リスキリングの導入事例10社!企業が人材育成のために実施していることを紹介します。
「リスキリング」とは近年注目を浴びており、業務を進めるうえで必要な新しいスキルを「学び直す」ことを指します。企業内大学といった形で育成部門を設置する企業もあります。今回本記事ではリスキリングに注力している企業の導入事例を紹介を大公開いたします!さらにリスキリングが組織や人材にもたらすメリットなども紹介いたします!
目次
Web業界のリスキリング事例
ヤフー株式会社
事業紹介
ヤフー株式会社では、「PayPay」や「ヤフオク!」などのeコマース事業、「ニュース」や「GYAO!」などのメディア事業、検索広告やディスプレイ広告を展開する広告事業などを事業の軸にしています。
リスキリングへの取り組み
ヤフー株式会社では、プログラミング未経験者からエンジニアへのリスキリングを支援する「Yahoo!テックアカデミー」を開設しています。
プログラミング未経験者向けにWebエンジニアとして働くために必要なスキルを習得できる実践的なカリキュラムを提供しているのです。
自社内で優秀なエンジニアを採用・育成するだけでなく、これまで培ってきたノウハウを社外にも活用し、国内全体のIT人材不足の課題に取り組んでいるのが特色です。
株式会社ZOZO
事業紹介
ファッションECである株式会社ZOZOは、日本最大級のファッション通販サイトです。
リスキリングへの取り組み
人事制度や手当、働き方をアップデートした「ZOZO WORKSTYLE」を、2023年4月3日よりスタートしています。
その中の1つである「日々進歩手当」は、正社員を対象にリスキリングに使える手当を支給する制度です。
支給額は月に2,500円から始まり、企業への在籍期間が半年経過するごとに支給額が2,500円ずつ増加されます。
通信業界のリスキリング事例
ソフトバンク株式会社
事業紹介
ソフトバンク株式会社はコンシューマ事業、法人事業、流通事業、金融事業、ヤフー・LINE事業など行っている日本有数の大企業です。
リスキリングへの取り組み
2021年度から、人工知能(AI)が今後のビジネスに不可欠な分野になると位置付け、初学者向けのAI基礎eラーニングを開発し、全社員にAIの知識・スキル習得を促しています。
社員のAIリテラシーを底上げし、金融やECなどの非通信や法人事業の拡大につなげる狙いがあります。
KDDI株式会社
事業紹介
KDDI株式会社は総合通信事業者として、高速モバイルインターネットサービス、ケーブルテレビ、金融ビジネスなど幅広い通信事業を手掛けています。
リスキリングへの取り組み
社会課題の解決やビジネスの変革を目指すため社内大学「KDDI DX University」(以後KDU)を設立しています。
リスキリングを行うKDUでは育成プログラムとして、KDU人財マネジメントサイクル「4Dサイクル」の考え方を基に研修を設計しています。
また、DX人財として、5つの職種を具体的に定義し育成します。
2020年度から「KDDI版ジョブ型人事制度」といった職務領域を明確にする「ジョブ型」を取り入れており、これは専門領域(全30領域)の5つとして人事制度に組み込まれているのが特徴です。
広告業界のリスキリング事例
株式会社博報堂
事業紹介
株式会社博報堂は新聞、雑誌、ラジオ、テレビ、インターネット、アウトドアメディアといったメディアコミュニケーション領域の課題を解決する日本有数の広告代理店です。
リスキリングへの取り組み
マーケティング戦略構築や社会的なムーブメント創出などのため、またそういった人材を生み出すための推進力としてHAKUHODO UNIV.(博報堂大学)を設立しています。
HAKUHODO UNIVでは、以下のようなリスキリングへの取り組みを行っています。
- ・マーケットデザインビジネス研修
- ・戦略キャリアプログラム・イノベーション構想プログラム・専門人材育成施策
- ・ビジネススキルアッププログラム
- ・デジタルスキルアッププログラム
- ・職群別プログラム
株式会社電通
事業紹介
電通は博報堂と並び二大巨頭と呼ばれる広告代理店の大企業です。事業としては、特にTVコマーシャルに力を入れており、企業や商品のブランディング戦略の提案とその実現を果たす役割に注力しています。
リスキリングへの取り組み
人材サービス会社のテクノプロと提携し、今後5年間で500人規模のDX人材を獲得・育成すると発表しています。
テクノプロは、技術者人材リソースの中から、電通国際情報サービス(ISID)、電通デジタル、電通などDJN各社のニーズに適した人材を派遣します。
これらの人材は、電通グループでのOJTで実践経験を積んだ後、正式に事業に参画するという流れです。
ISIDは、テクノプロとの協業トライアルを実施し、約15人のDX人材を獲得しました。
SIer業界のリスキリング事例
富士通株式会社
事業紹介
同社は通信システム、情報処理システムおよび電子デバイスの製造・販売ならびにそれらに関するサービスの提供が事業の軸となっています。
リスキリングへの取り組み
同社では、国内のグループ企業に在籍するおよそ12万人に対しリスキリングを実施すると発表し、リスキリングへの投資額は2020年からの5年間で5,000億円から6,000億円にものぼるそうです。
デジタルラーニングプラットフォームを活用して、従業員が自分のペースで学習できる環境を提供しています。
学習コンテンツは、AIやIoT、クラウド技術などの分野に関するものが豊富に用意されており、従業員は必要なスキルを自由に学ぶことができます。
株式会社日立製作所
事業紹介
同社の主な事業は家電・空調機器などのプロダクト事業や保守サービスの提供に加え、デジタル技術を活用したソリューション提供をしている企業です。
リスキリングへの取り組み
日立は2022年10月、人工知能(AI)を活用した社員のリスキリングを促す教育システム「学習体験プラットフォーム(LXP)」を実装しました。
約1万7000のオンライン講座と12言語の学習に対応しており、およそ3万人が利用しているそうです。
学習体験プラットフォーム(LXP)の最大の魅力はなんといっても「強化したいスキルを登録すると、AIが最適の教材を推奨してくれる」という点です。
事業会社のリスキリング事例
サントリーホールディングス株式会社
事業紹介
ミネラルウォーター・コーヒー・茶・炭酸飲料・スポーツ飲料、健康飲料など主に清涼飲料や食品の製造・販売事業を行っている企業です。
リスキリングへの取り組み
サントリーにおいても自社内大学「サントリー大学」を設置しています。
サントリー大学では、「理念学部」「経営響創学部」「基盤人材学部」と大きく3つの学部に分かれており、創業の精神や経営戦略とリンクしながらカリキュラムを学べます。
三菱地所株式会社
事業紹介
オフィスビルの開発や運営管理、商業施設の開発企画などに取り組むデベロッパーです。
リスキリングへの取り組み
同社は2022年10月から本格的にデジタル人材の育成プログラムを実施し、デジタル技術を生かした業務改革や新規事業創出の全体設計ができるようにすることを目指しています。
たとえば、ファネル分析やSEOなどのデータ分析講座、外部のeラーニング教材を使ったDX講座の提供しています。
国外のリスキリング事例
AT&T
AT&Tという通信会社は、アメリカでリスキリングの先駆者として知られています。
2007年のiPhoneの登場から、スマートフォンの拡大、通信の高速化などによって危機に見舞われた企業です。
2008年に社内調査を行った時点で、従業員25万人のうち10万人が就いていたハードウェア関連の事業は当時収益の柱でした。
しかしその事業が10年後には消失すると発表し、その10万人に対し約1200億円を投資して、従業員10万人をリスキリングするプロジェクト「WORKFORCE2020」を開始しています。
リスキリングへの取り組み
- ・社内ジョブの整理
- ・スキルの可視化と将来スキルの明示
- ・報酬体系の導入
- ・オンライン学習コースの開発と提供
- ・社内インターンシップ制度の整備
- ・キャリア開発支援ツール「キャリアインテリジェンス」の整備
- ・学習支援プラットフォーム「パーソナル・ラーニング・エクスペリエンス」提供
この結果、多くの従業員が配置転換に成功し、リスキリングをした従業員に関しては昇進が1.7倍、離職率が1.6倍低下といった結果を残しています。
Amazon
Amazonは2019年に「アップスキリング(Upskilling)2025」と呼ばれるプロジェクトを開始しました。
当初約760億円とされていた投資額でしたが、約1300億円まで増額しており、それほどにリスキリングの重要性を高くとらえていたと言えるでしょう。
企業によるリスキリングプロジェクトとしては最大規模です。
特にブルーカラー社員のアップスキリングに注力しています。
リスキリングへの取り組み
- ・Associate2 Tech
倉庫に勤める社員がITサポートの仕事に就くための90日間の無料プログラムです。
- ・アマゾン・テクニカルアカデミー(ATA)
最短9ヶ月でソフト開発エンジニアになれるソフトエンジニア養成プログラムです。オンライン講習を無料で受けることができます。
- ・機械学習大学(MLU)
技術者向けの機械学習を習得するプログラムです。
- ・メカトロニクス&ロボティックス見習いプログラム
自動化によって職を失う可能性の高い倉庫職員に対し、ロボットの保守設備やメンテナンスのためのスキルを習得してもらうプログラムです。
Walmart
Walmart社がリスキリングに着手したのは2016年のことでした。
掲げる「sustainability」「opportunity」「community」の三本柱のうち、リスキリングに直結しているのは「opportunity」です。
平等な雇用機会の提供、社内でのステップアップ、結果として従業員の生活を豊かにする体制の整備に10年以上前から取り組んでいました。
リスキリングへの取り組み
特技を伸ばすことはもちろん、他分野でも働けるようなトレーニングを実施しました。
例えば女性に対する農業や工業のプログラム提供など、アメリカ国内にとどまらず世界中のWalmart社の従業員に対し行うことで長期的に学ぶ環境を与えています。
教育方法は参考書を渡すようなものではなく、対面やオンライン、そして近年ではVRも導入されるようになりました。大規模セールや災害時の対応など、ゲーム感覚で楽しんで学べるような取り組みです。
Walmart社のリスキリング投資額は約22億円です。
リスキリングに取り組んでいるIT人材はどれくらいいる?
75%のIT人材がリスキリングの必要性を実感
弊社ギークリーで、エンジニア・クリエイター・ゲーム業界への転職希望者に、「業務を行う上でリスキリングは必要だと思うか?」というアンケートをとり、75%の方が必要だと思うと回答しています。
例えば下流工程から上流工程へのエンジニアの転職など、将来を見据えた転職を考えている人は、リスキリングに注目している様子が見受けられます。
エンジニアやクリエイティブ職はリスキリングを重要視している
続いてGeekly(ギークリー)の調査で、「業務を行う上でリスキリングは必要だと思うか?」という質問に対し、エンジニアやクリエイティブ職の方々ほど、「リスキリングは必要だと思う」と回答しています。
エンジニアやクリエイティブ職の方々はスキルアップはもちろんですが、さらなるキャリアアップのため、転職活動を前提としたリスキリングを重要視していると考えられます。
日本の在職者の学び直しに対する支援策
先進国におけるひとりあたりの賃金の伸び率の低さは内閣でも問題視されており、対策が進められています。
調査によれば、英国、米国、ドイツ、フランスではひとりあたりの実質賃金が右肩上がりで推移しているのに対し、日本ではほぼ横ばいです。
雇用制度の見直しも含め、スキルアップが正当に評価されるための制度導入の動きに期待が高まります。
なお、日本の在職者向けの学び直し支援策は、企業を通じた支援が年間771億円で全体の75%を占め、個人への直接支援は年間237億円で全体の25%を占めています。
(参考:内閣官房『令和5年2月 基礎資料』)
リスキリングをおこなうメリット
業務の効率化ができる
リスキリングの結果、組織の、業務フローの改善や自動化、スピードアップなど効率化を図ることができます。
その他ビッグデータの取り扱いや、データの一元化で情報管理や情報共有が簡易になるといった効果もあります。
事業の新しいアイディアが生まれやすくなる
リスキリングにより新たな知識が社員に蓄えられ、スキルがアップデートされ、その結果として新たなアイディアが生まれやすい土壌が育ちます。
また、新たな事業の立ち上げや既存事業のマンネリにストップをかけ、改革を行うきっかけにも繋がるのです。
企業の文化や社風を継承したまま成長できる
組織に新たなスキルや知識をもたらすために、事業に新しい人材だけを配置した場合、今まで築き上げてきた社風や伝統、継続していきたい仕事のやり方なども変わってしまう場合があります。
しかし、自社員をリスキリングすることで、企業を知り尽くした既存の人材をそのままアップデートすることができます。
つまり、リスキリングを行うことで自社の強さを生かしたまま、あらたな事業を活性化させる効果が期待できるのです。
定期的に自分のスキルの棚卸しをしよう
働き方の多様性や人手不足の解消のため、リスキリングは今後ますます重要になってくると予想されます。
企業で人材を育てていく、学ばせて組織に新しい風を吹き込もうといった機運が高まっているともいえます。
しかし、リスキリングの効果を最大限に活かすのも自分次第です、
自分のスキルの棚卸しをしてみて、足りないところや伸ばしたいところを性格に把握していてこそ、よりリスキリングの効果がもたらされるというものです。
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