情報処理サービス(SI)業界にはどんな仕事がある?職種や業界の将来性、大手企業の売上ランキングも紹介します。
情報処理サービスは、ビックデータやセキュリティなどを扱う、近年のIT技術において欠かせない業界です。需要が高く将来性もあり、エンジニアの転職先として注目を集めています。今回は、情報処理サービス業界の概要や注目の分野・職種などを解説します。
目次
情報処理サービス(SI)業界とは?
情報処理サービス(SI)業界の構造と主な事業内容
情報処理サービス業界とは、情報システムに関する包括的なサポートを提供する業界のことです。
情報システムのコンサルティングから開発、運用・運営まで、手掛ける業務は多岐にわたります。
顧客のニーズに合わせた包括的なソリューションを提供するために、階層的な下請け構造によって業務が展開されているのが特徴です。
一次請け企業がシステム提案や基本設計などを行い、二次請け企業が詳細設計を実施します。最後に三次請け企業が開発実装や保守などを行うのが一般的です。
情報処理サービス(SI)業界の分類
情報処理サービス業界の企業は、主にメーカー系・ユーザー系・独立系の3つに分かれます。
以下、それぞれ詳しく解説します。
独立系SIer
独立系SIerは、親会社やグループを持たずに独自のシステム開発事業を展開する企業です。
親会社の制約を受けずに自由に活動できるため、柔軟性があります。自身のアイデンティティを存分に発揮できるのが魅力です。
独立系SIerのトップ企業のひとつである大塚商会の年間売上高は、8,518億円と大規模な数字を誇っています。
AI・IoT活用やセキュリティなど、多岐にわたる分野で高品質なサービスを提供しており、幅広い業界からの需要を獲得している企業です。
また、独立系SIerは市場での競争が激しく、技術革新に敏感な環境で事業を展開しています。
常に最新の技術とトレンドに対応し、顧客のニーズに応える高度なソリューションを提供することを重視している分野です。
ユーザー系SIer
ユーザー系SIerは、主に大企業の保険会社や銀行の情報システム部門向けにサービスを提供する企業です。
クライアント企業と強力なつながりを持ち、外部からのプロジェクトをメインに受け入れています。
ユーザー系SIerの代表的な企業であるNTTデータは、年間売上高が2兆5,519億円と日本のSIer企業の中でもトップクラスに高い売上を記録しています。
大手企業向けに高度な情報システムソリューションを提供し、その信頼性と実績から多くのプロジェクトを受注している企業です。
メーカー系SIer
メーカー系SIerは、コンピューターやハードウェアを製造するメーカーの情報処理部門やソフトウェア開発部門から分離して独立したSIer企業のことです。
親会社のハードウェアと組み合わせたソリューションを提供する点が特徴で、製品とソフトウェアの連携を得意としています。
メーカー系SIerの中でもトップクラスの富士通は、年間売上高3兆354億円を誇る大企業です。
スーパーコンピューター「富岳」をはじめ数多くの高品質なサーバー製品を提供し、製造業から金融業、流通業など多くの業界にサービスを提供しています。
情報処理サービス(SI)業界で活躍できる職種
エンジニア系職種
プログラマー
プログラマーは、プログラミング言語を用いて設計書に沿ったシステムやソフトウェアを実装する仕事です。
一般的にエンジニアというと想像される業務内容にあたるでしょう。
プログラミング言語スキルはもちろんですが、実務にはプログラミング理論への理解やバグを見つけるためのデバッグスキルといったハードスキルと、論理的思考力やコミュニケーション能力といったソフトスキルもバランス良く兼ね備えていることが求められます。
情報処理業界でのキャリアをスタートさせるにあたり、まずはじめに選ぶ人が多い職種だと言えます。
業務を行いながら、システムアーキテクチャ、ミドルウェア、システム開発手法、ネットワークの知識を身に付けることでキャリアアップも可能です。
システムエンジニア
開発現場において、要件定義、基本設計、詳細設計といった上流工程を担うのがシステムエンジニアです。
具体的にはクライアントへのヒアリングと課題の洗い出し、システム全体の基本的な設計と骨組みを作ってから細かな設計を行い、プログラミングを指示します。作成されたプログラムのテストを行いリリース後の運用・保守とその業務内容は多岐に渡ります。
プログラミングを自分で行うこともあります。
そのため、顧客折衝力や課題解決能力のほか、プログラミング言語のスキルも持ち合わせていると良いでしょう。提案力やマネジメントスキルがあると業務に役立ちます。
インフラエンジニア
OS・ネットワーク・サーバーのようなシステムの基盤に携わる仕事です。そのため、インフラエンジニアはサーバーの知識・スキルや設計スキルといった技術スキルが欠かせません。
また近年需要が高まっているセキュリティやクラウドサーバー、仮想化の知識・スキルのほか、ヒアリングスキルや提案スキルといった顧客折衝の能力、プロジェクトマネジメントスキルのようなヒューマンスキルがあると、インフラエンジニアとして重宝されるでしょう。
未経験から転職する場合は「ORACLE MASTER」「Linux技術者認定試験」「AWS認定」などの資格を取得することで、自己研鑽のアピールに繋がるでしょう。
セキュリティエンジニア
あらゆる分野でサイバー攻撃への警戒が高まる近年、セキュリティエンジニアは注目が集まる職種のひとつとされています。
セキュリティ対策の観点からサーバー・ネットワークの設計・構築・運用を行い攻撃を防ぐだけでなく、セキュリティインシデントの際に対処を担う仕事です。
インフラやITの基礎知識を身に付けることから始め、サーバーやOS、ネットワークに関する知識を学び、「情報処理安全確保支援士」などの関連資格について勉強することで段階的にスキルを身に付けると良いでしょう。
アプリケーションエンジニア
アプリケーションエンジニアに求められるスキルは、開発するアプリケーションのプラットフォームによって異なります。
基本スキルとしてHTML、CSS、Java、PHPの知識が必要です。そのうえで、アプリ作成のためのプログラミング言語スキルを学びましょう。
業務はシステム設計からプログラムの開発、開発後の動作テストなど、システム開発の一連の作業を担います。そのため、ソフトウェアやハードウェア、ネットワーク、データベースなど、システム開発に必要な幅広い知識を体系的に身に付けていることが求められます。
「システムアーキテクト試験」「C言語プログラミング能力認定試験」「Javaプログラミング能力認定試験」「Android技術者認定試験」などの資格が役立つでしょう。
プロジェクトマネージャー
プロジェクトマネージャー(PM)は顧客とコミュニケーションを取り、ニーズを把握してどのようなサービスやシステムを作るか決めます。開発規模や予算、スケジュールの決定、人員確保、進捗管理もプロジェクトマネージャーの役割です。
プロジェクト稼働時に、要件定義、基本設計、詳細設計、テスト、保守・運用などの工程において、品質管理やトラブル対応も担います。
そのため管理スキル、課題解決スキル、分析スキル、コミュニケーションスキルが役立ちます。
データサイエンティスト
膨大なデータの分析とその結果を企業の課題解決に活用するデータサイエンティストには、「ビジネス力」「データサイエンス力」「データエンジニアリング力」の3つのスキルが必須とされています。
具体的にはデータベースの処理や設計、SQLの知識、データ分析手法・ツールを扱うスキル、プレゼンテーションスキル、そしてマネジメントスキルなどです。
視野が広い人や物事を多角的にとらえることができる人、数学の素養がある人が向いています。
営業系職種
営業
情報処理サービス業界の営業職は、顧客が抱える課題解決のために自社のサービスやソフトウェアを提案・販売する仕事です。
そのため、以下のような営業職の必須スキルが求められます。
- ・コミュニケーション能力
- ・提案・交渉力
- ・ヒアリング力
- ・提案力
- ・論理的思考力
これらに加え、ITの知識も欠かせません。自社製品への理解と、顧客が理解できるよう説明するスキルも持ち合わせている必要があります。
プリセールス
営業職に同行し、ITのプロとして契約や受注獲得の支援をサポートするのがプリセールスの仕事です。
実現可能性の高い技術を提案するため、営業よりも深い専門知識が求められます。
営業とエンジニアの橋渡し役として、開発現場に顧客の要望を技術者目線で伝えること、営業に自社製品について技術的な助言を行うこともプリセールスの重要な役割です。
ITコンサルタント
ITを活用して企業の抱える課題を改善することがITコンサルタントの仕事です。
クライアント企業の経営戦略に基づき、IT投資計画の策定と実現に必要なツールの選定と導入を支援する役割を担います。
そのため、ビジネスの知識は欠かせません。クライアントに寄り添う力や、プレゼンに説得力をもたせるためのITの知識も必要です。プロジェクトマネジメントの経験など管理スキルが備わっていると業務に役立つでしょう。
DXコンサルタント
近年さまざまな業界でDX化が課題とされています。企業のDX推進をサポートするのがDXコンサルタントの仕事です。
計画の立案からマーケティング方針の提案、計画の実行までを担います。またデジタル人材の育成もDXコンサルタントの重要な役割です。
企業の課題解決がゴールではなく、既存業務のデジタル化のサポート、組織改革や新規ビジネスの創出までを目指します。
【情報処理サービス(SI)業界】大手企業売上高ランキング
第1位:富士通株式会社
業界最大規模の大手SIerとして知られているのが富士通です。
国内第1位であるだけでなく、世界第5位の売上高を誇ります。
ハードウェア事業から撤退し、ソフトウェア事業に移行したことで、2022年度決算において過去最高の営業利益を記録したとされています。
2023年度の売上収益は前期比3.9%増の3兆8600億円にのぼる見込みです。
第2位:NEC(日本電気株式会社)
大手総合電機メーカーとして知られるNECは、業界第2位の売上高をあげています。
製造業や流通業、金融業界に広く顧客を持ち、SI事業とハードウェア製品を組み合わせた高い技術の提供が強みです。
2023年度の売上収益は前年比2.0%増の3兆3800億円が見込まれています。
第3位:株式会社NTTデータ
NTTデータは官公庁や自治体のシステムを多く手掛け、日本を代表するSIerだと言えます。
これまでに培った「信頼性」、マルチベンダーとしての「柔軟性」、顧客ごとに最適なサービスを提供する「先進性」、新しいビジネスモデルを創出する「技術力」が強みです。
ビッグデータやAI、IoTの分野における実績が会社の業績をけん引しています。
2023年度の売上収益は前年同期比49.8%増の1兆149億円となる見込みです。
第4位:株式会社日立製作所
世界有数の総合電機メーカーとして知られる日立製作所が第4位にランクインしています。
「OT×IT×プロダクト」という総合力を誇り幅広い領域で技術提供を行う日立は、ITのベンダーとユーザーというふたつの顔を持つ会社の特徴を反映させた独自のデジタルプラットフォーム「Lumada」を戦略に掲げます。
2023年4~6月期時点での売上収益は前年同期比10%減の2兆3224億円との見込みですが、調整後営業利益は同7%増の1305億円とされています。
第5位:野村総合研究所(NRI)
第5位は野村総合研究所です。
コンサルティング、金融ITソリューション、産業ITソリューション、IT基盤サービスの4分野で、多くの企業の課題解決を担っています。
最新テクノロジーを駆使したサービス提供で将来性が高いとされています。
2023年4~6月期時点での売上収益は前年同期比5.5%増の1767億円とされています。
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情報処理サービス(SI)業界の将来性と注目の分野
情報処理サービス(SI)業界の将来性
情報処理サービス業界は、将来性のある業界と考えられます。
近年、既存の情報システムの利用を継続することに加え、AI・IoT・ビッグデータなどの先端IT技術の需要も急増しているからです。
経済産業省の「2021年情報通信業基本調査(2020年度実績)」にて、情報サービス業の2020年度売上高が53兆4,498億円と過去最高額を記録したことからも、需要の増加がわかります。
また、急激なIT技術の進化についていける専門家や技術者の不足も、需要増加の理由のひとつです。
経済産業省委託事業の「IT人材需給に関する調査」では、2030年時点でのIT人材の需給ギャップが16〜79万人に達する可能性が指摘されています。
情報処理サービス業界は将来性が高く、今後も発展が期待される業界であるといえるでしょう。
(参考:経済産業省『2021年情報通信業基本調査(2020年度実績)』)
(参考:経済産業省『経済産業省「IT人材需給に関する調査』)
情報処理サービス(SI)業界の注目の分野
ビッグデータ
ビッグデータとは、通常のデータベースソフトウェアでは扱いきれない大容量のデータのことです。
収集するデータは、オンラインショッピングの購入履歴からICカードの利用履歴、SNSの投稿まで多岐にわたります。
ビッグデータの分析を通じて得られる洞察はマーケティングにおいて非常に効果的で、多くの企業がその可能性に注目しているのが特徴です。
そのため、データ活用のノウハウを持たない企業から、情報処理系の企業へ外部委託される傾向があります。
ビッグデータの分析を専門とする情報処理サービス業界は、今後ますます注目を集め、需要が高まるでしょう。
デジタル・トランスフォーメーション(DX)
デジタル・トランスフォーメーション(DX)は、企業がデータやデジタル技術を駆使してビジネスモデルの変革や新たなサービスの創出を行うプロセスのことです。
例えば、従来の紙ベースの業務を電子化し、電子データの活用によって業務プロセスを効率化する一環として展開されています。
最近では、リアルやアナログで行われていた業務をデジタル化するトレンドも急速に広がっており、FinTech(金融技術)、HealthTech(健康技術)、AgriTech(農業技術)など、あらゆる業界においてテクノロジーの活用が進んでいます。
DXは、業務プロセスの効率化・顧客体験の向上・新たな収益モデルの構築などが可能になるため、市場での競争優位性を獲得する手段として注目されています。
今後も国内中の企業でDXの推進が重要視され、ますます発展するでしょう。
第5世代移動通信システム(5G)の利用
第5世代移動通信システム(5G)とは、通信速度の急速な向上と、より多くの機器をネットワークに接続できる特性を備えた次世代通信技術です。
ビデオストリーミング・クラウドサービス・リアルタイムのデータ処理など、多くのアプリケーションにおいて優れたパフォーマンスを発揮します。
そのため、単なる消費者向けのサービスだけでなく、産業用途においても革命をもたらす分野として注目されているのが特徴です。
また、センサーデータの高速収集とリアルタイム分析により、産業プロセスの効率化や新たなサービスの創出が可能になります。
自動運転車・スマート都市・工場の自動化など、多岐にわたる分野での応用が期待されており、今後もさまざまな業界で5Gの活用が拡大するでしょう
セキュリティ
セキュリティは、情報処理サービス業界において急速に注目を集めている分野です。
なぜなら、ハッカーたちが年々高度で複雑な手法を駆使し、セキュリティの脅威を増大させているからです。
そのためセキュリティを強化するための技術や、それを支える業務プロセスへの需要が高まっています。
特に金融業界では、キャッシュレス決済などのスマートフォンを活用したサービスの普及において、高度なセキュリティ対策が不可欠です。
このような金融業界の進化の要求に応えるために、情報処理サービス業界ではセキュリティ分野への投資と研究が急速に進展しているのが現状です。
RPA
近年、情報処理サービス業界で注目されている分野のひとつにRPA(Robotic Process Automation)があります。
RPAは、これまで人間が行ってきた定型業務を自動化する技術のことです。単純作業が大幅に効率化されるため、業務プロセスの改善に使用されています。
例えば、手書き文字の読み取りやデータ化、コンピュータの処理状況に応じた出力紙の補給指示など、様々な業務に適用されています。
特定の業務に合わせたシステム設計の需要も急速に増加しているため、RPAは情報処理サービス業界において今後ますます重要な役割を果たすことでしょう。
自動運転
自動運転技術も、情報処理サービス業界において注目の分野となっています。自動車が自律的に運転するうえで安全性を確保するためには、高度なソフトウェアが必要だからです。
そのため、情報処理サービス業界は自動車メーカーと連携し、自動運転技術の開発に力を入れて取り組んでいます。
自動車の衝突防止ソフトウェアなど高度なシステムの開発が行われており、将来の交通安全性やモビリティの革新に大きく貢献するとして期待されています。
情報処理サービス(SI)業界で役立つスキル・資格
基本情報技術者試験
「基本情報技術者試験」は、ITエンジニアに必要な基本的な知識や技能、実践的な活用能力を評価する資格です。
試験に合格することで、顧客の課題に対して情報技術を活用した戦略の策定や、システムの設計・開発など、幅広いIT業務において実力を証明できます。
情報処理サービス業界でキャリアを築くために役立つ資格のひとつといえるでしょう。
プロジェクトマネージャ試験
「プロジェクトマネージャ試験」は、高度なIT人材としての専門知識と、プロジェクトマネジメントスキルを備えた人材を育成することを目的とした国家資格です。
試験に合格することで、ITプロジェクトを統括し、計画から実行、管理までを効果的に行える能力を持つIT人材であることを証明できます。
プロジェクトマネージャーとしての能力の向上にもつながるため、情報処理サービス業界でキャリアを築く上で非常に価値のある資格といえるでしょう。
AWS 認定
「AWS 認定」は、情報処理サービス業界で非常に役立つスキルとして注目されている認定資格です。
Amazon Web Services(AWS)に関する専門知識とスキルを証明するものであり、AWSを活用したシステムの設計・開発・運用・保守などに関する能力を持っていることを示します。
近年、多くの企業がAWSを利用しており需要は高まり続けているため、情報処理サービス業界での就職・転職・昇給などのキャリアアップに非常に役立つでしょう。
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今回は、情報処理サービス業界の概要や活躍できる職種、注目の分野などを紹介しました。
高いセキュリティ技術の必要性やIT技術の進化に伴い、情報処理サービス業界の需要も高まるとされています。情報処理サービス業界でキャリアを伸ばしたいと考えているなら、ぜひ挑戦してみましょう。
ただ、情報処理サービス業界への転職は業界理解や職種の理解も重要なため、業界に特化した転職エージェントと一緒に転職活動を進めることをおすすめします。
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