スーパーアプリとは何か解説!スーパーアプリは日常生活をどう変える?実際の事例や今後の動向について解説します
スーパーアプリとは、1つのアプリの中に複数のアプリが搭載されたアプリです。ユーザーエクスペリエンスを自然な1つの流れに統合でき、様々なビジネスサービス、生活サービスの利用がよりスムーズになるため、アジアを中心に世界中でニーズが高まっているアプリです。開発に必要なスキルを持った人材も転職市場で価値が高まる可能性があり、今後も業界動向に注目すべきテクノロジーです。
目次
スーパーアプリとは
スーパーアプリとは、1つのアプリの中に複数のアプリが統合されているアプリです。
「スーパー」というと「すごい、特別な」というイメージですが、様々なアプリ群を統合するプラットフォームのような役割を果たします。
私たちは普段、スマートフォンを使って以下のような様々なサービスを利用しています。
・メッセンジャー
・SNS
・インターネット通販
・送金、振替などの金融サービス
・タクシー、鉄道、飛行機などの交通機関予約、チケット手配
・ホテルの予約
・音楽ライブや演劇公演などのチケット予約
・マップ
スーパーアプリは起点となるプラットフォームアプリをインストールすれば、ビジネス・日常生活に必要なサービスを、それ1つで完結できます。
上記の例ですと、メッセージを送ることや口座への送金、ホテルやタクシーの予約までが一つのアプリ内=スーパーアプリ内で完結します。
従来のアプリ利用
PCを使ったインターネット体験やその流れを引き継いだスマートフォンでのユーザーエクスペリエンス(UX)は、分断されているのが課題でした。
例えば、私たちが興味を持った音楽ライブに行く際にPCを使って情報収集するなら、次の3ステップが一般的です。
1)ブラウザで検索して情報収集
2)ライブのチケット販売サイトで購入
3)交通サービスのチケットが必要な場合に別サイトで購入
少なくとも3つのページを渡り歩く必要があり、とても不便です。
スーパーアプリを利用したUX
スーパーアプリを利用したUXは、分断されず1つの流れの中で完結します。
スーパーアプリは情報収集アプリ、チケット購入アプリ、交通サービスアプリが子アプリのように統合されているからです。この子アプリはミニアプリと呼ばれ、他のサイトやアプリを起動させることなく、ライブのチケット購入を完結させてくれます。
スーパーアプリが解決する課題
スーパーアプリは、サービスを受ける時に必要な複数アプリの利用をスムーズにしてくれます。
スマートフォンの普及に伴い、アプリは生活に欠かせません。iPhoneのアプリをダウンロードできるApp Storeには、常に200万をこえるアプリが登録されています。
しかし、日々便利なアプリがリリースされているにもかかわらず、私たちはそのすべてを活用できているわけではありません。日常的に利用するアプリの数は10に満たず、長期間アプリを1つも追加しない人も珍しくないのです。
スーパーアプリは突発的に必要になるアプリが集約されているため、都度インストールする手間が省けるのが魅力です。
スーパーアプリのメリット
スーパーアプリは、ユーザーとサービスを提供する企業の双方に数多くのメリットをもたらします。
1つのアプリで完結
スーパーアプリは複数アプリを立ち上げたり、ページを遷移したりする必要がないシームレスな利用が可能です。
複数アプリを必要とする煩わしさからユーザーを解放し、利便性を高めます。企業にとっては知名度を高め、企業価値向上につながります。スマートフォンの画面上にあるアイコンも少ないので、操作もよりシンプルです。
多くのユーザーを獲得
ユーザーに1つの流れでUEを提供できるということは、企業にとってシェア独占のチャンスでもあります。
スーパーアプリ先進国である中国では「財布はなくてもいいが、WeChatがないと生活できない」としばしば例えられます。
WeChatとは中国発のスーパーアプリです。巨大市場である中国で多くのユーザーを独占することで、ビジネス面のメリットの大きさが実証された成功事例として知られています。
新しいビジネスを展開していく際にもユーザーを独占しやすく、ビジネスを有利に進めることができます。
スマートフォンの消耗が抑えられる
スーパーアプリの利用は、スマートフォンそのものの消耗を抑えられます。
インストールするアプリが少ないため、端末のストレージ容量が圧迫されません。また、バックグラウンドで動いているアプリも少ないため、バッテリー消費が少なくエコにもつながります。
サービスを提供する企業にとっても、大元となるプラットフォームアプリさえアンインストールされなければ問題はありません。
個人情報管理がスマート
スーパーアプリは、サービス利用時、認証・決済手続きに必要な個人情報登録が1回で済みます。
例えば、従来の流れで旅行をする場合、ホテル・飛行機・鉄道・レジャー施設など、様々なサービスの予約・チケット購入が必要でした。
スーパーアプリは、それぞれのチケット購入ごとに必要なログイン情報入力、個人情報登録、決済手続きがショートカットできます。つまり、サイトごと、アプリごとに異なるアカウント名・ID・パスワードを管理する手間から解放されます。
ユーザーファーストのUEを考える上で最も重要な「煩わしくない」をクリアできるのが、スーパーアプリの魅力です。
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アジアで成功しているスーパーアプリの事例
成功事例として知られているスーパーアプリは、アジア発が多い傾向です。
地力を持った企業がメッセージングアプリや生活サービスにかかわるアプリを一気に統合し、トップシェアを独占しました。欧米ですでに成功したビジネスモデルがアジアで徹底的に模倣されたことが成功の要因です。
特に中国の場合、欧米発のアプリが規制されているのも普及背景として大きな要因でしょう。また、ユーザーに焦点を当ててみても、アジアでスーパーアプリが普及した土壌が整っていたことがわかります。
スーパーアプリが席巻しているアジアの国々は、PC体験の少なさが特徴です。多くの人が、スマートフォンなどモバイル系ガジェットで初めてのインターネット体験をしています。スマートフォンだと複数アプリをいくつも立ち上げるより、1つのアプリ内ですべて完結する方が便利です。
また、安価なスマートフォンだと複数のアプリのインストールが、スペック上難しいということもあります。
中国:WeChat
WeChatは中国で生まれたメッセンジャーアプリで、およそ13億人が利用しています。
中国では1日でWeChatしか起動しないという方もいるほどで、インターネット通販をはじめ、ゲームや銀行サービスの利用もできます。
※補足:プラットフォームアプリ内で動作するミニアプリは、WeChatのみ「ミニプログラム」と呼ばれます。
中国:Alipay
Alipayは、電子マネー決済サービスとして中国で生まれました。紐づけられるミニアプリは100万個以上、中国を中心に13億人のユーザーがいます。公共料金決済、医療サービス予約、保険の加入契約などが可能で、プラットフォームとしての機能も十分満足できるUIです。
銀行口座やクレジットカードともリンクしていて、チャージもAlipay上でできます。日常生活で現金を持ち歩く必要がなくなるようなスーパーアプリです。
インドネシア:Go-Jek(ゴジェック)
Go-Jekは配車サービスアプリが発展し、スーパーアプリ化しました。
宅配便の手配、出前注文、電子マネーアプリも搭載し、インドネシア国内で大きなシェアを占めています。
利用環境を整えやすい大型店舗だけでなく、個人経営の小さな店舗でも決済方法として採用するところが増え始めました。
アメリカ企業の動き
ITビジネスで世界をけん引してきたアメリカ企業ですが、スーパーアプリ市場では遅れを取っています。元々PCを使ったインターネット体験が浸透していて、複数アプリケーションによるマルチタスクが普及していたためです。
しかし、既存のITビジネスを脅かす存在として注目されるアジア企業に対抗するため、アメリカでもスーパーアプリ化が進んでいます。アメリカのスーパーアプリ化の動きで特徴的なのが、BtoBの傾向が強い点です。
例えばMicrosoftは、Word・Excel・PowerPointを1つのアプリに統合したアプリをリリースしています。Officeソフトは元々圧倒的シェアを占めているビジネスアプリケーションで、UIになじみがあるユーザーも多くいます。
さらに、GoogleもGoogleドライブなどを統合するスーパーアプリ化の動きが報じられていて、今後注視すべき国の1つです。
日本企業の動き
アプリ開発に限らず、日本はITビジネスで米中に大きく遅れを取っている状況です。元々ガラパゴス化しやすい傾向がある市場ですが、その中でも徐々にスーパーアプリ化の動きが出始めています。
特に話題になったのが、LINEとヤフーの経営統合を報じるニュースです。
2020年8月4日に公正取引委員会が承認し、トップシェアを誇るスーパーアプリの対抗軸となりえるか注目されています。LINEはすでにスーパーアプリ化し始めていて、お得なクーポン獲得、家計簿、金融サービスがミニアプリとして搭載されています。メッセンジャーアプリとしてもユーザーが多く、起点となるプラットフォームアプリとして十分可能性があります。
ヤフーもPaypayで一定のユーザー獲得に成功していて、傘下にある銀行や保険サービスをPayPayに集約していく方向性です。戦略面のすり合わせが必要なものの、成功すれば国内のパイオニアとして業界トップシェアを独占できる可能性が高いと見られています。
LINE・ヤフーの他にも、NTTdocomoやKDDIがスーパーアプリ化を進めていて、米中に続く対抗軸となるか注目されています。
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スーパーアプリ開発に携わる人材に求められること
スーパーアプリの普及は今後進んでいくことが期待されていて、開発に携わる人材が転職市場で主役になる可能性もあります。
ユーザーが求めるサービスの「動線」を見極める
スーパーアプリの開発で最も意識しなければならないのが、ユーザーがサービスを利用する時の動線です。
例えば、インドネシアで成功したGo-Jekは、現地でサービスを利用する人の動線を考えたからこそ成功したと言えます。インドネシアでは、バイクタクシーがメジャーな交通手段で、乗る度に値段と行き先の交渉をしなければいけない煩わしさがありました。
Go-Jekは初めから行き先と料金がアプリ上に明示されていて、相乗りなど現地ニーズをとらえたサービスも搭載しています。アプリを起動してから決済に至るまでの動線の中で、どこに煩わしさを感じているのか、的確に捉えたからこその成功と言えるでしょう。
スーパーアプリ開発ではターゲットのサービス利用動線を見極め、ニーズを的確に捉えることが成功の第1歩です。開発現場でユーザーニーズ分析に当たるマーケター、ユーザーニーズを的確にUIデザインに落とし込めるエンジニアの活躍が予想されます。
セキュリティ
日本でスーパーアプリを開発する上での課題として、サイバー攻撃によるリスクは見逃せません。
特に日本はインターネット上での個人情報開示に抵抗感を持つ人が多く、位置情報共有に対しても比較的ハードルが高いです。大企業の電子決済システムへの不正アクセスや口座の不正利用といった問題も生じており、スーパーアプリの普及自体に時間がかかるという見方もあります。
アプリ開発を進める上でも、セキュリティ対策はユーザー獲得のキーポイントとなります。スキルを持ったエンジニアにとっては、転職市場で評価を高めるチャンスです。
まとめ
世界のITサービスはスーパーアプリ化の方向性に進んでいますが、現状、国境を越えてシェア独占しているアプリはありません。
メッセンジャーアプリの分野、電子マネー分野でシェア率の高いアプリはありますが、それぞれの得意分野にとどまっている状態です。スーパーアプリとして圧倒的な強さを持つアプリはまだ現れていないため、今後、シェア争いはますます激化していくでしょう。
スーパーアプリ開発に参入する企業や携わる人材も、転職市場でニーズが高まる可能性があります。転職を考えている方は、早めにスーパーアプリ関連の知識・スキル習得を始めると、転職市場での優位性獲得につながります。
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