スリープテックの市場規模を解説!多くの企業が参入する現状とは
IoTの進歩によって様々なものがインターネットと連携している中で、寝具もその対象の一つです。このコラムではスリープテックの市場規模やスリープテックの今後の可能性について解説しますので、この業界に転職を考えている方は参考にしていただければ幸いです。
目次
スリープテックの市場規模
スリープテックとはどういった業界で、どの程度の市場規模があるのでしょうか。
転職先として考える場合、業界の将来性の有無はとても重要です。
まずはスリープテック業界の市場規模を確認しましょう。
プラス面
スリープテックが抱える需要は非常に大きいとされています。
寝具新聞社の調査によれば国内の市場規模は1兆2000億円を超える予想です。
潜在市場規模に至っては3兆円から5兆円にも達するといわれています。
多種多様な分野の企業がスリープテック市場への進出を検討しているほか、すでに製品を開発して販売を行っている例もあります。
マイナス面
睡眠障害や睡眠不足は個人の健康を脅かすだけではありません。
従業員の作業効率の低下に直結するため、ビジネスや経済において大きな妨げとなります。
アメリカの世界的なシンクタンクであるランド研究所が発表した試算によれば、日本の経済損失額は最大で年間15兆円にも及ぶとのことです。
スリープテックの活用は、企業にとっても切実な課題だといえるでしょう。
スリープテック市場への参入が増えている
スリープテックは将来性のある市場だけに、さまざまな業種からの参入が盛んに行われています。
その一例がANAホールディングスです。
航空会社と睡眠とは一見関連が薄そうですが、国際線ともなれば10時間以上のフライトが珍しくありません。
快適に寝て移動できるかどうかは旅客にとって重要な関心事です。「時差ボケ」の問題を緩和する意味でも、快適な睡眠の提供は航空会社にとって重要なサービスに位置づけられます。
また家電メーカーは入眠時刻に合わせてゆっくりと暗く、起床時には少しずつ明るくなる照明を開発・販売しています。
音響メーカーはノイズをカットするイヤホンやヘッドホンの製造に力を入れています。
既存のメーカー以外も、人間の視覚・聴覚・嗅覚に働きかけることで快適な眠りを得られるようにする商品の開発を進めています。
IoTの進歩により寝具と電化製品の連携や寝具のIoT化も進んでおり、ますます市場の規模は増大しているといえるでしょう。
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スリープテックの可能性
スリープテックにはどのようなテクノロジーが使用されているのでしょうか。
改めてスリープテックについて解説していきます。
スリープテックの定義
スリープテックとは、ITなどのテクノロジーを駆使することによって人間の睡眠データをセンサーで計測・記録・分析し明らかにすることを指します。
広義では、それによって得られた結果を活用して快適な眠りを実現することまでを含みます。
以下では広義の意味に沿ってスリープテックの可能性を考えていきます。
なぜ今、スリープテックなのか?
近年スリープテックが注目されている理由は、現代人の慢性的な睡眠不足の解消に繋がるからです。
理想的な睡眠時間は8時間といわれていますが、日本の現状はどうでしょうか。
2020年を前に国が調査を行った結果、日本の成人の約40%が一晩に6時間未満しか睡眠をとっていないことが判明しました。
しかし、多忙な現代人が睡眠時間を延ばすのには限界があります。
そこで睡眠そのものの質を高めるスリープテックがクローズアップされ始めたのです。
スリープテックの効用
スリープテックが解決する睡眠の悩みについて紹介します。
「寝つき」の問題
睡眠障害の問題が語られる場合、ほとんどは「寝つき」を良くすることに重点が置かれます。
実際にこの分野の研究は比較的進んでおり、睡眠薬を適切に服用することである程度改善されるようになりました。
睡眠薬は個人の体質に合わせてさまざまな種類のものが開発されています。
ただ、耐性によって今までの薬が効かなくなったり、依存症になったりするという課題は解決されないまま現在に至っています。
「寝起き」の問題
一方で、「寝起き」の問題は後回しにされがちであり、睡眠薬の副作用で昼間まで眠気が残るといった症状を訴える人もいます。
そのため眠りの質そのものを改善して目覚めを快適にするスリープテックに大きな期待が寄せられているのです。
質の良い睡眠は免疫力や記憶力を向上させるほか、認知症のリスクを低減させる効果があるとの報告もあります。
企業同士の連携
スリープテック市場への参入企業は増えていますが、企業間の激しい競争が行われるほどではありません。
新興分野であり、スリープテックのサービスを一から十まで自社で完結するのはまだ難しい状況だからです。
むしろ異業種間での連携を活発化させる動きが見られています。
例えば前述のANAは、睡眠評価デバイスや解析アルゴリズムの開発で定評のあるニューロスペースと提携し、時差ボケ調整アプリを提供しています。
また寝具・住宅・家電メーカーが連携して行っているのが、家一軒全体をスリープテック化して提供するという試みです。
寝具メーカーの取り組み
航空会社等だけでなく、寝具メーカーもスリープテックに力を入れています。
大手寝具メーカーが取り入れているスリープテック事業を紹介しましょう。
ハード面
スリープテック市場と切っても切れない関係にあるのは、何といっても寝具メーカーです。
長年、快適な睡眠を顧客に提供することを目指して成長してきた企業ですから、これまでの実績に対する自信を持っています。
寝具メーカーが開発したスリープテック商品として、高性能自動運転ベッド「アクティブスリープ」例に出しましょう。
寝具メーカーが医療や介護の分野で得たノウハウを結集させた商品です。
具体的には、スマートフォンにダウンロードした専用アプリを使い、ベッドの背中や足の部分の高さが自由に調整できます。
マットレスの角度は1度刻みで設定でき、自分に最も合った姿勢を保存しておくことも可能です。
さらに睡眠状態や心拍数を確認し、寝返りが打ちやすい平坦な形状へとマットレスを徐々に変化させる自動運転機能も備えています。
加えて、アプリで起床時刻を指定しておけば、約30分前から背中が徐々に起き上がり、自然な目覚めを提供してくれます。
まさに入眠から睡眠・起床までを一貫してサポートしてくれるのです。
ソフト面
「アクティブスリープ」がハード面のテクノロジーの結晶だとすれば、ソフト面での代表格は「スリープマスター」でしょう。
寝具のプロフェッショナルが店頭で睡眠に関する悩みの相談に応じるというサービスです。
睡眠そのものだけでなく生活習慣や食事、寝室の環境や寝具についてもアドバイスを行っています。
さらに1,000円で貸し出される小型活動量計で睡眠データを1~2週間ほど計測し、店頭でアドバイスする「睡眠環境解析サービス」も提供しています。
まとめ
スリープテック業界は参入企業の多さも手伝い、転職先として多くの選択肢がある業界だといえるでしょう。
最後に、スリープテック市場の将来について解説いたします。
スリープテック市場の将来
近年テレワークの効用が広く認識されるようになってきました。
直接顧客に会わなければ成立しないビジネスも多数存在するので、出社や出張の必要性が完全になくなるわけではありません。
しかし社会問題の一つである通勤ラッシュが緩和されることから考えて、コロナ後も在宅勤務が奨励されると予測されます。
一方で、運動不足に陥りがちな現代の日本人にとって、通勤ラッシュは「必要悪」という側面を持っているのも事実です。
朝に日光を浴びることで体内時計を正常に保ち、体力を消費することで寝つきが良くなります。
在宅勤務の場合はどうしても日光や運動からは遠ざかってしまうでしょう。
またテレワークに不可欠なパソコンなどの電子機器は、覚醒作用を持つ光を発します。
そのためこれまで以上に睡眠障害や睡眠不足が増加すると予想されているのです。
働き方に大きな変化が生じない限り、スリープテック市場は今後とも拡大すると考えられます。
最後に
スリープテック市場が拡大すれば、それと並行して関連企業への転職機会も確実に増加します。
様々な企業が選べる喜びは「選べない」悩みに直結するかもしれません。
スリープテックはこれからますます成長する業界です。
自身の経験やスキルがどんな場面で活用できるのか、あるいは活用できる可能性があるのか、見極めるのは難しいでしょう。
スリープテック業界に転職したいとお考えなら、ぜひ転職エージェントにご相談ください。
企業の動向を踏まえて、ご自身の経験が活かせる道をご提案します。
「睡眠不足」という社会課題を解決できる人材として転職を成功させましょう。
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