改善につながる事に期待されているのです。
日本と世界の違い
新型コロナウイルスのワクチン供給に際し、海外企業による市場独占によって日本の医療開発・承認のスピードが遅い事実が浮き彫りになりました。
メドテック分野においてもグローバル企業の比率が多いのは、日本では未承認の新薬や治療法が多い事が大きな理由のひとつです。
これは製薬会社における売り上げと研究開発費の関係を見てもその差が顕著に現れています。
世界企業…研究開発費が売り上げの20%
日本企業…研究開発費が売り上げの10%
ただし、メドテック分野においてはこの限りではありません。
世界企業…研究開発費が売り上げの10%
日本企業…研究開発費が売り上げの7%
世界企業に比べてもそのギャップが少ない事が分かります。
日本のメドテック(ライフサイエンス分野)への非営利団体や公的機関における特定目的別研究費の内訳が約20%と多く投じられていて、これはエネルギー分野(約15%)、宇宙開発(約13%)などと比較しても高い割合です。(参考:統計局「特定目的別研究費の分野について 」)
こういった事からも、今後の革新が期待できると言えるのではないでしょうか。
医療の進化
メドテックを活用し医師は医療の品質向上や効率化、人手不足の軽減を期待できます。
現在、メドテックが進んでいる分野は以下のようなものです。
・AIによる診断
・オンライン上での診療サービス
・患者の健康管理に利用できるモバイルアプリなど
・診療や人体のデータを蓄積し解析、それを基にした新薬開発
・治療を受けた患者の反応のデータ収集および分析と、フィードバック
技術革新の面では例えば、東京大学医学系研究科・工学系研究科の医用超音波技術をもとにした「リングエコー」という画像診断装置が株式会社Lily MedTechによって開発されました。
従来の乳がん検査はマンモグラフィを用いていたために避けられなかった痛みや放射線被ばくから解放してくれます。
AIは素晴らしい技術でこれからも発展の余地がありますが、医療というものは医師や看護師にしかできない仕事もあります。
例えば患者とのコミュニケーションや、総合判断・創造性などは経験を積んだ医師の技術や判断が勝ります。
これからは、医師とAIが得意分野を分担しつつ、医療を行なっていく時代になるでしょう。
医療の現場ではすでにメドテックを中心に、新しい医療が形成されはじめています。
医師は、これからは医療と同時にテクノロジーに詳しくなる必要があります。
医療機器業界の将来性
医療機器といっても、多種多様なものがあります。
MRIやレントゲン装置・内視鏡などの医師や技師向けのものから、家庭向けマッサージチェアや血圧計にいたるまで。
センサーを搭載しIoTに対応したものは幅広くあり、これからも増えていくことが予想されます。高齢化に伴う医療サービスの増加、技術の進歩などの後押しもあり、将来性は高い成長産業です。
医療機器業界の年収は業務や企業により、年収300万円から2000万円と幅広いです。転職を考えているのなら、自分が今何を求めているかよく見極める必要があります。
年収は低くともさまざまな経験を積みたいのか、経験を活かして上流工程からさらに上を目指し高収入を得たいのか。
現在自分の持つスキルとキャリアプランを見合わせて転職プランを練りましょう。
メドテックを支える技術
医療現場にITが導入され目覚ましい進化が起きました。メドテックを支える技術とはどのようなものでしょうか。
IoT
モノのインターネットと呼ばれる技術です。
いままでインターネットと縁がなかったモノをつなぎ、さまざまな情報を集め操作する仕組みのことです。
例えばレントゲン装置や血圧計などにセンサーを搭載しインターネットにつなぎます。
インターネットで収集され蓄積されたデータを分析し、その結果をアプリと連動させて自分で健康管理を行うことができます。
5G
移動通信システムのことで、通信速度が超高速で大容量のデータの送受信が可能になりました。
映像や音声などの通信のラグタイムはほぼないといっていいでしょう。
遠隔地からでもインターネットを利用しオンライン診療が可能になりました。
皮膚の色や傷の状態なども映像による色彩などの再現性を検証し、4Kの高精度の映像を送ることで診察が可能です。
これからますます発展していくことが見込まれます。
AI
人工知能のことで、昨今はAIドクターの導入も。中国やアメリカではすでに国家機関に認可されています。
日本でも大きな商社が資金を出し、医療情報システムを企画・発表していくようです。
医療現場の状況に合わせ、今後それぞれに適したAIを開発していくでしょう。
ガンの早期発見
AIにおける深層学習技術の目覚ましい発展により、エックス線画像診断などの精度が高くなってきました。
深層学習技術(ディープラーニング)はAIに学習させる方法のことです。
人間の脳神経回路をモデルにした多層構造アルゴリズムを用い、人間と同じようにAIが自ら考えて結果を決定します。
経験を積んだ専門医でも見逃す可能性がある小さなガンをAIが発見・判断できるようになったのです。
とくに乳ガンなどの検診では、AI搭載の機器を使うことによって受診時の痛みや恥ずかしさなどを解消できます。
受診に対する心理的な壁を取り除き、ガンの早期発見に役立っているのです。
もっとこの技術が発展すれば、ガンの兆候段階での発見が可能になるといわれています。
糖尿病網膜剥離の診断
アメリカの医療メーカーが開発した医療機器は、糖尿病網膜症かどうかの診断をAIが行います。
特別な網膜カメラで目を撮影し専用のクラウドにアップロードするだけで、AIによる診断が可能になりました。
この技術が広まることによって、医師が画像を確認し判断するより素早く診断結果をだせるようになる可能性が高いです。
現場の負担も患者の負担も軽減されていくでしょう。
医療機器のイベントや参加者とのマッチング
医療機器のイベント
医療機器のシンポジウムは盛んに行われていて、つぎつぎに素晴らしい研究結果や講演が行われます。
中にはピッチ形式で学生から企業まで様々なアイディアをプレゼンするベンチャーピッチコンテストなどもあります。
さらに優勝賞品が海外派遣プログラム、または最大1億円の事業化費用であるコンテストも開催されています。
また、医療機器の製造・設計に関する「Medtec Japan(メドテックジャパン)」という、アジア最大級の展示会があります。
2009年にスタートし、2022年に第13回を迎えたメドテックジャパンでは、毎年Medtecイノベーション大賞というものを決めて表彰しています。
ノミネート商品は原則として承認医療機器であることが条件なので、実際の製品の開発したてのものを見ることができます。
さまざまな技術を持ったエンジニアが集まるシンポジウムは、日本国内のみならず世界からも注目を集めています。
参加者とのマッチング
メドテックジャパンに代表されるようなイベントは、全国で医工連携が進められるにつれ増加しています。
開催者・参加者のニーズにこたえるサービスが、株式会社ユーワークスが開発を担当し株式会社考える学校が運営する「Medtech Station(メドテックステーション)」です。
このサービスでは、医療機器ビジネスセミナーや臨床ニーズマッチング会、商談会、展示会、医療ベンチャーピッチといったイベントの開催者と参加者が効率よくマッチングする事をたすけています。
まとめ
メドテックは、病院や医療の現場・医薬品・医療機器業界、医療に携わるすべての技術改革に他なりません。
地域医療、人手不足の解消などメドテックによって解決できる問題は多くあります。
課題もありますが、メドテックを導入する流れは今後ますます強くなることでしょう。
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